93●『S撃のK人』は“話が違う”(4)…こいつ、似てるぞ? あの〇〇戦士に…

93●『S撃のK人』は“話が違う”(4)…こいつ、似てるぞ? あの〇〇戦士に…




       *


 それでも、“Gナラシ”は敢行されてしまったようです。


 しかしこれ、何かにクリソツ……

 そう、世界の大半を破壊して、そのあと自ら反省するこのシチュエーションは……

 “総人口の半分を死に至らしめた。人々は自らの行為に恐怖した”という、あの機動戦士の物語の冒頭と同じではないですか。

 “Gナラシ”は“コ〇ニー落とし”、“E国民”はジ〇ン軍です。

 もちろん“K人”はモビ〇スー〇ですよね。


 つまり結論から申し上げれば……

 『S撃のK人』は実質的に、巨大ロボット兵器物に換骨奪胎されていったのです。

 困ったことに、これではお話が終わりません。

 “巨人vs人類”の戦いだと思っていたら……

 途中で、“人類vs人類”の戦争の物語に“話が違って”しまったのですから。

 人類絶滅まで、戦争はたぶん、続くのです。

 実際、最終話を迎えても、世界各国から猜疑の目で見られるE国は国内の軍備拡張に執心せねばならず、到底、戦争も物語も終わった雰囲気ではありません。

 そうです。これからさらに『S撃のK人Z』、『S撃のK人ZZ』『逆襲のジーク慈恩』『K人オリジン』と、続編番外編が続々と展開していくこと、論を待たないと思われます。

 “始祖Uミル様”の隠された末裔の美少女が登場する、『K人Uニコーン』とか。

 そうすりゃますます、K人同士のバトル、白熱しますよね!


 ………ファンの皆様、ごめんなさい!!


        *


 さて『S撃のK人』のクライマックスは……

 “P島のE国民が世界連合軍によって全滅させられるか”(安楽死計画)

 “その前に眠れる全K人の力を呼び覚まして先制攻撃するか”(Gナラシ)

 どちらを選択するか、というプロセスにあったと思います。


 幸いにして、“Gナラシ”は遂行の途中で食い止められますが……

 そこでみんながドジ踏んで、食い止めることができず、K人が全世界を踏み潰してしまったなら、どうなるのか……


 地上に残るのはただ、K人ばかり。


 そう、“オール巨人”の世界です。


 この状況に干渉する力を持つ人類は死に絶えて、いません。

 となると、神様の出番です。

 神様はわりと出不精ですので、たいてい、手持ちの使徒を地上へ遣わします。

 天使の場合もあり、あるいは、かつて人類と交配して産み出した、半神半人のこともあります。


 てことで……

 “オール巨人”に対抗できるのは、“オール半神”。

 誕生バースという名の守護神を連れて、この世に爆誕する“半神チーム”です。

 それは虎縞のパンツを着用しているかもしれません。

 かくして、地上で“オール巨人”と“オール半神”の対決が展開されます。

 攻守白熱し延長戦にもつれ込むでしょう。

 しかしたいてい、“半神”が凡打とエラーで好機を失います。

 観客から“ダメ虎”コールを浴びせられ、すごすごと去る“半神”。

 こうしてまた、球界史にレジェンドが残され、神話になることでしょう。


 それはともかく……


 “Gナラシ”の発動は、主人公A君の意志であるとともに、読者の期待するところでもあったはずです。

 読者の多くはこのさい、“Gナラシ”が発動されて、世界の人々…多くは無辜の一般人…が何十億人となく命を落とすという展開を、じつは心の奥底で望んでいたのではないか?


 そうだとすると、それは、一度世界を滅ぼして、何もかもゼロからリセットしたい……という潜在的な願望の現れではないか?

 現代の若者の多くが、そんな、世界滅亡への願望を抱いているのでしょうか。


 そうだとしたら、わりと末世的ですよね。


 『S撃のK人』は、そういった、恐るべき時代の空気すら感じさせてくれます。

 恐るべき……というのは……

 自分さえ安全であれば、地球上の、他の何十億の無辜の民が残虐に殺されたとしても、“無関心でいられる”ことを意味すると思うからです。


 『S撃のK人』は、希望でなく絶望、そして諸行無常の諦観の物語。

 ある種の現状肯定……つまり、諦め……というものを感じずにおれません。

 

 最後に“K人のいない世界”を創り出しても、世界は何一つ平和にならなかった……


 この結末は、皮肉でもありますが、真実を衝いています。

 文句なしに素晴らしいと思います。



       *


 さて、コロナ禍に蝕まれた2020~2021年にかけて、伝説的な作品がバタバタと完結しました。

 『鬼滅の刃』『約束のネバーランド』『進撃の巨人』そして『シン・エヴァンゲリオン』、また、『るろうに剣心』の映画版……


 マンガ・アニメ・ラノベのサブカルチャー、というかライトカルチャーとでもいうのか、そんな世界にぽっかりと、空白地帯が生まれたわけです。

 次に、この空白を埋めるのは何なのか。

 大いに興味ありますね。


 “アフターコロナ”であり“アフター五輪”である2022年。

 どうなるのか、です。


(※本稿は2021年に書いたものです。)


 でも、なにか、とても悪い予感がします。

 良いことが起こりそうな気が、まるでしません。


 政府は、コロナ禍と五輪で、とてつもない巨額の税金を、前借り方式でドバーッと使ってしまいました。

 その負債を計算し、国民がこれからいかに負担して、借金を返していくのかを国政に仕組んでいくのが、2022年です。

 間違いなく、増税です。過酷なまでの重税ですよ。

 政権交代でもない限り、たぶん消費税、ハネ上がります。

 普通の市民の生活は、ますます苦しくなります。

 私も今から、さらなるボンビーライフに備えなくては……

 そして世界情勢をみれば、アフターコロナに世界の主導権を握ってしまおうという巨大勢力が台頭してきます。

 それはおそらく、核兵器による“Gナラシ”を実行できる国家でしょう。

 世界の平和はますます脅かされ、各国の人々の人権は紙屑よりも軽く、その命すら鴻毛よりも軽く、吹き飛ばされてしまうと思われます。

 “現実の恐怖”が、“空想の恐怖”をはるかに大きく凌駕する時代です。


(※この原稿は2021年に書いたものです。上記の予想が一部現実化するとは……)


 さてはて、マンガにアニメにラノベたちの文化は、何を描くのか…

 残酷な現実から逃避するのか、それとも戦うのか。


 真剣に見つめたいと思います。






【追記 20230228】

 それにしても、“始祖Uミル”に人類初のK人化能力を与えた“光るムカデ”は、本当のところ何者で、いかなる意図があったのか? 

 読者としては、それが知りたかったのですが……。

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