92●『S撃のK人』は“話が違う”(3)…巨人といえばゼントラーディ…
92●『S撃のK人』は“話が違う”(3)…巨人といえばゼントラーディ…
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『S撃のK人』、どうしてK人と人類は平和共存しなかったの?
この、“巨人と人類の平和共存”に挑戦したTVアニメが、ほぼ四十年前に放映されていました。
『超時空要塞マクロス』(1982)ですね。
全36話のエピソードの最終の数話は、ゼントラーディの巨人と人類の平和共存に、みんなが骨折って苦労する状況が描き出されていました。いろいろ問題はありましたが、悪さをする巨人を、機械巨人のバルキリーが臨時パトレイバーと化してポカスカやって、なんとか収めていましたね。
中途半端には見えますが、巨人ゼントラーディを絶滅させるなんて愚行に走るのはやめて、地道に日々努力して共存してゆく。
いい結末だったと思います。
輝と未沙とミンメイの三角関係ばかり描いていたわけじゃなかったのですね。
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マクロス的共存社会の構築。
そのような思考は、『S撃のK人』の主人公であるA君や、兄のG君にはできなかったのでしょうか。
気になるところです。
本当にK人と人類、そしてK人同士の平和共存は不可能なのか。
M国側とE国側のK人化能力を持つ人々が手を結び、双方ウインウインで世界を征服しよう……と話をつけさえすれば、事態の解決がスカッと見えたと思うのですが。
結局それが出来ず、主人公のA君、なにをブチギレたのか、“Gナラシ”を発動してしまいます。
ネットで見聞するところ……
A君は“Gナラシ”で無数のK人を従え、進撃する。(デカルチャー!)
地上を蹂躙し、人類の八割を虐殺する。(巨神兵じゃー!)
E国側のK人チームが、これを阻止する。同時にK人化できる能力も消滅させる。
E国側のK人チームだった決死隊(元調査H団)の人々は、生き残った人類から英雄視され、賞賛と感謝を得る。(ナウシカじゃー!)
E国民の人権は回復され、世界平和が実現する。(美談すぎるんじゃー?)
ただしA君の生命は世界平和と引き換えに……
という展開みたいですが……
しかしこれ、一歩離れて見ると、P島のE国人が“身から出た錆び”で、つまり自己責任で引き起こした“Gナラシ”を、自分たちの力で、つまり自己責任で止めただけだ……ともとれますね。
つまり、自分の尻拭いを自分でしただけ、なのです。
そう解釈されたら、E国人は世界から感謝されるどころか、自分の家から出火して世界中に“もらい火”させた張本人、とんでもない迷惑者となります。
全世界の人類から、非公式ながら、根深い恨みを買うことは間違いありません。
そうなりますと……
“Gナラシ”を阻止したのち、もしもE国側とP島の人々が世界各国に対して少しでも弱みを見せたら、たちどころに各国から恨みと憎しみのリベンジで攻められる。しかも、またまた四面楚歌で孤立する……という最悪のシナリオが現実的に考えられるわけです。
そのときE国側の人々が“K人になる能力”を失っていたら、勝ち目はありません。有効な戦力として“K人化能力”をだれかが温存し、国家機密として、これを隠しておくことが肝要でしょう。
残したK人は、こっそりと、今度は壁の内側で、軍事産業のために活用しておけばいいのです。K人を使って兵器を生産させるとか。
実際に“K人化能力”が残されていて、それゆえ、再び“Gナラシ”の発動が可能になるであろうことを世界中にほのめかしてゆけば、世界各国に対して、核兵器と同様の抑止力として機能するでしょう。
だから、最終的に“K人化能力”を消滅させて、“K人なき世界”にしてしまうのは、かえってE国人の首を自ら絞める結果になると思われます。
E黒人の安全保障のためには、“K人化能力”は絶対に捨ててはならない、ということですね。
“Gナラシ”で世界各国を心胆寒からしめ、かつ、“K人化能力”を保有していることを世界各国に喧伝することで、ようやくE国は強国として世界に君臨することができるでしょう。20世紀以降の核保有大国と同じです。
これぞ“
残念ながら、通常軍備だけでは抑止力になりません。
“Gナラシ”を核兵器と同じ位置づけとし、いつでも発動できることを世界に示してこそ、E国人の安全が担保されるのです。
それだけに、作品の中で実施された“Gナラシ阻止作戦”は、マスコミに取材させ記録させて、世界的なプロパガンダに盛り上げなくては、意味がありません。
“止めたのは、ボクたちです”といくら叫んだって、画像証拠がなければ“あいつらK人が勝手に息切れして自然に止まっただけさ”とそしられますし、もっと踏み込んで正確に推理されて、週刊誌なんかに“GナラシはE国人同士の自作自演だった!”なんてすっぱ抜かれたらマズいでしょう。
マスコミの統制もきちんとやらなくてはなりません。
なによりも、この世界規模の“Gナラシ”を、M嬢を含む少数のE国側K人チームで本当に止められるのか……、その勝算が十二分に無かったら、実施不可能な作戦のはずです。
だつて、“Gナラシ阻止作戦”に失敗したら、人類は完全滅亡。殲滅ですよ。
E国の人々も自滅し、地球上に残るのはK人だけとなります。
しかしそれもマズい。
だって、K人は人類を捕食して生きているんだろう?
人類に寄生しているようなもんだから、人類が無くなれば飢え死にするよね。
いや、なにも食わなくても不死身で不老長寿で永遠に生きる超自然生命体というのかもしれませんが……
それならもともと、人間を喰わなくても生きていけるはずだぞ。
人間を喰わなければ自分が死ぬ……という、人の生き血をすすらなくては生きられない吸血鬼みたいな、切羽詰まった境遇でないと、人を喰う理由が成り立たなくなるのでは?
あ、そうか、K人同士で共食いするのか。
エヴァが使徒食ったみたいに。
スミマセン、浅学非才な私にはうまく空想できません。
しかしながら……
“Gナラシ”を阻止するのに、あんなにリスク張らなきゃならないってのは……
これは、そうまでしてやらなくてはならない作戦だったのでしょうか?
あえて人類滅亡を覚悟で、“Gナラシ”を放置するのも、一手だったのかも。
本土決戦で一億玉砕、みんなで一緒に滅べば怖くない……という、N国人的な発想になるのですが。
“Gナラシ”を阻止する作戦は、とてもリスキー。
後世の歴史家に、徹底的かつフルボッコで叩かれる事案になったかもしれません。
人類絶滅を阻止するかわり、十億単位の人命を抹殺するのですから。
これね、ヒ〇〇ラー総統の悪魔的なジェノサイド、あのホロコーストと同じ。
そこまで人類を失い、そして生き残った人々も、多くは難民化します。
P島の人たち、特にM嬢とか、見て見ぬふりはできないでしょう。
“Gナラシ”を阻止できても、すぐさま“難民救済地獄”が待っています。
餓死者が大量に続出するばかりですよ。
まるで自ら墓穴を掘る行為です。
そこまで犠牲を強いてまで、やるべき価値があったのか?
だって、そのまま何もせず、昔ながらのままにK人に人間が喰われ続けたとしても、ここまでの犠牲者数には届かなかったはず……
ともあれ、そんな大量虐殺の張本人がA君なのですから……
死をもって償うしかないことも、納得はできるのですが。
そんなことなら、なにがなんでも作戦実施寸前で回避して、別な道を模索すべきであったかと……
やはり“K人の平和利用”が、ベストだったんじゃないかな?
案外、K人って、エコかも。
逆転の発想で、K人を戦後の人類発展の有効な“
そう、K人が人力で発電し、列車を牽引し、田畑を指先でたちまち耕し、海に入って網を打てはクジラが獲れる、ビルを建てて橋を架ける、もちろん軍需産業で兵器開発や要塞建設にも従事する、そういった社会ですよ。
スーツ着て出勤するのは無理でしょうが、パンツは穿いてもらうことにして。
K人のCO2排出量は多少問題(むしろゲップともう一つのメタン排出量の方が問題かも)……かもしれないけれど、まさか“息をするな”って言えないですしね。私たちも呼吸はさせてもらってるんですから。
え、このさい“Gナラシ”で人類を殲滅すれば、人間の呼吸によるCO2まで削減できるし、地球環境のためにはベストな選択だったとか?
その通りだと思います。
【次章に続きます】
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