祝完結! でも『S撃のK人』は、どこか“話が違う”のでは?

90●『S撃のK人』は“話が違う”(1)…ペール・ギュント+サロメ?…

※以下の原稿は2021年4月に書いたものです。


90●『S撃のK人』は“話が違う”(1)…ペール・ギュント+サロメ?…




 2021年4月9日、あの大作漫画がついに連載の最終回を迎えました。

 とはいえ、私はまだ、直接その本の内容を見ていませんし、実は数年前に単行本の6巻くらいまで読んでから長いブランクがあり、ようやくアニメのファイナルシーズンの前半を見た次第。

 そりゃ、パーフェクトなコンプリート観賞は、ちょっと無理ですよ。

 単行本で全34巻だし。他にもいろいろと読みたい大作がたくさんあるし。

 で、今は主にネットからチラチラと耳目に入ってくる情報から、お話の流れを推測することにしています。

 間違いがあったらごめんなさい。


 そんなわけで、『S撃のK人』という架空の大作を想定します。


 『S撃のK人』、連載開始から完結まで十一年。

 本の第一話は今、ネットでタダ見ができます。

 いや、第一話の衝撃は凄かったですね。

 野にはびこるK人を恐れて、壁に囲まれた籠の鳥でびくびくと過ごす人類。

 K人とは何か、壁の向こうに広がる世界の正体は何か?

 巨大な謎が突き付けられ、それから作品は、調査H団に参加する主人公A少年と幼馴染のM嬢による、謎解きの旅が始まります。

 このとき、どうみてもケンカは、A君よりもM嬢の方が強いことがわかります。


 それから待つこと十一年……


 二人の終わり方は、意外でありました。

 アンハッピーエンド、ですね。

 普通このような場合、彼を恋い慕う女性の方が先に亡くなって、その魂が彼氏の帰りを待つものだ……というイメージを私は抱いておりました。

 劇場アニメ『ウインダリア』(1986)がそうでしたし、ガンダムシリーズでも、惹かれ合うカップルとか、モテじょの場合、女性が先に昇天なさることが多かったような……

 ほら、マチルダさんとか。


 ともあれ『S撃のK人』の最終回は、さすが名作……

 あれね、イプセンの戯曲『ペール・ギュント』(1867)に、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』(1893)を足したラストシーンだと思います。

 といっても私は生でページを見ていませんから、想像の範囲ですが。

 幼馴染の少女ソルヴェイグを恋していながらその気持ちを隠して遠大な野望に走ってしまうペール・ギュント君。大望破れて無一文のボロボロで帰郷し、それでも自分の人生にかすかな価値があったのではないかと苦悩するまま息を引き取る時、老いたソルヴェイグ嬢がその腕で抱きしめて、子守唄を歌ってくれます。

 で、妖艶な超絶美少女サロメはというと……

 予言者の青年ヨカナーンに恋焦がれるあまり、ヘロデ王に対して自分のセクシーダンスを披露する代わりに「ヨカナーンの首を」と所望します。

 豪奢な盆に載せたヨカナーンの首を愛でる蠱惑的な魔少女は、様々な絵画の題材になっていますね。

 ということで……

 『S撃のK人』の最終回の二人は……

 ペール・ギュントなA君と、サロメなM嬢の邂逅マッチングだったのか……というのが私の結論(勝手な妄想)です。

 M嬢はA君を腕に抱いて、きっと心の中で子守唄を歌ってあげたのでしょう。

 第一話で、どう見てもケンカはM嬢が格段に強かったので、悪さをしたA君はM嬢 に、結果的にお仕置きされたのかもしれませんね。

 私個人の感想としては、A君はやはり、ワガママだったのかと。

 彼女を幸せにできたのか、疑問が残ります。


 この場合、A君は“承認欲求”をそっちのけで“自己実現”に走り、そのまま終わりを迎えたタイプ。

 一方、M嬢は最後まで、A君に対する“承認欲求”に生き、宿命的な、永遠の安息ともいえる“ホーム……私たちの家”を手にしたことになるのでしょうか。

 悲劇の二人でした。

 しかし私の感想としては、この結末は、ものすごく不満です。


 “巨人”への対処の仕方、なにか大きな要素がスルーされていたのでは?

 大事な視点が、黙してすり抜けられているような感じがするのです。




  【次章に続きます】





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