第76話 カツラギの居場所……

 眩暈、地面がなくなったかのような感覚がカツラギに襲いかかる。

 カツラギは、倒れ込んだ。


 目を開けた時、光がみえた。

 そこは綺麗な夜空だった。

 大きな月と星がすぐそこにあるように見える。

 そして、カツラギは宙を舞っていた。

 

 無重力状態の浮遊感とともに、月がカツラギから離れていく。

 ゆっくりと、カツラギは地面に落ちていく。

 最初の時とは、違ってもう焦りはなかった。

 帰って来たんだ。その安心感が強かった。


 たぶん、この地面の下には……。

 彼がいて……。


 少しずつ、地面が見えてきた。

 崩落したバルベの塔の横に誰かいる。


 そこには、見覚えがある人影が待っていてくれた。

 カツラギは、人影をめがけて飛び込んでいく。

 言葉は必要じゃない。もう、彼しか考えられなかった。


 カツラギは彼の腕の中に包まれていった。


 少しだけ老けた彼は、彼女を優しく抱きしめてくれる。


「やっと、会えましたね。カツラギさん」

「はい!!」


 ふたりは、2度目の口づけをした。


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