第66話 魔王城
馬車は目的の場所に到着した。
この世界の最長老であり、魔人の王“魔王”様が住まう魔王城に。
魔王城という名称だが、RPGのラストダンジョンのような禍々しさはなかった。おしゃれな調度品に、落ち着いた雰囲気のある絵画が飾られている。魔人の身長に合わせたのだろう。天井が異様に高い。案内してくれる紫炎だって、3m近くある。魔王様は、塔のように高いのだろう。
「こちらに、我が主がお待ちです」
紫炎が大きな扉を開けた。
ゆっくりと巨大な扉が開かれる。
そこには、赤じゅうたんが敷かれた大きな広間があった。奥には巨大な玉座がある。
「ようこそ、我が城にお越し下さった。アグリ国王陛下」
大きな声が広間に響く。
玉座には、カラスのような顔をした巨大な魔人が座っていた。
身長は紫炎よりも高い。たぶん、5mくらいあるだろう。脇には、ドレスを着た女性の魔人が控えている。魔大陸の大臣は女性だと、言っていたので、きっと彼女が大臣なのだろう。
「客人を迎える立場なのに、座って失礼する。なにぶん、老体の身でな」
「おかまいなく」
王はそう答える。
カツラギは、魔王様が作り出すオーラに圧倒されて、なにも話せない。戦争の時、村長さんはどうやってこんな巨人と戦ったのだろうか?
「今日はお招きいただきありがとうございます、魔王様」
「御足労いただき申し訳ない。閣下」
魔王という名前からは信じられないほど、理知的で紳士的な話し方だった。
「そちらが、お噂の王妃様ですな?」
「は、はじめまして。葛城と申します」
「そう、硬くならないでください。あなたは、ゲストなのですから。まぁ、もっとも魔王さまの顔が怖いのが原因でしょうけど」
脇に控える大臣が優しそうな声で、フォローしてくれた。
「まったく、辛辣なことを言うな、大臣は」
魔王は笑いだす。場の緊張感が和んだ。
「さて、堅苦しい話は後にして、宴にしよう。今日はアグリ国王陛下の結婚祝いだ。盛大に楽しんでくれ」
そういうと、魔王が手をクイっと動かす。
テーブルや椅子が宙を舞い、整列されていく。そのまま、ターブルクロスが敷かれて、食卓の準備が整った。
「すごい」
一同が驚嘆する。魔王の魔力によって、すべてが一瞬にして整った。
「さすがは魔王さまですね。こんな精密に、魔力を使えるのはあの方しかいません」
王は、ボソッとカツラギにそう説明してくれた。
村長とはまた違った能力のようだ。
魔王と大臣には特別の椅子と机が用意されている。
「それではみなさん、楽しんでください」
乾杯用の酒が宙を飛んでくる。
宴ははじまった。
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