第63話 帰城
ふたりは順調に帰路につき、予定通りに帰城した。
宰相はふたりの顔をみて、ニコニコしていた。
「(このタヌキめ)」
食事を簡単に済ませて、カツラギは早めに寝室に籠った。
旅疲れという名目で……
そして、ベットにダイブして、潜り込む。
「うわアアアアアアァァァァッァァァアアアアア」
全力でゴロゴロした。
これが、カツラギが溜めに溜めたストレスだ。
そして、旅行を思いだす。
手をつないでのお出かけ。
みんなに見られながらのアーン。
混浴。
エトセトラ、エトセトラ。
カツラギの黒歴史のページが何ページ書かれたのだろうか。
そして、一番の黒歴史は……。
「きゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
あの暗黒史を思いだした。
やってはいけないこと。
今までの関係を壊してしまうあの禁断の行為。
告白を……。
「王妃様、大丈夫ですか」
扉から声が聞こえてきた。きっと、アンリだ。
大声で叫びすぎたので、廊下にまで響いてしまった。
とても恥ずかしい。
「大丈夫ですよ、ありがとう」
あわてて、取り繕うカツラギ。何が「ありがとう」なのか自分でもよくわからない。
「そうですか。では、失礼します」
なんとか、ごまかせたようだ。
でも、今日は一晩中ゴロゴロするだろう。
叫んでも、転がっても、物足りない。
どこまで、カツラギは彼のことが好きなんだ。自分でヤレヤレと首を振る。
「虚しい」
彼の答えがわかるのは、来月。あと、3週間以上さきのことだ。
「遠いな」
答えがもらえる時間も、カツラギと彼の関係も。
しょうがないので、スマホを取りだす。
充電は依然として、90%台を維持していた。
ゲームをするわけでもなく、即座にアルバムを開く。
カツラギと彼のツーショットが記録されているアルバムを……
もう日本での思い出はすべて削除したくなった。私の居場所はここだけなんだから。
※
アンリ視点(番外編)
今日は両陛下が帰ってきた。
なのに、ふたりの様子がどこかおかしい。
ソワソワしている。きっと宰相様が、なにかやったんだろう。あのタヌキさんは、本当に腹黒い。
そんな風に思っていると、王妃様の部屋から大きな声がしてきた。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
アンリは何事かと思って、王妃様に向かって話しかけた。
「王妃様、大丈夫ですか」
「え、アンリ??」
すっとぼけた声が返ってきた。
あったぶん大丈夫だ。アンリはそう思った。
「大丈夫です、ありがとう」
なにが「ありがとう」なのだろうか?
よくわからないが大丈夫そうなので、私は安心した。
数時間後、アンリは別の部屋で同じ声を聞くことになる。
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