第38話 朝食
朝食はいつも通り、3人で食事をした。
温かいトーストとスープ、ベーコンとスクランブルエッグ。シンプルな料理だが、コック長の腕がいいのだろう。とても美味しかった。
「昨日はお疲れ様でした、おふたりとも」
宰相は食後のハーブティーを飲みながら、そう話しかけてきた。その顔には、いつもの真面目さは、どこにいったのか……。ゲスな笑みを浮かべていた。
「ありがとうございます」
カツラギはそう答えた。次にくる質問は決まっている。
「よく眠れましたか?」
やっぱりだ。この質問にはいろんな意味がこめられている。彼女はそっけなく返答する。
「お酒を飲みすぎてしまい、もうぐっすりでしたよ。バタンキューって感じです。そうですよね、陛下」
カツラギは彼に同意を求めた。さっきから、王はボーっとしている。
「……」
「王様?」
「兄さん?」
彼女と宰相は同時に彼に声をかけた。
しばらくすると、王はこっちの世界に戻ってきたようで、あわてて返事をした。
「ええ、そうですね」
あきらかに話を聞いていなかった感が丸だしだった。
「だいじょうぶ、ですか……?」
女は心配して、彼の顔をのぞきこむ。
そうすると、王の顔は真っ赤になった。
「すいません、今日は朝に大事な仕事があるので、これで失礼します。ふたりはゆっくりしていてください」
なにかをごまかすように、王はいそいそと食堂をでていった。
「本当に何もなかったんですか?」
義理の弟は、疑惑のまなざしをむけてくる。
「本当になにもなかったですよ、だってわたしたちは……」
本当は酒を飲みすぎて、記憶がないのに虚勢を張るカツラギ。
「契約結婚なんですから」
それは宰相にむけられたものだったが、そうではないということが丸わかりだった。
だって、それは自分から自分自身に言い聞かせる言葉だったから……。
「そう意地を張るところ、本当に似たもの同士ですね」
義弟はため息をつきながら、ヤレヤレというジェスチャーをしている。
「でも、そんなつまらない意地を張っていると、いつか本当に後悔しますよ、義姉上……」
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