第37話 ふつかよい

 カツラギは目がさめた。そこは見たこともない装飾が施された天井で……。

 女はベットに寝ていた。がばっと、起き上がる。

(昨日は結婚式で、夜、王様と一緒の部屋でねることになって……)

 王とお酒を飲んでいたところまでは記憶がある。

(あのあとどうしたんだっけ? 強い酒を間違えて飲んでしまって、そこから記憶が……。記憶が……。記憶がない!?)


 あわてて、わたしは服の確認をする。よかった、どうやら着ているらしい。

 王は……。周囲を確認していると、彼はすぐ横にいた。ちゃんと服も着ている。よかった。間違いは起きていないようだ。

「ああ、カツラギさん、起きましたか」

「はい、起きました。すいません、昨日の夜の記憶がないんですが……」

 王は遠い目でにこりと笑った。

「それはそうですよ。とても楽しんでいましたからね……」

「えっ」

 王が遠い目をしていた(意味深)。

(楽しんでいた?それは、お姫様と勇者様が同じ宿屋で泊ったときのセリフとなにか関係が……?)

「ブランデーを」

(ブランデーかいっ!?)

 彼女は大声で突っ込みたかった。

(王様、もしかしてわたしをからかっている?)

 

「あの、もしかして、わたし、大変ご迷惑をおかけしませんでしたか?変な事いいませんでしたか?」

 カツラギはおそるおそる、彼に聞いた。

「ああ、大丈夫ですよ。飲んだ後、すぐに寝てしまったので。抱きかかえて、ベットに運んだだけです」

(いやそれはもう、とんでもない大迷惑ですよ、陛下)

「ほんとうにごめんなさい」

「たいしたことしてないので、気にしないでください。それに……」

「それに?」

「もうわたしたち、夫婦じゃないですか?」

「……」

 顔が真っ赤になるのを感じる。

(夫婦? たしかにそうなんだけど……。それは形式上の話で。だから、その……)

「だから、あんまり気にしないでください。さて、朝食にしましょう」

「はい、わたしの部屋で着替えてきます」

 そう言い合ってふたりは、一度別れた。

 カツラギは自分の部屋に向かっているとき、2つの大事な事に気がついた。ひとつめは、昨日のキスの意図を聞き忘れてしまったこと。そして、2つ目は……


「もしかして、私、寝ている間に、彼にお姫様だっこをされちゃった!?」

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