第21話 宣言
カツラギは高価なドレスに身を包んで、玉座の横に立っていた。王は重臣たちを集め、婚約を宣言するらしい。
「皆の者に、わたしから報告がある。わたしは、先日、ここにいるカツラギ様と婚約することとなった。余は結婚する。結婚式については、宰相が中心となって準備をしてくれることとなっている。皆の者協力してほしい。以上だ」
陛下がそういうと、集められていた重臣たちは騒然となった。いきなり、どうしてこうなったという動揺が、広間を包む。
「陛下、いきなりなにをおっしゃっているのですか」
初老の男が、動揺した声でそう言った。
「何を言っている、大蔵大臣よ。おまえだって、いつも余に早く結婚しろと言っていたではないか。忠告にしたがったまでだ」
「しかし……。そちらの女性はどこから来たかもわからないひとで――」
そう反論する男に向かって、宰相は大きな声をあげる。
「大蔵大臣よ。口を慎みなさい。無礼であるぞ。カツラギ様は、天界より降りて来た女神様だ。そのような女性にむかって、無礼な言葉は、神への冒涜であるぞ」
「宰相の言うとおりだ。大蔵大臣。余の決定に対しての異論は、忠告としてありがたく受け取るが、今のは女神様に対する侮蔑だ。そして、男としても、自分の大事な女性を侮蔑されるのはさすがに我慢できない」
「失礼しました……」
初老の男はずこずことと自分の孫のような宰相に、言いくるめられていた。まさに、怪物。こういわれてしまえば、誰もほかになにも言えなくなる。
「ほかに、異論があるものはいないか」
宰相は諸将にむかってそう迫った。異論があったら、即罷免するという勢いだ。
女剣士が前に出て意見を言う。
「わたしは賛成です。陛下と女神様がご結婚すれば、わが国の威光はより高まるでしょう」
今度は学者のような男が賛同した。
「そうですね。他国に対して交渉する時も、わが国に女神様がいるというのはとても大きな武器になりますし」
「そうだ、外務大臣や近衛師団長の言うとおりだ」みなが口をそろえて、それに同意した。
そう、ひとりを除いて。
「絶対反対じゃ。カツラギちゃんはわしのガールフレンドじゃぞ。馬鹿弟子に取られてたまるか」
また、あいつかという顔で、女剣士がどんよりする。
「なにをする。わしはこの国の最高裁首席判事じゃぞ。違憲じゃ。違憲判決をだしてやるううう」
そう叫びながら、村長は兵士に連れていかれた。
宰相は最後に総括する。
「では、ほかに異論はないようなので、これにて会議は終了とする。式の日取りは今月末だ。皆の者、準備を整えてくれ。では、解散」
わたしがなにもしゃべることなく会議は解散した。
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