第16話 幕間
村長は、二人を見送っていた。
「村長さん、昨日は危ないところを助けていただき本当にありがとうございました」
「うむ、また遊びにおいで。マイスイートハニー」
「師匠……」
「冗談じゃよ、冗談」
師匠と弟子はいつもの漫才をくり広げた。村長は弾丸すぎるスケジュールに内心であきれていた。もう少しゆっくりすればいいのにと、無責任にそう思う。彼はこうみえても20代まで<堅物のジジ>という異名があったくらいなのに、今は見る影もない。彼はそれを思い返したか、少し苦笑する。過去に捨て去った異名をあざ笑うかのように。
(そこで、もう少し正直であったらな。今とは違った人生になるに違いない。今の性格は、その後悔で作られたもうひとつの自分だ)
この200年間で、一体何度後悔したかわからない後悔を彼はくり返す。せめて、あの馬鹿弟子にはそんな後悔をしてほしくはないものだという親心みたいなものがそこにはあった。
その気持ちを胸に彼は、若人たちを見送った。
「少し散歩に行ってくるよ」
魔人たちにそう言って、森に出向いた。日光は木に遮られ、少しずつ影が深くなる。少しだけ昔話をしたい気分だった。あの戦争を知る友人と――そして、それはおそらくもうひとりしかこの世界には生きていないだろう。
「そろそろ、でてこい。昨日の男よ。いや、アイザックよ。たまには昔話でもせぬか」
老人は森のなかにむかって、叫んだ……。その背中には、すでに炎が舞っていた。
※
~現代日本~
「部長、葛城から引き継いだ仕事ですがおおむね順調です」
「いいね、篠宮くん。次回のボーナスも期待しておけよ」
「ありがとうございます」
男は葛城を追い出してすべてが順調だと感じていた。
しかし、水面下では……
「なあ、篠宮の仕事って強引じゃね」
「ああ、あいつ全部無理やり推し進めてやがる」
「チームメンバーの意見なんて聞いてくれないしな」
「南海も彼女面して公私混同激しいし」
「「「「はぁー」」」」
「葛城さん帰ってこないかな……」
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