第11話 ふたり

「大丈夫ですか、カツラギさん」

 後ろにいたのは王だった。


「ハイ、大丈夫ですよ」

「よかった。師匠の作った結界を壊すのが大変で遅くなりました」

「えっ、結界?」

 村長はふたりきりになるために、結界をはって王の来訪を邪魔していた。。


「ええ。ここの池付近は師匠に結界を張られて近づけなかったのです。ガールフレンドとランデブーしてくると言い残して、消えてしまったので探していたら…… 本当にあの師匠は」

「ハハハ」

「とりあえず、ご無事でよかったです」

「ありがとうございます」


 よっこらしょと王はさりげなくカツラギの隣に座ってきた。それだけで、彼女はドキドキする。

「今日はお疲れ様でした。どうでしたか?」

「とてもたのしかったですよ。王様の意外な一面もみられましたし」

「お恥ずかしいかぎりです。でも、勝ててよかった」

「そして、かっこいいところもいっぱいみれました」

 カツラギは少し陛下をからかってみる。完璧超人ではない王をみてみたかったから。

「からかわないでください。でも、今日はあなたのために勝ちましたよ」

 王は慌てた感じでごまかした。


「……」

「……」


 ふたりは池を見ながら沈黙した。

 でも、その沈黙はなぜだか、居心地がよくて……。


「月がきれいですね」

「えっ。ハイそうですね」

 わたしは慌ててそう返した。

「どうしました?」


 王は沈黙に耐えられずにそう言ったのだろう。本当に文字通りの意味のはずだ。カツラギの世界では、その言葉は別の意味をもっているなんて知っているわけがない。

 だから、彼女の慌てた理由はわかっていないはずだ。


 彼女は彼の言葉を繰り返す。

「本当に月がきれいですね」と。

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