第6話 これが、俺の衣装?
俺は立ち上がり、階段を下りる。そして観客席の一番前の壁を登って、闘技場へ飛び降りた。
そして──。
シャイニング・フレア・プリズムダスト・エンブレス
俺が力強く叫ぶと、俺の体が強くピンク色に光り出す。暖かく、強い力が宿っているのが分かる。これが魔法ってやつか──。
暖かい、強い力が体を包んだ後、俺の手から、細長い光がともる。これが俺の固有兵器か?
そして脳裏に再び言葉が浮かぶ。恐らくこれを叫ぶと武器が出てくる、教わってなくても心の中で理解できていた。
集いし光の結晶が、世界を優しさの光で再構築する
サンライズハート・プリズムソード
俺の左手に光輝く長めの剣が出現。これが俺の武器。何かかっこいいな。
そして魔法少女定番の衣装。やっぱり俺にもあるんだ!!
灰色と白を基調としたフリフリの衣装。キャミソールに近く、肩ひもでつるされていて肩は露出、胸元も少し見えてしまいどこか恥ずかしさもある。
袖はキャミソールとは独立していて腕から手首までピッチリとしている。
そして太ももが半分くらい見えるミニスカート。何故か中にホットパンツを着ている状態になっていてジャンプをしてもお色気シーンにはならないが、やはり体のラインが見えてしまい気になってしまう。
特に胸元、さっきのように露出して谷間が見えてしまっている。今までとは違って観客からの視線を一身に浴びているので、正直ちょっと恥ずかしい。
手に持っているのは俺の身長と同じくらいの大きさをした剣。強そうだけど、とりあえず今はしまおう。
そして両足に魔力を込めてみる。両足にオーラのような物が現れる。さっきの戦いでも少女がやっていた、やっぱり身体強化もできる。
両足に魔力を込めてジャンプすると、何メートルも体が飛び上がる。人間ではありえない脚力、これが魔力か。
そのまま俺は落下する少女のもとへ向かった。
少女の体が地に落ちようとした直前──。
「よし、間に合ったか」
俺は彼女の落下点の一歩手前に着地。
落下してきた少女の首とひざ裏を抱える。お姫様だっこの形だ。
その行為に周囲の観客達は唖然となり言葉を失う。
そしてサナも──。
「アグナムちゃん? 無茶だよこんなの!! しょうがないな……」
渋々と言った感じで変身した後俺の方向へ向かう。
「なんだ貴様、ずいぶんと英雄気取りだな」
対峙した時の威圧感、元の世界では感じたことがない強さだ。足が震える、「ここで逃げないと死ぬぞ」と叫んでいるかのようだ。
しかし、逃げるわけにはいかない。そんな気持ちを無視して、体が震えている中でユピテルを睨みつけながら言葉を返す。
「全然勇者っぽくないと思わないか? 自分より弱い奴相手をいたぶってイキるなんてな」
にやりと強気な目線で話しかける。
カラ元気でもいい、強がりでもいい、ハッタリでもいい。気持ちで負けるな!!
ユピテルは腕を組み、俺をじっと見る。
「だから何だ? 愚民には、理解できないんだ。 だからこうして見せしめにする必要があるわけだ」
「見せしめ、魔法少女らしからぬ行動だな。正義の魔法少女が聞いて呆れるぜ」
「サナ、そいつの友達なら身を案じて忠告したらどうだ?」
ユピテルのその言葉にサナが気まずい表情をしだす。
「サナ、ユピテルの事知ってるのか?」
「うん。話は長いから説明するのは後になるけど、昔は一緒に行動していたの」
そうなのか、こいつがこんなやり方をしたのも関係していそうだが、今はそんな話をしている場合ではない。しまっておこう。
「お前のやり方を俺は認めない。俺と戦え!!」
「サナ。戦い方、教えてくれ」
「えええっ、無茶だよ」
「サナ──。お花畑のようなやつだ。3対1になったくらいで、俺に勝てると思っているか? まあいい、その勝負受けてやる。3人まとめてかかってこい!!」
──とりあえず勝負を受けてくれるみたいだ。
「大丈夫かよ。いくら勇者だからって3対1で勝てるのかよ」
「そうだぜ、いくらなんても無茶すぎないか?」
観客からはユピテルの行動を心配する声が多数。
しかしそんな心配とは裏腹にユピテルの表情に不安や動揺の文字は無い。
堂々として立っている。そして周囲の観客達に視線を配りながら自信満々に叫び出す。
「俺が戦いを受ける理由は3つ。
1つ、本来、魔法少女とは魔王軍や、害獣など、罪のない一般人達から迫りくる脅威から守るべき存在だ。
戦場で、後ろから奇襲されて卑怯だとわめく魔法少女がどこにいる。どんな不利な状況でも皆の平和のため、戦わなくてはならない。
2つめ、これが俺の生き様だということだ。どんな不利な状況でも、それを自らの強さではねのけ、未来を切り開くのが正しき魔法少女なのだ。
3つめ、それは簡単だ、なぜなら俺は──」
「勇者だからだ!!」
「勇者は敵に背中を向けない。向けてはいけない、俺の誇り高きプライドがそう叫んでいる!! さあ、かかって来い。返り討ちにしてやる!!」
その瞬間、周囲の観客達た一瞬ほど言葉を失い沈黙する。そしてわっと観客達が騒ぎ始め、周囲の観客たちの興奮が最高潮に達する。
勇者!! 勇者!! 勇者!! 勇者!!
圧倒的な声援、全員がユピテルの味方になったような感覚。これじゃあ俺達が悪役じゃないか。
まあ、周囲を味方につけるのだって実力の1つだってことか。仕方ない。
そして俺は倒れこんでいる黒髪の少女に優しい口調で話しかける。
「君、立てる?」
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