第16話:幕間(季節の移ろい)

 冬が終わり、春の花が咲き始める頃、私たちはアンの家で進級パーティーをしていた。


 実は私たちの進級は成績面で結構怪しかったらしいが無事進級できたのは、あの遺跡を課題にすることを決定した教師陣があのレポートで満足したかららしい。

 世の中には知らない方がいいことがたくさんある。

 それは脳の片隅に追いやって私は学友達との宴会を楽しんでいた。


 パーティーといってもフォーマルな物ではなく本当に進級を祝うだけの簡素な物で、準備も私たちでした。


 一応アンの実家から無事進級できたことに感謝され祝宴を開くなら協力すると申し出があったが、進級の理由をあまり詮索されたくないということで手製のささやかな物となった。


「いやーギリギリセーフだったね!」

 フロルにも危うかった自覚はあったらしい。

「よかったです……もし留年してたら家族とすごく気まずいので」

「何にせよ、今日はいい日です」


 あの時私があの部屋を崩壊させた魔法について触れる人は誰もいない。

 ノートの記述と一緒に消えてしまったのかもしれないし、皆の優しさなのかもしれない。

 どちらにせよ終わったことだしアレを話題にすることはやはりはばかられた。


「うーん! 課題開けの食事は普段より美味しいですね」

「またウィルさんもフロルみたいな事を……」


「私はいつだってご飯は美味しいと思うよ!」


「そういう問題じゃないのでは……」


 みんなもひとときのモラトリアムを楽しむと決めたのか気楽な宴会はお酒も飲んでいないのにみんなテンションが高く、祝い事と言った感じで終わった。


 それからしばらく、フロルが味を占めて何かと理由をつけて宴会を開こうと提案したりしつつ、私たちは学園の最終年度を迎えるのだった。

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