第65話 勝敗、そして末路

 救援の氷結、新たな光を照らしだす追い風の嵐となれ

 シューティングスター・ブリザード!!





 攻撃の瞬間、青葉は二人の間に召喚した障壁を解除、そして──。














 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 ハリケーンの様な大嵐の猛吹雪がフィッケルを襲う。

 前がかりになったフィッケルになすすべがなく攻撃が直撃する。


 吹き飛ぶフィッケル。青葉はさらに追撃しようとするが──。


 フラッ──。




「やばっ、流石に魔力使いすぎた……」


 通常の十倍の魔力を消費する無詠唱呪文に加えて強力な威力を持つ遠距離攻撃。

 流石の青葉も魔力を使いすぎたようで身体に強い負担がかかったようで思わず足元をふらつかせる。


 膝をつきながら前方に視線を向ける。


 そこには青葉の攻撃をくらい、倒れこむフィッケルの姿。

 すでに魔力は残っていなく戦える状態ではない。誰の目からも勝敗は明らかだった。



 倒れこみながら、かすれた声でフィッケルが口を開く。


「く、くそ……。こんな奴に、私が負けるなど──」


「実力、あるじゃない……。その力、もっとましな事に使えれば私達共闘していたかもね……。レス、逃げないのね」



 青葉は地面に座り込みながら苦笑いして話しかける。レスは自分の運命を悟ったようにお落ち着きながら言葉を返す。



「ヴァーカ、顔は割れてるんだ。おせーよ、遅かれ早かれ捕まることには変わりねーよ」


「そうね、二人とも逃がす気なんてないし」


 そう言って青葉は再び立ち上がる。そしてポケットから縄を取り出し──。


「じゃあ逮捕させてもらうわ。牢獄の中でゆっくり反省してね」



 そう言いながらその縄でフィッケルとレスを捕らる。



 二人を縄で縛った後。青葉の中にとある思考がよぎる。


 こういった不遇に生まれた人たちが悪に走るという事が無くなり、私たちと一緒に戦うことができたら。

 もしこの人たちと共に弱者達のために戦っていく。そんな世界を作れたら──。

 そんな思いをかみしめながら……。


 ボロボロの中、青葉は微笑を浮かべ空を見上げる。

 暖かい日差しと雲ひとつない、澄み切った空が、そこにあった。
















 三日後、晴天で雲ひとつない夜。

 王国の中央の政治犯を収容する牢獄。


 真っ黒なローブを羽織った人物が一人いた。


 薄暗いランプで照らされた道を、無言で歩いていく。

 牢獄の中でもっとも厳重なフロア、そこにローブの人物はたどり着いていた。


「無事か? 我が盟友よ──」


 とある牢獄の前でローブの人物は足を止め、穏やかに話しかける。


「ああ、無事だ。助けに来てくれたのか、本当にありがとう──」


「そうだ、先日はあの小娘に敗れたがまだ俺達は力を残している。何、ここから脱出すればいいんだ。今回の件は私の部下がやったことにすればいい。私には金も財産もある。私たちに味方している裁判官や憲兵たちに声をかけ適当な奴に罪をなすりつければこの件は解決する」


 フィッケルとレスが牢屋の前のローブの人物に必死に声を上げる。


「おやおや必至だねぇ。そんなに必死にせがむけど何か策でもあるのかい? 相手はあの勇者様だぜぇ」


「隠し財産を使い、闇の商人から強くなるための武器を手に入れる。なあに、勝てばいいのさ。勝てば英雄負ければゴミ。これがこの世界なのだからな」


 レスが何とかもう一度チャンスをもらおうと必死に説得をする。もう一度チャンスが欲しい、今度は必ず成功させると──。


 そうレスが弁を尽くして説得していると……?








「グヘッ、ゴホッ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 フードの人物が二人に一歩的に容赦なく暴力をふるっていく、その姿に罪悪感はない。


「おいおい、死ぬ間際ぐらい静かにしてくれよ」


 いたずらっぽい声でその人物は笑みを浮かべる。

 彼のその表情に恐怖や驚きはなく穏やかな顔つきだった。

 そんな顔つきをしながら彼は剣を取り振り上げる。


 ズバァァァァァァァァァァァァァァァ


 そしてその剣が二人の肉体を切り裂いていく。牢屋の中が二人の血で徐々に朱色一色に染まっていった。


 自らの鮮血が眼前に飛び散る。


「な、何故俺達を殺す。俺達はあの屑どもとは違う。選ばれた人間のはず!! なぜ? なぜ? なぜ?」


 悶え苦しみながら、激痛に身をのたうちながら懸命に叫び続ける。フードの人物はニヤニヤと邪険な笑みを浮かべながら叫ぶ。


「しかしテメェラは何か勘違いしているようだな? 何で貴様らの様なゴミ屑を俺様が助けなきゃいけないんだ?」


「ど、ど、ど、どういうことだ? やめてくれ、俺達、なな仲間だろ?」


「そ、そうだ──。今は仲間割れをしているときじゃ」


 必死に命乞いを続ける二人、しかしそんな必死の言葉はフードの人物には全く届かず……。




「貴様ら、ふざけたことをしてくれたな。青い板きれって情報がもう街中に出回っているんだよ。#俺様が持ち込んだスマートフォン__・__#、この世界じゃいろいろと使えて便利なうえ、俺しか持っていないということはそれだけで貴重なアドバンテージだったのによ。奴らに意表を突くことだって出来たのによ。全部無能でクズでゴミより存在価値のない貴様らのせいで全部台無しだよ」


 血を撒き散らしながらのたうちまわる二人の傍らでフード姿は無表情で二人を見つめる。

 すでに虫の息の二人に吐き捨てるように言い放つ。


「おまけに勇者たちに魔王軍と地球から来た人間につながりがあるってばれちまったよ、どうしてくれんのかねぇ──。もういいや、お前たちは──、苦しんで死ね!! クズ、ゴミ、ウジ虫」


 怒りの言葉をぶつけるフード姿の傍ら、すでに二人は事切れていた。


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