第41話 ルトの完璧な変装術
二日後。
今日は潜入作業の日である。ホテルの入り口に幸一はたっていた。
イレーナとサラは今回、裏方で仕事をするらしく、幸一、ルト、青葉の三人で行う予定であった。
ルトも本来王子様として有名な存在でこういった潜入作業には向いていないはずだった。しかし変装をするということで共に参加する事となる。
ということは王子様だと分からないような余程の変装をするに違いない。
恐らくは誰が見てもルトだと思わないほど完ぺきな変装。
幸一がそう考えるとホテルから誰かがやってくる。そしてその予想は的中する事となった。
「こ、こ、幸一君……、おはよう──」
恥ずかしそうな声でうつむきながら挨拶をするルト、幸一が彼の外見を見る。
「ああ、今日はよろしくね──ってえええっ????」
確かにその声自体はルトの声ではあった。しかしその変装姿に度肝を抜けれる。
フリフリのワンピースにミニスカート。
恐らくはカツラを使ったのであろうセミロングの髪型。
その姿は誰がどう見ても女の子にしか見えなかった。
確かにルトは男っぽいというよりはどちらかというと中性的な印象が強かった。
しかし今の彼は誰がどう見ても男の子ではなく思春期の女の子にしか見えない。
それもいかにもか弱そうな少女という雰囲気の──。
発案やコーディネートは青葉が行ったものだった。ドヤ顔で自慢げに青葉は話す。
「どう? 私の発想、素晴らしいでしょ!!」
これがルトの作戦った。流石にマフィアたちも時期国王候補の王子様がまさか女の子に変装しているなんて考えもしないだろう。
(なんか大切なものをなくしているような気がする……)
「どう? 僕、どう見える?」
苦笑いを浮かべる幸一。
「どうって──、普通に可愛い女の子にしか見えないけど?」
その反応に戸惑うルト。
「可愛い……、どう反応すればいいんだろう」
「そ、そ、そ、そう言う意味じゃないよ、よく似合っていて誰がどう見ても女の子にしか見えないってことだよ」
(それ、多分フォローになってないわよ……)
横にいる青葉は頭の中で突っ込む。
そして偽物の奴隷の首輪をつけて準備は完了になる。
ワンピースの上からはっきりと見える胸のふくらみ、幸一がそれを見ると慌てながら両手で胸を覆い恥ずかしそうに反論する。
「む、胸はもちろんパットだよ!! 僕は男の子だよ!!」
「それはわかっているよ、というかルトはいつも女装してこういった作戦をしていたってこと?」
幸一が聞きづらそうに聞いてみるとルトが顔を赤面させてコクリと頷く。横から青葉が話す。
「まあ、それくらい変装しないとばれる危険があるってことよ、王子様だもの!! じゃあ行きましょ!!」
青葉がルトと幸一の背中を押して出発を始める。
孤児院から出発してしばらくする。
街の中心部を少し外れた歓楽街にたどり着く。狭い通り、薄汚れた道。
賭博場や酒屋など人々の欲望が集うこの地区。
時折酒屋の店主が客引きをしている姿を見る。
そして少し道を歩いていくと一軒のバーがあった。
表向きはただの会員制のバーとなっているが違法行為を行っているのが青葉の調べで分かっていた。
そこで先導していた青葉が立ち止まる。
「ハプニングカフェっていうの、表向きはただのバーなんだけど、裏で違法な行為を行っているって分かったわ」
そこには他のバーと違った特殊なルールがあるという。
「表向きは男女が楽しみながら酒を飲んだりするバーなの」
「ただ男性だけでは法外な料金を取られるの、同時に女性も連れて行かなきゃいけないの。それに人数がある程度いた方が情報も聞きやすいし」
そしてその裏では客同士の違法行為が横行しているという、さらにその裏には大きな組織がバックについているという黒いうわさが絶えないという事であった。
店のドアを開けると店員が案内を始める。
「いらっしゃいませ、当店は会員制となっております。会員カードはお持ちですか?」
当然持っていない幸一、そこに青葉がポケットからカードを出す。
「この二人に新規会員にさせていんですけど大丈夫ですか?」
なんと青葉が会員だった。もともと捜査する上でこの街の実情を知るためにこういったいかがわしい店にも何度か潜入をしてきたのだった。
会員になるためには今の会員の推薦が必要らしく従来会員であった青葉が推薦するという形で幸一とルトの介入が決まった。
話しによるとこのために青葉と幸一が夫婦という設定にしてルトを奴隷という設定にしたのだった。
会員制で親密な関係であることが証明できないと入ること自体が出来ない秘密の場所と言う事であった。
(なんか変な理由をつけて俺と夫婦役にしようとしている気もするが……)
すぐに店員がそのための紙を出して二人がその紙に名前や職業などを記入する。もっとも偽名や嘘の職業ではあるが。
もちろんルトは女の子としての登録になった。
(なんか大切なものを失ってる気がする……)
そして記入が終わると幸一とルトが青葉と親密な関係であることが理解され店員が奥へ誘導する。
赤じゅうたんで敷かれた薄暗い道を進むと大きなドアがある、先頭の店員がドアを開けるとそこはエントランスだった、窓は無くランプのみが証明となっているためやや薄暗い。
「では、楽しいひと時をお楽しみください……」
店員が一言声をかけると再びドアを開け元来た道を戻り始める。
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