第16話 対決、魔王軍!!

 そして、魔獣たちの襲撃の日となった。




 


 信仰深い信者が集まるこの地区、その教会を中心に信者達の家屋が連なっていた。


 襲撃の予想された街であるこの王都ネウストリアでは、冒険者たちが魔王軍の兵士や魔獣の襲来に備えて準備を以前から行っている。

 各指揮官クラスの兵士たちが冒険者たちの配置を指示する声が聞こえる中、幸一達三人は激戦区の一つになりそうな、教会の中央の少し東側のスラム街のような狭い住宅がひしめく地区にいた。


 一般人たちは荷物を持って安全な場所に次々に避難を行っている。その光景を幸一が見ていると、サラが教会の方を見ながら話しかける。


「もうすぐ来るはずです、魔王軍たちが……」


 魔王軍──。


 魔獣とも呼ばれるその軍勢は、この世界の人達が魔法を使えるようになってから突然現れるようになった正体不明の怪獣や兵士たちの総称である。


 兵士の形をしていたり、動物に似ていたり、その種類は何十種類にも及び、視界に入った人間や生命たちを見境なく襲撃し殺していく存在だ。


 一般的な生物との相違点、それは紫色と黒色の中間の色の体と暗黒のオーラを身に纏っていること。 さらに尋常ではない強さを持ち、突然テレポートしたように現れる。


 生態系は全く解明されていない。襲撃のたびに多大なる災厄を人類にもたらしてきた。


 初期のころと比べれば、対策なども進み犠牲者の数も減ってきたものの、今もその戦いに犠牲になる者が絶えない。それだけでなく、襲撃をした場所が戦争にあったように廃墟になり、多大なる損失を出している。




「幸一君、来たよ」


 教会の方をじっと見ていたイレーナがつぶやく。青空だったはずの空が、少しずつ紫色に変色していく。


 それだけではない。まるでテレポートしたかのように突如として、兵士のような姿をした者が現れ始めた。


 鎧はてかてかと真っ黒に光っており、眼光は青黒く光って威圧感を十二分にはなっている存在。


「あれが魔王軍の兵士ってやつか」


 全く説明は受けていないが、恐らくあいつらが打倒すべきである魔王軍の兵士である。幸一はそう理解する。説明が無くてもその威圧感と気配でそれは理解出来ている。


「そうです──」


 サラがその言葉と共に解説に入る。


 黒い身体をした男性の騎士の形をしているが、首から上の部分が存在しない魔王軍の中で最も弱い兵士「デュラハン」。デュラハン自体は魔王軍の中でも最弱であり、普通の冒険者一人と同じくらいの強さでしかない。いわゆるザコ敵である。

 しかしその分数が非常に多く、一度の襲撃に何百体、時には何千体という大軍で襲ってくる時もある。


 サラが説明を終えると「デュラハン」の軍団がこちらに接近してくる。


 幸一とイレーナは戦う準備を始める。


 久遠なる世界の彼方から、混沌ある世界に閃光を貫き降臨せよ!!

 グローリアス・ソウル・エクスカリバー


 集いし願い、新たなる希望の力集い、無限の力解き放て!!

 アストログラフ・ソウル・スターライト・ランス


 兵器の召喚にも気合が入る。初めての敵との戦い、



 そして、幸一とイレーナはデュラハンの集団たちに立ち向かっていく。


 デュラハンの集団はまるでイナゴの群れのように二人に襲い掛かってくる。


 彼らは次々と二人に接近しては剣を振りおろし攻撃を開始。二人は次々に攻撃をかわしデュラハンの胴体を薙ぎ払い切り裂く。


 どのデュラハンも一撃をくらわせると、たちまち断末魔の様な叫び声を上げながら、後方や上に吹き飛び蒸発するように消滅していった。


「あまり強くないな……」


 幸一はデュラハン達を相手取りながら感じる。2人は襲ってくるデュラハンの集団に対して圧倒的な強さだった。攻撃を剣で受けすぐに有効打を与えばっさばっさと倒していく。戦いながらイレーナがドヤ顔で言葉を返す。


「当り前じゃん!! いつも戦っているのは私だよ!!」


 イレーナの冒険者としての実力はこの国でもトップクラス、そのイレーナと幸一はトレーニングで戦っていた。なのでデュラハン達が幸一にとって子供のようにも感じていた。


 襲ってきたデュラハン達が次々と消滅していく。二十体ほどいたデュラハンが二,三分ほどで消滅、三人は他の場所へ応援に向かう。


「ここはもう片付いたみたいだ、別の所に行った方がいいな」


「うん、行こう」


 二人がそう言葉を交わした時、兵士が一名馬車でこっちに向かってきた。その姿を見たサラがその兵士に話しかける。


「伝令部隊さんですね、何かあったんですか?」



 その兵士は男性の伝令部隊の人物であり、戦闘中の冒険者たちに指示を出したり状況を伝えるのが主な役目だ。

 伝令部隊はどこか慌てている様子があり、サラがそれに気付いて何がったかを尋ねる。


 するとその人が三人に伝え始めた。


「対大型魔獣用の部隊が全滅してしまったんです。それで強い全体攻撃が使える冒険者がいないか探しているところなんです」


 この襲撃には核という大型魔獣が存在している。

 核だけに襲撃する魔王軍たちの中心にいて、その中でも最も強い存在だった。


 なので通常の冒険者では太刀打ちできず、強力な冒険者を集める。


 大型魔獣との戦闘用に結成された炎属性の攻撃を持つ部隊が敵の水属性の部隊に急襲され、戦闘能力を失ってしまった。急遽代わりに大型魔獣に対抗するための部隊を編成することになった。


「メタを張られた、という奴よ。でもひどい偶然ね、こんな時に運がないわ」


 メタを張る、分かりやすく説明すると相手の弱点を突く行為である。今のように炎系の魔法を使う冒険者の集団に部隊に水を操る冒険者を当てたり、地上戦しかできない部隊に上空から攻撃を仕掛けたりすることだ。


「いや、恐らくこちらの情報が駄々漏れなんだ。偶然なんて考えられない」

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