第3話 いざ異世界へ

「んん……」


 幸一は我に返りゆっくりと目を開ける。

 まずは足元を見る意識を取り戻し我に帰った。

 冷静になりここがどうなっているかを知るため周りを見る。


 足元を見ると、星を二つ重ねたようなファンタジー漫画に出てくるような魔法陣のようなものがあり、その中心に彼がいた。


 次にきょろきょろと周囲を見る。広い空間で大理石の柱が規則的に並んでいる。



さらに周りの壁には神秘的な幾何学模様や、天使のような白い衣服を着た人物の絵画が描いてあり、ここが特別な場所であることが容易に予想できた。


「あれ? 何この服?」


 着ているのは、まるで中世にヨーロッパの騎士が来ているような甲冑。


 さらにその服を探っていると、右ポケットに紙が入っていることに気付く。


 彼はそれを取り出す。するとそれはユダからの手紙だった。その手紙を開けて内容を見るとこっちの世界に来てから何をすればよいかやこの世界の説明が描かれていた。


 手紙によるとこの服は国の兵士の制服なので、安心して城内をうろつけるとの記述がある。


 また、言語もこの世界の言葉を理解できるように幸一に術式をかけていたので、言葉の方もすべて安心してよいと記載されていた。


「それにばれないようにお前さんには、ここの警備の兵隊と同じ服装を着ているようにしたのじゃ。

 これならよほど不審なそぶりをしない限りばれる事はない」


 そういったことも書かれている。また、ここはこの国の国王の宮殿であるという説明があり、この今世界は勇者召喚の予定日の3日前だという。


 いきなり勇者召喚の日に転移させるより少し前に転移させておいて、この世界の事を知ったほうがよいとユダが配慮したのであった。


(あいつ、意外に俺のこと考えているんだな……)


 少し感心する幸一。

 さらにユダのメモには、この人物とあってほしいという文章が記されてあった。

 イレーナ・ミッテラン、サラ・ミディールという二人の少女で幸一と二人と一緒に冒険をしてほしいという事が書いてある。


(女の子二人か、まずはいい第一印象を決められるようにしないとな……)


 そう幸一は胸に誓う。


 さらに手紙を読み進めると、二人の所までの地図がある。


 その地図の通りに幸一は宮殿の中を右に左に進んでいく。その中で周りの様子などからこの世界の事を知ろうとする。


 まずガラスの窓の外を見ると夜になっていた。街並みは日が暮れていて暗くてよく見えなかったが、中世くらいの街並みがそこにある。

 灯りはランプやろうそくを使用しているようで、電気などはまだ発明されていないようであった。


 また、この場所はジーランディア王国、王都のネウストリアだとユダのメモに記載されている。



 周りには西洋の騎士が来ているような甲冑を来ている兵士が、そこらじゅうに立っていた。



(相当豪華に出来ているな…… 政府か何かなのか? 貴族が住んでいる施設みたいだな)



 そしてそんなことを考えながら歩いていると、その場所にたどり着く。そこは道の行き止まりのような場所に片開きのドアがそこにあった。


 そしてここでタロットカードをかざすようにと地図に記してある。


 確かに手紙の封の最後には、1枚のタロットカードがあった。恐らくこれの事だろうと予測しタロットを持って扉に向けた。


 そしてその瞬間──。


「え、身体が光ってる──?」


 幸一の身体が真っ白に光り始める、そして彼の体がそこから消滅してしまった。












 幸一は全く別の場所に移動していた。

 いきなりの瞬間移動、まずはここがどこなのかを理解しようとする。



 そして膝の高さまでお湯の感覚がある。

 周りには電球で照らされた大理石の壁、壁には西洋風の絵画が描かれていた。

 恐らくここは浴室であると幸一は推測する。


 そして前方の光景に思わず幸一は固まる。簡単に言うと、全てが見えてしまっていた。


 少女が1人いた。

 その彼女はとっさの出来事でタオルを落としてしまった状態で、固まってしまっていた。


 彼女の裸体が灯りに照らされて浮かび上がっている。



 茶髪のセミロングで少し顔が髪にかかっていて、ほっそりとした体形。

 幼くて幸一の世界では中学生にも見える顔つき、かわいくてやや大きめの胸、きれいな肌は入浴して大分時間がたっているようで、ほんのりと赤く染まっていて艶めかしくなっていた。


 少女はまだ状況が読み切れていないようでゆっくりと後ずさりする。


 慌てて幸一は素早く手で彼女の口に蓋をする。ここで叫ばれてここに来るまでにいた警備の兵士を呼ばれたら、幸一になすすべがなく投獄される。



 何とか彼女にこうなったわけを説明しようと、幸一は苦肉の策に出た。


「本当にごめん、これにはわけがあって」


 そうやって彼女の身体を見ないようにそっぽを向きながらこうなった理由を話しだす、目の前にいた彼女も、一応話は聞きそうな雰囲気になり安心仕掛けたその時──。


「サラに何やっているのかな?変態さん」


 背後から声が聞こえる、茶髪の少女はサラという名前を知ったことと同時に背後にも人がいたという事実にその声に身じろぎ一つ出来ずに幸一は固まってしまう。


 実はサラはその少女と一緒に入浴をしていた、サラは長風呂の癖があるため白髪の少女はサラという少女より先に上がっていた。そしていつもよりなかなか上がってこないサラに声をかけようとして、再び浴室に入ったらこうなったというわけだった。


「話し合いは──、通じないみたいだね」


 幸一は思わず後ずさりしそうになるのをこらえて、その女性をじっと見る。


 彼女の心を現すような肩までかかった純白の髪の毛、透き通った瞳。

 きゅっと適度に引き締まった腰のラインのくびれそれでいて、胸以外は引き締まった上半身のラインとは対照的に片手では隠しきれないような豊満な胸がふるふると震えていた。


 太ももは適度な太さをしていて細すぎず健康的で欲情を煽っている。


 そしてなめらかで真っ白の肌。


 可愛い──。





 心の底からそう思った、その官能的で美しい眺めに、幸一の心臓の鼓動が激しくなる。

 だがその女性からは殺気がこれでもかといわんばかりに飛んでくる。


 しかし彼女を突破しなければここから逃げられない、取り合えず逃げようと、彼女に突進するように向かっていく。


 その少女を無傷でかわすためまず右にフェイントを仕掛け、左に身をかがんでターンをする。


 そして少女の左腕と胴体の間を素早くすり抜ける、そしてうまくすり抜けたと確信した次の瞬間──









「え──?」

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