第8話 逃げられると思わないで

「久しぶり、実花」

―え?

横を向くと、そこには、かつて僕が食べた、シロナ・フェード…

僕の親友の、シロナだった。

「いやー本当久しぶりだねぇ、実花、7年振り…かな?あはっ、あえて嬉しいよ、」

と笑いながら言った。 本当、久しぶりだ… けど、2つ疑問があった。でも、シロナはあの7年前の事…気にしてなかったのかな…? 2つ目は、

「ねぇ…僕もあえて嬉しいけど、一つ聞いていい?…どうしてこんなに奴隷みたいな服、着てるの?」 シロナは表情を変えずに言った。 「簡単だよ。私、奴隷だから」

たしかによく見れば手にかせはまっていた。 なんでこんなに冷静なのか、自分でもわからない… 「シロナ…何かしたの?」

「ちょーっとね…凄いえらそうな人がいたから…ちょっと痛い目にあわせた…だけ」

最後の方は声が小さくなっていた。

「はーぁ…たしかに偉そうにしてる奴らは嫌いだけど、さ…やって良いことと悪いことがあるんだよ…」 と言うとシロナがほおふくらませ、子供みたいに怒った。

「はいはい、分かってますよーだっ」 まるで子供みたいに反論はんろんする姿は面白かった。 「っふふ…ははww」 「何笑ってんの!」


「…とそんなことは良いとして、あのさ、シロナ、ここに僕のお姉ちゃんいなかった?」

シロナはちょっと考え、こう言った。「たぶん、あそこの角を曲がって、真っ直ぐ進めばいたけど…なんでお姉さんここにいるの…?私みたいなことする人じゃないと思うけど。」

「実は…」

およそ20分後「なるほど、ね…分かった、私も協力するよ。」

「本当!?ありがとう!!」


「…さて、私ができる事は、あそこの牢屋のかぎを取ってくる事しか出来ないけど…」シロナが申し訳なさそうに言った。 「全然大丈夫!ありがとう!それだけでも助かるからさ! …所で、どうやって取るの?シロナは出られないでしょ?」

シロナはドヤ顔で鍵を見せつけてきた。 「ここから出ることなんてよゆーだよ。ここの鍵もあるし。」 すごいけど、一体何をしたのだろう…僕は聞かないことにした。シロナの事だからきっと… 「…それはたのもしいね、シロナ。」

「じゃ、こっから出て、5分くらいで戻ってくるから、待ってて」

と言ってシロナはとことこ歩いてった。 歩いていくくらいだから、ユキ姉は大丈夫なのだろう…僕はシロナを信じることにした。 …さっきの見張り、たしか…?僕たちフーチェの城で似たようなやつを見たことあるような…でもうちの兵なわけないしな…

城にいた時の記憶が曖昧あいまいになってきてるな、最近の話なのに。

まぁ、色々あって疲れてるんだろうな…僕

そんなことを考えている内にシロナが戻ってきた。

手に鍵束かぎたばを持ちながら。 きっとシロナの事だから、どれか分かんなかったのだろう…昔から、変わらないな…。

「…なんとなく分かるけど、なんで鍵束ごと持ってきたの?」

「え、えーっと……あ!そう!他の捕まってる人もついでに助けようかなーって…別に?どれか分かんなかった訳じゃないから!」

絶対あとから付けた理由だろう。…本当だとしたら、優しいけど。

「…こほん、さて、茶番はこれくらいにして、いこうか。…実花のお姉さんのとこへ、ね。」



「…!ユキ姉!良かった…無事で…」

シロナの言うとおり、ユキ姉はいた。 僕は安心して、なんだか、涙が出てきた。

「心配したんだからね…」 「ごめんね…心配かけて…」

ユキ姉もなんだか嬉しそうだった。 もちろん、僕も嬉しいさ。

「おー感動の再開、おめでとう〜」とシロナが言った。

「ユキ姉、シロナだよ、覚えてる?あのね、シロナが手助けしてくれたんだよ。」

「あら、シロナちゃん!久しぶりね。大きくなったわね、色々と。」

え?何その意味深発言いみしんはつげん。とまぁそれはいいとして、

「シロナ、色々ありがとね、皆で帰ろ。」

…というか、シロナの鍵束の件は、看守が凶悪すぎて、助けれなかったよ…

ごめんね、許してください…

「…私が帰ってもいいのかな…」 ユキ姉が何かボソッとつぶやいた。

「ん?ユキ姉なんか言った?」 ユキ姉は微笑んで、「…なんでもないよ。帰ろっか。」

これで何時もの生活に戻れる、はずだった。

「逃げられると、思ってるのかしら…ユキ?」

そこにはユキ姉のそっくりな人がいた。  「……貴方は、何なんですか、ユキ姉をさらったり…!」 そっくりな人は冷たい目でこう言った。

「…私は、冷。 氷工冷ひょうこうれいよ。べつに、貴方には関係のないことよ。…以後、お見知みしりりおきを。」





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