第6話 「自称」花屋

しぐれちゃんの家を出て僕はユキ姉を探すことにした。 そんなに

遠くには行ってないはずだ。 …多分。

そういえば、母と父にはこの事は言っていなかった。 僕にはイレーナと言う名前の

母とルシファーと言う名の父がいる。 両親は今、仕事でどこかへ行ってしまっている。

僕たちフーチェ家は結構有名な貴族で、長いことキラテェ家と言うとこと仲が悪い。

何故仲が悪いのかというと、ご先祖様同士がとっても仲が良くなかったから。

そんだけで長いことこんな関係になるなんて面倒くさい。

まぁそんなことは良いとして、たしか、母と父が帰ってくるのは一ヶ月後…

それまでにユキ姉を探しだせばいいだけだ。

(ユキ姉、大丈夫かな…) なんだか不安になってきた。ユキ姉は、ユキ姉にそっくりな人に連れてかれた…と思う。憶測だが…。 でもなんで、ユキ姉を連れて行ったのかな?

よく分からなくなってきた… 考えるのは辞めよう…

    「…あれ?ここ、どこ…?」考え事に耽っていたら、いつの間にか目指しているところと全く違う場所に来ていた。看板があった。「えーっと…フエフキ…?」僕が目指していた場所は、アリシアと言う所だったが、フエフキというところらしい。変わった名前…

「って、どうしよう!アリシアにユキ姉が居るとしたら、順番間違えてるし、日向兄も居ないじゃん!」 内心僕は焦っていた。だってそれじゃあ時間の無駄じゃ無いか…

だけど辺りはすっかり暗くなっていた。

「…しょうがない。今日はここに泊まろう」 丁度宿っぽい所もあるし、こんなに暗けりゃ

アリシアも見つけられないだろう。ユキ姉も日向兄も。仕方ないだろう…


僕は宿へ向かう途中、花屋を見つけた。ただの花屋の筈なのに、妙に気になった。

「なーんか気になるなぁ…」

せっかくだから入って見ることにした。


中は普通に花が色々おいてある、普通の花屋だった。

でも、奥に何かこの引っ掛かりの原因があるはず… 僕はさらに奥へ行った。

店内はかなり広かった。 進んでいくと人影が見えた。 店員さんだろうか…

あれ、でもあの人どこかで…? 「あの…貴方は店員さんですか…?」

するとその人は振り返った。 茶髪で髪を結っている。 紫のエプロンっぽい物も

着けている。 「お客さん?珍しいわ…」 と店員さん?は言った。

「始めまして。私はここの花屋のメアリーというの。…ただの花屋よ。」

メアリー…? たしか本で読んだことがあるが、たしかメアリー・ベージュと言う大魔法使いがいたと書いてあった。 でも花屋の店員って言ってたし、人違いかな…

「貴方って…大魔法使いのメアリー・ベージュさんですか…?」

メアリーさんは表情を変えずに、否定した。「…いいえ。あんな酷い魔法使いなんかじゃないわ。」 本にそんなこと書いてあったかな… たしか偉大なる優しい魔法使い、メアリー・ベージュ。彼女に救われた人は1万人とか。酷い魔法使いなんて一言も書いてなかった気がしたけど…メアリーさんはあのベージュ様と何かしら関係あるのかもしれない。

でも追求はしないでおこう。嫌かもしれないから。

「…あ、あの。白色の髪で赤目の、左腕に傷がある人、見ませんでした?」

ユキ姉には小さい頃、いじめを受けていて左腕に傷があった。付けられたんだろう…

「…見た。見たわよ。」 …え!?アリシアじゃなくて、フエフキに居たの…!?

「あの…何処にいるかわかりませんか…?」 とても嬉しかった。

安心して皆で家に帰ることができるかもしれない。 

「正確には分からないけど…あの子、奴隷みたいな服装だったわよ?」


           「……え……??」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る