第4話 僕ってどんな存在?

家を出て一日ぐらい経っただろうか、辺りは薄暗かった。

「もうこんな時間、か」  と呟いた。 ここはまったくと言っていいほど

人通りがない。人が全然いない。 一体ここは何処なのだろう。 この辺に村があれば良いのだが…  いくら人とは違うからといって…体力がないのだ、僕は。


「もう、限界、かも…」 もう身体はボロボロだった。 ユキ姉も居ないし、日向兄もいない。 …正直心細い。 「もう無理だ…」 僕はその場で倒れた。




夢を見た。 ユキ姉に似たあの綺麗な人がこっちを見てくすっ。と笑いながら

何かを言っている夢。 でも、僕には聞こえなかった―


「…の……丈夫、……か」 なんか声が聞こえる気がする。

(気のせいか…) 「あの…大丈夫ですか」  「うわっ!?」

今度こそハッキリ聞こえた。 ちょっと弱々しい声。 目を開けるとそこは

見たことのない場所だった。 そして横にはオッドアイの、白髪のショートカットの子がいた。 「あ、えっと…貴方は、どちらさまでしょうか…」

「あ、えっとですね…私、月夜しぐれっていいます。えっと、貴方がこの村の近くで倒れていたので…」 と言った。 「あ、そうだったんだ、ありがとう。…でも、私もう行かないと。」 …ユキ姉を探しにいかないと。

「…え、でもまだ安静にしていたほうがいいと思うんですけど…」

「でも僕は…っ…ぁ、゛あ」 ……こんな時に…っ……

「アレ」が来てしまったのか……


7年前

…僕には親友がいて、その子はシロナって言う子がいたんだ。小さいときから

ずっと一緒にいて、とても仲が良かったんだ。 白髪で、綺麗な青色の目をしていた。

でも本人はその外見が嫌いだったみたいだ。 原因はよくわからないが…

でも、取り敢えず仲がとても良くて、シロナと平和な時を過ごしていたんだ。

でもある日、なんの前触れもなく僕の身体に異変が起こったんだ。

それはいつも通りシロナと遊んでいたとき、急に目の前が真っ暗になって、

しばらくしたらもとに戻った。 でも僕の近くに、黒髪のシロナ…?

がいて、血を流してた。 そしてしばらく唖然としていたがしばらくして

気がついた。

僕の…口の周りには血がついていた。 そして口の中に広がる鉄味は、

紛れもなく、血と食べたこともない味の、肉のような食感の物だった。

「嘘……」

それは多分、シロナの肉だろう。

「私が…シロナを……食べた……の?」

私が、殺しちゃった。 シロナを、しかも食べてしまったんだ。


私は申し訳ないとか思わなかったんだ 悲しくもなかったんだ

そっか…昔読んだ本に書いてあった…「人魔」なんだ

私は―人食い人魔。

「……あはは…あっははは!!!」

気が狂いそうだ。 私は、人じゃないって気づいた時の絶望で…

そして親友を殺しても悲しくもなんともない自分が怖かった。


しばらくして、私は我に返った。 もうどう仕様もなかった。

幸いシロナの死体は私が食べた左手以外の部分は残っていたから。

でも、おかしい。 シロナは黒髪ではなかった筈だった。

なのに黒髪、髪飾りの位置も違う…

「……?なんでなんだろう…」

その答えはすぐにわかった。

「それはね、私の偽物みたいなモノだからだよ。実花」

すぐ後ろで声がした、その声には聞き覚えがあった。

振り返ると死んだはずのシロナがいた。 「どうして……?シロナが生きてるの…?」

「やだなぁ、私は死んでないよ〜。…それはね、一年前に死んだ私の姉。」

「え…?」たしかにシロナとそっくりだ。 違うのは髪の色と髪飾りの位置、目は閉じていて見えない。 「簡単に言うとね、私の姉は事故で死んだ。でも魂はまだ近くにあって、私の中に入り込んで、たまに私と入れ替わってたの。いわゆる二重人格的なやつだよ。」

「そんなこと、あるんだ……」驚いた。そんなことあるなんて。

「でもね、私は姉が嫌いだった。邪魔だった。でもちょうど私の姉、クロアの人格になったとき、実花が殺してくれた。アイツを…だから、私実花に感謝してるのよ?そんなに気に病む必要はないの。」シロナはそっと私を頭をなでてくれた。 優しかったけど、なんだか怖かった。 「ありがとう、実花。 …また会えたら、何処かで会いましょう。さようなら…」 と言ってそれきり、シロナは姿を見せなくなった。

それから自分が人魔だという事に気づいた。厄介な事に一ヶ月に一回、人を食べないと死ぬらしい。それがわかったのは本で調べたからだ。人を食う人魔は少ないらしい。

最初は少し抵抗があったが、次第にそうならなくなった。―自分が怖かった。

その一ヶ月に1回の日が今、来てしまったらしい…まずい、助けてくれたしぐれちゃんを巻き込む訳にはいかない。一刻も早くここから立ち去らないと。

「あ…ありがとしぐれちゃん。僕もう大丈夫だから…」

「でもさらに顔色悪くなってますよ…?急いでるのは分かりますが…」

しぐれちゃんはここに引き止めるつもりだ。でもこのままだと限界が来てしまう。

そのとき、勢いよくドアを開けて入ってきた人がいた。二人だ。

「大丈夫かな?ちょっとこっちに来てくれない?茶髪の人。」





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