第2話

私が思わず車を停めると、救急車がサイレンを鳴らしました。


そして私の前に割り込みそのまま走り去りました。


私は影のほうに顔を向けました。


黒い影はまだそこにいました。


近くに数名の警察官がいましたが、誰も影に反応しません。


そのとき私は気付きました。


影は先ほどと同じ場所に立っています。


そこは救急車のすぐ前でした。


それなのに救急車が発進したにもかかわらず、まだそこにいるのです。


生身の人間であれば救急車にひかれてしまうでしょう。


しかし影はひかれたようには見えませんでした。


――おいおいおい……。


私は影の正体に気付きました。


おそらく事故車の運転席にいた人間。


体は救急車で運ばれていきましたが、肉体以外のなにかがその場に残っているのでしょう。


私は背筋に悪寒が走りました。


アクセルを踏み抜き、警察官がいるにもかかわらずに荒い運転で、走り出しました。


そして家に帰りました。



次の日、私はまた残業で遅くに帰宅しました。


ここのところは毎日なのですが。

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