第27話 よく学べ!→よく遊べ!④
「ふぅっ! ふぅーっ! ふかーっ!」
「姫、姫落ち着くにぃ。無理やりは悪かったにぃ。謝るにぃ。だからこっちに来るにぃ?」
「ごめんにゃあ? 姫があんまりにも可愛かったものだからちょっと我を見失っていたにゃあ? ほぅら、美味しいサンドイッチと冷たいお紅茶にゃあ? 姫はお紅茶が大好きにゃあ?」
ゆ、許さないかんな!
あんないやらしくて如何わしい魔法でオレを羽交い締めにしといて!
本当、許さないかんな!
怖かったんだからな! すっごい怖かったんだからな!
ちょっと泣いちゃったじゃないか!
でもそのサンドイッチと紅茶には罪は無いのでいただきます。
5号の作ったお料理と3号の煎れる紅茶は絶品だもんね!
冷たいのが良いって言ったら変な顔されたけど。こっちの世界じゃあんまり一般的じゃないらしい。
ゆっくりと3号と4号が待つ木陰に移動する。
警戒心は解かないからな!
まだ許してないからな!
「先にお昼食べちゃうにゃあ。お腹が膨れたら、姫の機嫌もきっと治るにゃ」
バスケットをパカりと開いて、美味しそうなサンドイッチを見せびらかす3号。
ローストチキンと卵……!
美味しそう──────じゃなくて!
「そ、そんな簡単じゃないやい! 子供あつかいして!」
「姫は歴とした子供にぃ?」
そうだけど! そうだけどさ!
「とりあえず食べるにゃ。はいどーぞ」
3号に手渡されるがままにサンドイッチを受け取り、太い木に背中を預けてペタリと座る。
お尻の下にはきれいな絨毯が敷かれているから痛くない。
むしろ水着姿のままだから、太腿の裏とかふくらはぎの裏とかに当たる絨毯の感触が気持ち良くて、ついつい足を伸ばしてしまった。
「──────あむ。もくもく、もくもく」
あ、これ……美味しい!
素朴なパンに味が濃いめのローストチキン、そしてシンプルな卵が良く会う!
この間の挟まってるレタスと、トマトも凄いマッチしてる!
「もくもくもく……ごっくん。あんむ、もくもくもく……」
「姫、美味しいのはわかるけど、もう少しゆっくり食べるにゃあ? ちゃんと噛んでるにゃあ?」
「もぐっ、ごっくん! か、噛んでるよ!」
「じゃあ今度はゆっくり噛む練習にゃあ。ほら、口の端っこにパンがついてるにゃあ?」
細かい刺繍が施されたハンカチを摘んで、オレの口の端を拭う3号。
「……ありが、とう」
「どういたしましてにゃあ? ほら、お紅茶にゃ」
ティーソーサーとトレーに乗ってやってきた、オレ専用のピンクの縁のティーカップ。
その中には小さな氷と綺麗な紅い紅茶が入っていた。
レモンとかってこの世界にあるのかな。紅茶の葉があるならありそう。
ミルクティーよりレモンティーの方が好きなんだよね。
「んくんくんく。ぷあっ」
ティーカップを持つと一気に煽る。
かぁー! おいしい!
「ひーめー? 冷たいものを一気に飲むのはだめって言ったにゃあ?」
「お腹冷やして痛い痛いするにぃ?」
あ、忘れてた。
こないだ夕飯でいっぱい飲みすぎて、ちょっとだけ腹痛になったんだっけ。
「ご、ごめんなさい」
「ほら、今度はゆっくり飲むにゃあ?」
そう言って3号は、お気に入りらしい真っ白い陶器のティーポットから紅茶をオレのティーカップに注いだ。
「ありがとう3号」
「どういたしましてにゃあ♡」
3号が淹れてくれる紅茶がおいしいのがいけないんだよきっと。
絶対そんな言い訳、口に出さないけどね?
【…………姫、もう怒ってないのですか?】
──────はっ!!
わ、忘れてた!
【簡単すぎます……姫の前世の知識で言うと、チョロすぎです】
う、ううううっ、うるさいなぁ!
ご飯がおいしいから!
ご飯がおいしいから全部オッケーなの!
「あんむっ! もくもくもくもくっ!」
静かな湖畔の森の影で、オレは釈然としない顔でサンドイッチを頬張った。
我ながら簡単すぎるなぁって思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます