幻覚・病状・霊感

 精神科の閉鎖病棟へ入院したことがあり、その後、通常の病棟へと移った時に、同い病気の人とは出会わなかったものの、幻聴、幻覚に悩まされている患者と話す機会があった。


 私は自分には愛を与えない主義で、七、八年間うつ病だと信じて疑わなかったが、実はまったく違う、双極性障害だったという結末を一度迎えた。この病気は放置しておくと、症状が悪化するらしいのだ。


 そんな適当な私で、幻覚、幻聴とは、怖いものなのかと何となく思っていた。死ねと言われたり、脅迫されたり。しかし、そうではないものもあるのだと知った。

 お腹を抱えて笑ってしまうほど、おかしなことを言って笑わせてくる幻聴もあるようだった。精神的に追い詰められるとその患者は、廊下ですれ違っても挨拶もせず、一人で笑っているのである。


 ふと、心配になったみた。自分が見ているものは、もしかしたら幻覚? 病気の症状だとしたら、きちんと薬を飲んで対処しなければ――と、さっそく医師に確認したが、

「それは違います」

 だった。


 そこで、自分はやはり心がんでいるのだと思った。その昔、開眼した頃、同じものが見えて聞こえている人がそばにいたではないか。だから、この感覚は霊感なのだと改めて認識した。


 幻聴が少し出た時があり、明らかに聞こえ方が霊感とは違う。幻聴は耳にこびりつくようなもので、神経を集中させて耳をすますと、実在していない音や声だったりする。しかし、霊感というものは確認作業をしても、やはり聞こえてくるのである。


 それから昔から、架空の人物や空想の場面を想像して、相手に一方的に話すことがある。これは際限がない。相手に意見されないものだから、いつまでもいつまでも話してしまう。


 しかしこれも、最近調べたところ、病気に症状のひとつらしい。しかも、内容はどうでもいいことなのだ。過去の変えられないこと、その相手に言っても絶対に理解されないことを、何時間も一人で誰もいないところへ向かって話しているのだ。やはり異常である。


 冷静に落ち着いて考えれば、時間と労力の無駄である。疲れてくると、この症状が出やすい。その時は、強制的に霊感や小説の世界へダイブすることにしている。そのほうが断然、有意義な時間を過ごせるからだ。


 2020年7月12日、土曜日

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