第8話 Q.物理特化でも魔物倒せるかな? A.やり方次第!
前回のあらすじ。
また訳の分からん奴がきたぞ!
街を少し離れた野原に来たが、風通しがいい。
程よい風が吹いている、うん、気分がいい。
「それで君は自分の魔法属性が分からない、と」
「何にもないド田舎から上京してきた身なんでね」
「魔法がないってどこの田舎……いや、本当にこの国の人?」
「ここからものすごく遠い辺境のド田舎から来た」
「ふーん、怪しさ満点ね」
ものすごく疑われてる。
だが、アタシは悪いことを何もしていないので堂々とする。
当たり前である。こちらに非が無いどころではないのだから。
「で、そこの二人は純粋な光属性だけと光以外の五属性複合って……」
「…………珍しいか?」
「いや、普通は近い属性が一緒にいることが多いから。
真逆な組み合わせはちょっと珍しいなぁ、って思っただけ」
口に出してるじゃねぇか。
「それに光属性は複合してることが多くて純粋なのはかなり珍しいかも」
「ふっふっふっ! 何を隠そう私は正義のヒーラーですので!
誰だって平等に照らせる純粋な光属性です!」
「え、何それ……?」
「あ、あれ……?」
オルフェちゃんのカッコイイ決めポーズをルーラさんは冷ややかな目で見る。
アタシから見てもカッコイイと思うのだから、完全に決まっている。
おい、誰かフォローしてやらんと大変なことになるぞ。
「正義か……何を以って正義とするのか定義に割れるところだね」
「…………そいつは紛れもなく『正義の人』だ」
「へぇ、その子のこと随分と買ってるのね」
「…………まあな」
ああ、フォローに走っても駄目だったわ。
空気の流れが変わんねぇや。
「…………それよりもクリスさんの魔力属性を調べなくていいのか?」
「そうね、まずはそこから始めるとしますか」
よし、アタシに話題が移った。
いや、良くはないぞ。空気的にはひどいことになってるぞ。
……こういうとき、空気の流れすらみえるってめんどいね。
「で、どうやって分かんの?」
「手っ取り早いのは魔力鉱石に魔力を流して反応を見るのが一般的かな」
そういって、ルーラさんが取り出したのは石、謎の石だ。
この世界特有の鉱石なんだろうけど、そこらへんの石と何ら変わらない石だ。
……んで、魔力を流すと言われてもそんなことしたことないからな。
どうすんだよ、この状況。
「手本とか見せてくんないの? ド田舎から来たからやり方が分からん」
「ド田舎万能説だな」
「ド田舎は何にもないからド田舎なんだよ」
「了解、君はこの星とは別の所から来たってことにでもしとくよ。
まあ、簡単に言えばその石を握って、集中する、それだけ」
握って、集中、か。
シンプルで分かりやすい。
……いや、さらっとこの人確信を突いてないか?
まあ、それはそれとして……
「握り潰してこの石が壊れた場合はどうする?」
「ないない、人間の握力でそう簡単に壊れるシロモノじゃないから」
「そうか」
なら、安心だ。
なんせアタシは握力が110キロくらいはある。
自分でも言うのもなんだが、そういう環境で鍛えられたからそういう風になった。
遺伝とかそういうのではないのは確かだ。
まあ、それはそれとしてやってみるか。
掛け声とかいるか? いや、いらんわな。
というわけで、無言でやってやった。
「やるんなら何か言ってからやってよ!?」
「効率が悪い」
握った石が灰色の光を放ち始めた。
うわあ、なんだか胡散臭い光彩だよ、これ。
「これ、何属性?」
「ああ……これは『鋼』属性だね。火と土の複合属性か」
「それってすごいの?」
「普通だね、珍しくはない」
「なるほどね」
よし。
普通に生きていくには問題ないだろう。
安心が一番先にきたのは、きっとこれ以上面倒ごとに巻き込まれたくないからだろうか。
ここで変にレアなのや光とか闇とか出てたらきっとまた怪しい目で見られただろうね。
「あの速さから風属性かと思いましたが……」
「あの速さって?」
「あ、昨日ですね、クリスさんはビスタさんの剣を凄い勢いで躱して、ビスタさんのリボンを取ったです!」
「あの自由人の剣を躱した? ははっ、またまた冗談を……」
「…………そいつは人に冗談を言えるような奴じゃない」
「いやいや、あいつの剣を躱せる奴が鋼属性なわけないじゃん?」
「…………」
「え、マジな話?」
そりゃね、あれは初見じゃ躱せないよ。無理だよ。
相手の得物の射程と大体の速度が分かればアタシくらいの奴なら躱せる。
まあ、アタシ程度に実践経験をある程度積めばいける範疇だったがな。
それでも無茶苦茶疲れた。
あんな馬鹿みたいに速いのは二度したくねぇわ。
まあ、過ぎたことよりも前だけを向きたい。
「で、鋼属性ってなにがあるの? 毒に強いとか?」
「毒に耐性は人それぞれだけど、そうだな……強いて言うなら……」
「強いて言うなら?」
「職人気質の人が多い」
「そう」
それ単なる性格占いだろ。
……
…………
……………………
そのあと、山の散策は軽かった。
あくまでも今までのアタシの経験上での軽いだからあまり当てにはならない。
いや、野犬みたいなモンスターの群に襲われたけども。
銃が欲しい。
率直な感想がそれになった。
接近して蹴り飛ばしたりするのは正直危険がでかい。
その点は銃は楽だよ、引き金を引けば遠くからでも倒せるのだから。
カナロさんもオルフェちゃんも息を切らしている様子もない。
やはり、2人とも只者ではなかったようだ。
オルフェちゃんの杖から光弾出たよ。
カナロさんの腕から暗黒波動みたいなオーラが出たよ。
うん、ここへ来てようやくファンタジー要素が出てきたよ。
理解が追いついたのはことが済んだあとだった。
で、ルーラさんは……出てきた野犬の群に襲われた時に無茶苦茶出遅れた。
驚いたよ、だって誰も何もしてないのに出遅れるってどういうレスポンスの悪さだよ。
で、そのあと、長短二本の剣でものすごい勢いで野犬を狩っていった。
それにこの人……ものすごく器用だ。
出遅れた後のカバーリングが異常に上手い。
出遅れ慣れしているのが、よくわかる。
「君は周りはよく見てるのに自分のことはまるで見てないなあ。
自分の命くらい少しは大切にしなね」
「否定はしない」
「オルフェちゃんは命中精度は高くて良い。
けども一発一発の威力が低くて目眩まし程度にしかなってなかったね」
「う……私は回復が得意で攻撃はあまり……」
「で、カナロくんは大雑把すぎる。
あれほどの力量なら格下と同等クラスなら圧倒できるだろうね、それ以上になると厳しいかもね」
「…………そうですか」
ああ、そういうことか。
出遅れたと見せかけて、アタシたちを観察されていたか。
全く食えない人だわ、この人。
曲者ばかり集まるギルドの誰でも組める奴が曲者じゃないわけないじゃん。
「まさか最初滑ったのも計算通りだったんですか!?」
「え、うん、まあね」
いや、出遅れは完全に事故だったわ。
本当なんなんだろう、この人。
と、今は昼飯タイムだ。
お弁当にもなるマスターのチャーハンえらい。
「そういえばルーラさんはあの銃のお姉さんと関係なんですか?
今話題の相棒とかバディとかそういう関係ですか?」
「うーん、一般的な血縁だと私はドゥラの叔母さんにあたるかな。
私のお姉ちゃんがドゥラの母親。で、ドゥラと私は父親が同じ異母姉妹ね」
なるほど。
なるほど。
なる……ん?
今、この人何かおかしいこと言わなかったか?
チャーハンを食べる手が自然に止まる。
……どうやら複雑な家庭事情だ。
深く突っ込めるか? アタシには無理だわ。
なんじゃ、その複雑すぎる家庭事情。
「…………すまん、もう一度聞いていいか?」
カナロさん!?
いや、なんで聞くの!?
聞いてなかったのか。こいつ!?
スルーしとこうよ、そこは。
「だから、私はドゥラの叔母であり、異母姉妹だと言ったのよ。
ドゥーユーアンダースタン?」
「……………………………………そうか」
……リアル親子丼だよな、それ。
うん、聞かなかったことにでもしようか。
「大雑把に姉妹ってことでいいですか?」
「まあ、そうね……昔っから異常に手のかかる妹みたいなもんだし。
というか、クリスちゃんとカナロくんは今聞かなかったことにしようとしてるでしょ?」
「優秀な子孫を残すにはそういうことする輩はどこにでもいる」
「…………同意だ」
ここでもそういうことをする奴がいるのか、変わらんな。
遺伝子操作で優秀な兵を何人も作り、何人も戦場に送り込む。
どっちが先に始めたかわからんが、倫理的には間違っているかもしれんよ。
「うーん、優秀かどうかはわからないけど、私たちの父親は悪い父親ではなかったよ」
「…………そうか」
本人が幸せなら別にいい。
アタシの父親は……まあ、話さなくてもいいだろう。
今の話に比べるとインパクトがあまりにもなさすぎる……。
「そういえばアインさん、大丈夫かな?」
「ああ、アイツなら丈夫だし、大丈夫だろう」
まあ、こんな異世界でもアイツなら大丈夫だろ。
あんなんでも一度死んで、アタシの世界を救った奴だから。
「ドゥラは……うーん、なんというか、問題児だけども悪い子じゃないよ」
お、フラグだな。
無事に帰ってからアインからちゃんと話でも聴いてみるか。
さて、どんな与太話が聴けるか、今から楽しみである。
あ、ついでにアタシらの探索クエストはあっさり終わった。
『薬草のような草』を手に入れたよ。
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