第8話彼女の言葉にむず痒く感じた

翌日、いつも通りの時間帯に登校し、教室に足を踏み入れると月史絵が俺の席の机に座りながらスマホを弄っていた。

「おはよう、月史絵さん......早いね、今日は」

「あっ、佑音。おはよう、佑音と話したくて早く来たんだ」

俺には眩しい笑顔でそう返してきた彼女。

「そう、なんだ......ありがとう」

女子から淀みのない笑顔でそう言われるのが新鮮でむず痒くすら感じた。

今まで女子からそういった言葉を言われたためしがない。妹は例外だが。

「で昨日やってたあのアニメ──」


クラスメートがぞくぞくと登校してきて、友達のもとへと掛けていく彼女。

「美織ぃ、あいつとあんなに喋る仲だっけ?」

「違うよ、たまたま喋ったら意外に楽しくて。深い感じじゃないから、はははっ」

「ふぅ~ん、でさ──」

といった月史絵とある一人の女子の会話が聞こえてきた。


視線を正面へと戻し、教室に響く雑音を遮断するようにイヤフォンを耳に入れて、流れるバンドの曲に聴きいって瞼をとじて机に突っ伏した。



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