第11話 アテンドTHE大化改新(11)
十一
「むしゃくしゃしていた」
とは、今朝のテレビで見た銀行強盗の供述である。犯人の使う常套句。そして、今の私の率直な感想でもあった。
朝のルーズリーフ事件から始まった今日は、起きたてからずっと水平線を這う一方の一日だった。山を登ろうと駆け出した朝。私は、中腹より手前で早々にばててしまった。空元気が過ぎたらしい。足が回らなくなった私は、ばーゆに引き摺られるようにして登校した。教室にいたつばきからは、保健室に連れられそうになる始末だった。
二人に「なにかあったの」と始終事情を聞かれ、話したいのはやまやまだったけれど、つばき本人(・・)を前にしたら気が引けて、
「なんにもー、走って疲れただけ!」と軽く誤魔化しておいた。
話を聞いたら、あまりの悍ましさにつばきが倒れちゃうかもしれない。無垢だから。
当然授業中は気分が沈んでいて、楽しみだったはずの昼休みまでそれは引きずった。別棟の廊下にたどり着いても気分は優れない。私は音楽プレーヤーを取り出す。こうなれば歌うしかない。あぁ、世界のばかやろう。だって悪いことしか起こらないんだもの。
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