Dime Noir ある殺し屋の回顧録
@Chabouzu
序章
陽気な殺し屋による『極めて前置き的な前置き』
ゴースト、グレイマン、ナンバー・サーティーン、ベイカーズ・ダズン……過去の私には、様々な通り名やコードネームが当てがわれたが、ここはひとつオガタと名乗っておこう。
世界で最もエキセントリックでかつハードボイルド小説のような人生を送っていると自負している私は、これからそう自負に足るだけの体験談を元にして、有りの儘率直に、物語を執筆してみようと思う。これは私自身が振り返るための面白き回顧録となるだけでなく、私以外の読者(そんなものがいればだが)にとっても多分に楽しまれる読み物となることを確約しよう。
前以て私の素性と経歴を簡素に断っておくと、両親は日本人で、生まれはオーストリア、成り行きによりヨーロッパを転々しながら、多数殺しの仕事に手を染めるようになった……所謂、殺し屋と呼ばれる違法かつ反社会的な職に身を投じたのである(そこまでの経緯は長いうえに全く面白みがないので割愛させて頂く)。
ここで先に綴った『エキセントリックかつハードボイルド小説のような……』という文を持ち出すが、何も単なる殺し屋仕事の日々を語ろうという腹づもりではない。無論、裏社会に足を浸かっている人間は、多重な意味合いを込めてそれなりに劇的な毎日を過ごしているかもしれないが、そんなちっぽけなものとは比肩されないほど私のは格別である自信がある。というのも、私は殺し屋となってから、長いことどこの組織にもつかず又忠誠を立てたこともなかったが、ある時を境にして、私はマフィア・諜報機関・テロ集団の類より恐ろしい存在と契約を交わし、その手先として、コンサルタント・キラーを務めるようになったからだ。
予めここで明かしてしまうと、その恐ろしい存在とは、〈悪魔〉である。それも比喩的な表現に用いられる『悪魔』などでは決してなく、空想・超常の存在として人類史に刻まれた『悪魔』の方だ。
早々に悪魔というとんでもない単語が飛び出したことから、読者諸君(改めてそんなものいればだが)の大半は、きっと「ナァンダ、単なる白痴の妄想日記じゃないか」と思われたに違いない。しかし、夢や妄想、嘘偽りの類はこの際きっぱりと否定させていただく。
さて、長い前置きもここまでに、そろそろ本編を始めさせていただこう。
Dime Noir ある殺し屋の回顧録 @Chabouzu
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