第14話ゴーゴンの三姉妹
背の高い松の木が生えている。
玄関までは白く丸い砂利で整備されていた。
砂利を踏み、一人の女性が圭介たちを出迎えてくれた。
雪の結晶柄の和服をきた妙齢の女性だった。
豊かな黒髪を結い上げ、白い端正な顔に微笑を浮かべていた。
「はじめまして、御船千鶴子と申します」
深々と頭を下げ、その美しい女性は名乗った。
「お話は又三郎様からきいております。さあ、どうぞ中にお入りください」
御船千鶴子を名乗る女性に案内され、長い廊下を歩いていくと、そこは三十畳ほどの広間に着いた。
「なあ、御船千鶴子っていったら……」
圭介は那由多に問いかける。
「ああ、そうだよ。彼女は本物の超能力者御船千鶴子だよ」
まさか、目の前の人間が歴史上の人物とはにわかに信じがたい。
「でも、御船千鶴子は大正時代に二十四歳で死んだはず」
「ほうくわしいね」
那由多は感心する。
「まあ、こういう話は好きなほうでね」
ふふっと千鶴子は微笑する。
「私と貞子姉さん、郁子姉さんは福来博士の実験により十年に一度しか歳をとらなくなったのです」
かわりに千鶴子は答えた。
「俺たちの世界ではこのぐらいの不思議は日常さ。俺もイタリアでサンジェルマン伯爵にあったことがあるぜ」
ウオッチメンは嬉し気に言った。
「それでは始めましょう。深層心理のさらに奥深くに眠る秋月瑠菜さんを現世に呼び戻したいとのことですね。では、原さんと月の女王さんは向かい合わせに座ってください」
二人は千鶴子にいわれるままに向かい合わせに座った。
御船千鶴子は二人の間に正座し、両手で圭介とルナの手をそれそれ握った。
「目をつむり、雑念を払ってください。私ができるのは圭介さんを秋月瑠菜さんの心の中に潜るお手伝いだけです。実際に潜るのは圭介さん、あなたです。あなたがこの中で一番、月の女王さんに心を許されているからです。そしてそれは肉体を同じくする秋月瑠菜さんにもいえることなのです」
千鶴子はさらに手に力をこめる。その力は少しいたいほどだと圭介は思った。
「圭介さん、心の闇の中で秋月瑠菜さんをみつけたら、決して手を離さないでくださいね」
千鶴子は言った。
「わかった」
圭介は答える。
その直後、奇妙な浮遊感におそわれた。
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