第13話義眼の男ウオッチメン
かなりの年代ものの車だ。
日産マーチK10型。今から約四十年前に一世を風靡した車種だ。
マーチの窓が開き、一人の男が手を振っている。
丸形のサングラスをかけた鷲鼻の男だ。
「さすがはすべてを見渡す男ウオッチメンだな」
那由多が褒める。
彼女は迷わず、旧型マーチの助手席に座った。
「褒めてもなにもでんよ、神宮寺。さあ、君たちも乗りたまえ」
又三郎は窓から飛び乗り、那由多の膝の上に座った。
ルナは後部座席に座る。圭介はその隣に座った。
旧型マーチの車内は狭かったが、ルナの体温を身近に感じられたので、圭介は不快ではなかった。
道すがら聞くところによるとウオッチメンと呼ばれる男も九人の王の力を使えるとのことだった。
九人の王の一人、義眼の王の力を使用できるという。
能力は全視認。この世の出来事のほとんどを見ることができる能力であった。
彼はその能力を得るために自らの左眼を義眼の王に差し出した。
そのサングラスの下の左眼は精巧にできた義眼であった。
彼はその義眼の王の力を使い莫大な富をえた。
日常生活にまったく困らなくなったウオッチメンは非日常の刺激を求めて、私立探偵神宮寺那由多の仕事の手伝いをしているという。
「さあ、着いたぜ」
義眼の男ウオッチメンは言った。
圭介たちは旧型マーチから降りる。
そこは広大な敷地面積をもつ古い日本家屋であった。
鬼瓦の鬼の眼と視線が合い、不気味だと圭介は思った。
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