第12話猫又の又三郎

 翌日の夕暮れ。

 圭介たちはあるコンビニの前にいた。

 そこが神宮寺那由多との待ち合わせの場所だった。

 彼女の知り合いがゴーゴンの三姉妹の所まで案内してくれるとのことであった。

 圭介たちがそのコンビニに到着したとき、神宮寺那由多は店内で買い物中であった。

 なんだか呑気なものだと圭介は思った。



 店内用の買い物かごにオレオクッキーと煮干しをいれ、那由多はレジの前に立った。

「那由多さん、こんばんわ」

 インド人店員のアーマンドが流暢な日本語で言った。

「ああ、こんばんわ。カレーの屋台はどうだった?」

 と那由多がきいた。

「けっこう良い売り上げでしたよ」

 アーマンドが答えた。

「今度、食べさせてもらうよ」

「たっぷり作りますね」

「楽しみにしてるよ」

 そう言い、那由多は会計を済ませ、店を出た。



「やあ、お待たせ」

 そう那由多は言い、オレオクッキーをぼりぼりと食べた。

「あんたらも食べるか」

 オレオクッキーを那由多が差し出すので、圭介たちもそれを頂くことにした。

「なんだこれは、ものすごくうまいぞ」

 オレオクッキーを口にいれながら、ルナが感嘆の声をもらした。

「世界一売れてるクッキーだからな。世界一のうまさだ」

 我がことのように那由多が言った。

 もごもごとクッキーを食べながら、ルナは頷いた。


 オレオクッキーの甘さとうまさを楽しんでると一匹の猫が目の前の現れた。

 白と黒のぶち柄の猫だった。

 その猫の尻尾はきれいに二つに分かれている。

 猫は金色の瞳でこちらを見た。

「おっ、来た来た」

 那由多が言い、その猫に近づく。

 持っていた煮干しの袋を開け、数匹を猫の前に置いた。

 猫はうれしそうにヌオーと鳴くとばりばりと煮干しをたいらげる。

「久方ぶりじゃのう、女探偵」

 ややかすれた声で猫は言った。

 そう、猫が喋ったのだ。

 はっきりと人の言葉で猫は喋った。

 猫の言葉を聞き驚愕していると那由多が圭介の背中をポンと叩いた。

「これくらいで驚くなよ。お前が踏み入れたのはこういうのがありふれた世界なのだから」

 那由多が言った。


 那由多と圭介とルナの三人は猫を囲むようにしゃがむ。

「彼女は猫又の又三郎さんだ。獣の王の副臣を

務められている」

 那由多が紹介した。

「いかにも私は獣王陛下の副臣である猫又の又三郎じゃ。ぬしら、ゴーゴンの三姉妹のところに案内してほしいということじゃな。かまわぬよ、この女探偵には恩義があるからのう。案内してやるが、ちと遠い。車は用意してあるかな」

 猫又の又三郎がそう言った直後、ベストなタイミングで一台の車がガレージに入ってきた。

 赤い旧型マーチであった。

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