『愛しているから召し上がれ』、興味深く読ませていただきました。心に残る、非常にすばらしいお話をありがとうございます。


おとぎ話ではあるけれど、天使が存在していたとされる世界には、それがやはりおとぎ話であると知らしめるように、原因不明の病気や、怪我が存在していて……
冒頭からのギャップのある展開に一気に引き込まれました。

そして、原因不明の病という救いのない状況でも、おとぎ話を素敵だと感じる心を失わないフロレアさんと、
現実的で、傷だらけでありながらその美しさが曇ることはまったくないであろうギーゼルヘルさん。
対照的な二人の会話には、お互いへの気遣いと、尊敬と、好意が溢れていて。

体と心は離れがたいもので、体の不調は心に影響を与えてしまうことも少なくないと思いますが、
フロレアさんとギーゼルヘルさんのふたりには、心にやさしさと敬意が溢れているようで……そう在ることができる二人の強さに、会話を見ているだけで感激してしまいます。



傷つき、病魔に体を侵されながらも、二人はこれからもゆっくりと、二人の"世界"で生きていけるのだろうと思っていたところで、フロレアさんの体調不良、そして、深夜のギーゼルヘルの来訪。

天使のおとぎ話に否定的に見えたギーゼルヘルさんの口から天使の実在が告げられて、驚いているところで、天使の『力』の真実を明かされ、ギーゼルヘルがこっそりとフロレアさんに『癒やし』を与えていたこともわかります。

この怒涛の展開が、けれど読みやすく、二人の、互いを見ていても、どうしても食い違ってしまう心が痛いほどに感じられて、文字通り、食い入るように読んでいました。


特に印象的だったのは、フロレアさんがギーゼルヘルさんの作った”ビーフシチュー”を口にしたところです。

一瞬、拒否して投げ捨てそうになってからも食べ始めたところの、フロレアさんの心情が、ギーゼルヘルさんへの真摯な思いに溢れていて……

ギーゼルヘルさんも、天使の力の正体を明かした上でも、フロレアさんなら食べてくれるだろうという、フロレアさんの信頼に満ち満ちているように感じられて、倫理観を超えた、言葉にならない二人だけの価値観、こころの繋がりが見えた気がして……ほんとうに感激しました。



繰り返しになりますが、せつなく、きれいで、胸がいっぱいになる最高のお話をありがとうございました。

こんにちわ、カニバリ自主企画から来ました。
いい話……！　作品タイトルが台詞として立ち上がる瞬間がとても美しく、しかし切ないお話ですね。フロレアの願いとは真逆だけれど、ギーゼルヘルは自分が納得する道を貫き通したんだなあ……。