第3話 妄想と暴走は紙一重(奈々 Story)

 私は文月 奈々。17歳で来年には18歳になる華のJK2。隣に住んでいる如月 蓮とは腐れ縁の幼馴染をやってるわ。

 

 …でも、腐れ縁の幼馴染だけ、と思ってるのは蓮だけかもしれない…私は物心ついたときから…彼が…蓮のことが好き。


 蓮の家はおじ様が小説家だからすごい生活が不規則。さらにおば様が商社に勤務してて、家にいることが少ないの。

 そんな家庭の如月家と文月家は、私が生まれたころから家族ぐるみでの付き合いだった。小さい頃はよくお互いの家を行き来して部屋で遊んでいたなぁ。


 中学生のとき、所謂思春期と言われる頃にお互い気恥ずかしくなってしまって部屋へ行き来することはやめてしまった。でもそんな折におば様から私とお母さんに『文月さん、奈々ちゃん、これから私の仕事が忙しくなっちゃうかもしれないから、申し訳ないけど如月の家のこと、陸さんと美華、そして蓮のことをお願いね』と言われた。


 もちろん私はお母さんの返事を待たずに『いの一番』で了承した。私が蓮のことを好きってことをおば様は知ってるからお母さんだけじゃなく私にも言ってきたんだと思って。


 これを機に私は如月家に『遊びに行く』のではなく『家事全般をしに行く』ことになった。同時におば様も仕事へ本腰を入れるようになり、国内外への出張のため家を留守にすることが多くなった。


 ちなみに蓮の妹である美華との仲は良好。私自身が一人っ子だったから『ななおねーちゃん』と言われるたびに、本当に妹がいるみたいで嬉しかった。


 何度も行き来するようになって、蓮のお世話をすることができるようになって、これってひょっとして将来の花嫁修業じゃない?なんて思ったりしながら今まで生活してきた。


 蓮自身の気持ちを確かめたことはない。憎からず思われているという自信はあるけど、やっぱり告白とかは…今の関係が壊れそうでやっぱり怖い。

 もちろん彼氏彼女の関係になれたら嬉しい、むしろ是非なりたい!お嫁さんにもらってほしいという気持ちはある。私だってもう結婚できる年齢なんだから。



 だから、蓮がエルザという子を連れて帰宅してきたときは心臓が飛び出るかと思った。



 ひと目みたときの感想は『すっごい美人』だった。

 背中まで伸びた赤い髪。多分サラサラなんだろうなぁ。そして胸が大きい…あれはEくらいありそうだけど、ウエストはその逆でくびれていてモデルさんみたいなスタイルだった。


 そ、そりゃ私だって胸はあるわよ…大きくはないけど…。でもCくらいあれば喜んでくれるわよね?…ちょっと無理寄せ上げすればDのブラも着けられるけど…蓮の好きな胸のサイズなんて知らないわよ。せめて大きいのが好きじゃないことを祈るしか…って違う!


 話を聞いていたら異世界から転移してきた女勇者だって言うじゃない。何そのゲームみたいな設定。ここは日本よ?平和な日本よ?


 まぁ、蓮が色々鍛えてることは知ってるし、私も少し自衛のため便乗させてもらってるけど、そんな剣とか必要ない世界日本だったのに…魔物に襲われたっていうじゃない!

 蓮にケガとかなかったのが幸いだけど、もし何か蓮にあったら私…


 でも無事でよかった…と安堵できたのはここまで。言うに事欠いてその異世界の女勇者、エルザを蓮の家に泊めるって?!


 ダメゼッタイ!ダメゼッタイ!ダメゼッタイ!ダメゼッタイ!ダメゼッタイ!ダメゼッタイ!


 どういう戦いをしたのか知らないけど、話を聞いた内容だと蓮がある程度無双したのは確か。その無双が仮にエルザの実力を上回っていたら…

 うぅん違う…上回っていたんだ。

 だから、エルザが蓮を見る眼差しが見覚えのあるものだったんだ。


 -恋する乙女の眼差し-


 まさに私が蓮にたまに向ける眼差しと同じ。


 女の勘どころじゃない!見る人が見たら分かっちゃうよ、その表情!

 私ピンチ!今まですっごい安泰だったのにものすごい恋敵ライバルが爆誕した!ヤバイ!

 胃袋だけを押さえただけじゃダメかもしれない!これでもしエルザが料理上手だったら…私勝ち目ないよ?!こうなったら身体を押さえ…げふげふ。


 そしてエルザが蓮の家に寝泊りすると聞いた途端、卒倒しそうになりながら私は宣言した。

 私も蓮の家に泊まる!うぅん、泊まらないとダメ。うかうかしてたら蓮が取られちゃう!


 昔はよく泊まりにきてたから今回もすんなり…というわけにはいかないみたい。

 そりゃそうよね、私と蓮ももうすぐ18歳。お互いに『好きだー』の関係になったら…そりゃ身体も求めちゃ…ぅ…かも…


 一糸纏わぬ姿でベッドで重なる二人私と蓮…そして蓮の指が…口が…私の……ってきゃー!!ムリムリ!オーバーヒートしちゃう!


 ダメ、やっぱり!せめて身体を重ねるのはお互いに告白して恋人同士になってからにして!それまで私は純潔でいるから!


 そうこう私が頭の中で妄想爆発していたころ、話はどんどん変な方向に進みだしていた。おっかしいなぁ…私も何か口出ししたはずなんだけど、記憶にない…


 エルザが蓮と口を揃えて、

『一緒に寝るって爆弾発言だよ』

『ナナとレンが一緒なんてありえないわ』

『同じベッドなんて…』

 そんなことを言っている。あれ?私とてつもないことを無意識で発言しちゃった?

 これも……そう!蓮を好きすぎるからよ!



 結局、年長者であるおじ様の意見により部屋割りはこうなったわ。

  蓮→リビングのソファベッド

  エルザ→おば様の部屋

  私→蓮の部屋

 ま、まぁ、蓮の部屋で、蓮のベッドで寝られるからこれはこれでいいわよね。普段蓮が過ごしている部屋。蓮の匂いが充満した部屋!あれ?ひょっとして私、勝ち組じゃない?


 早速私は着替えとかを取りに自分の家に戻った。明日からは……通い妻…じゃなくて…に、新妻?!

 いけないいけない。こんなウキウキしてたら絶対何かやらかす。しっかりしろ!奈々!


 ……でもねぇ、嬉しいわぁ~♪蓮がいつも使ってるベッドで…今晩は"くんかくんか"して寝ようっと。


 あっ!でもあのエルザって子が一人で寝ている蓮のところに夜行くかもしれない!そうはさせるもんですか!私にだって考えがあるんだから!


 …でもその前に"くんかくんか"はしないとね。

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