日本史上初めて鉄砲玉で死んだ男
「今日のゲストは日本史上初めて鉄砲玉で死んだ男性で~す!」
「どうも~」
紹介された男性はカメラに向かってにこやかに手を振ってからソファに座り、アメリカのテレビ出演した有名人のように足を優雅に組んでみせた。
「さっそくなんですが、当時の気持ちをお聞かせ願いますか?」
「そうですね~。まずは『とてつもなく痛かった』ということですかね」
「それはそうでしょうね~。なんたってそれで死んでしまわれたんですから」
「でも死んだ後に自分が日本史上初めてと聞いてどこか誇らしい気持ちになりましたね。弓矢で死んだ人は数あれど、鉄砲玉で死んだのは私が最初ですから。鉄砲の世をこの体でもって切り拓いたと言っても過言ではないと思うんですよ」
「それは確かにそうですね。あなたの死が戦国の世を動かし始める幕開けになったわけですね」
「あの世では『こいつの死因、鉄砲玉だぞ!』って随分一目置かれましたよ」
「一目置かれる死に方があるんですね。なるほど~」
司会の人は素直に感心した。
「あ、そういえば今日はあなたに会わせたいゲストをお呼びしてるんです」
「え、誰です?」
司会者はいぶかしむ男性に意味ありげな笑顔でうなずいた。
「お呼びしましょう。日本史上初めて鉄砲で人を殺した男性で~す!」
「え!?」
呼ばれた男性は恐縮した様子でスタジオの中にやってきて、殺された男性に握手を求めた。
「その節はどうも」
「あ、え、いえ、こちらこそ。その節はどうも」
殺された男性も恐縮した様子で握手を返した。
「どうですかお二方。因果関係の再開した今のお気持ちは」
「・・・正直驚いてます。まさかこの人に打ち殺されたとは思いませんでしたから」
「どうやら決して狙ったわけではなくたまたまそうなったということらしいのですが」
司会者の言葉に殺された男性は驚いた表情を浮かべた。
「え、そうなのですか?」
「ええ。ですよね?」
「・・・まあ、そうです」
殺した男性はバツが悪そうに応えた。
「あのときは狙って撃ったというより、誰かに当たればいいくらいの気持ちで撃ったんです。乱戦になってましたし。決してアナタを殺すつもりで撃ったというよりは、当たれば吉くらいの感覚なんです。だから後になって実は撃ち殺していたということが分かったときはあまり実感はありませんでした」
「吉を引き当てたのがアナタだった、ということですね」
司会者が言うと殺された男は苦笑した。
「死んだんで吉ではないと思いますけど。でもまあ、おかげでこうして特別人工記念物第1号扱いですから悪い気はしませんけどね」
「さあ、お互いに積もるお話がありますでしょうが、そろそろお時間がやってまいりました。明日のゲストは日本史上初めて大砲で死んだ男性がゲストに来ます。お楽しみに~」
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