楚カルテット

「項羽様!」


「何事だ!」


「歌が! 歌が聴こえまする!」


「なに? 歌?」


家臣に言われ耳を澄ますしてみた項羽は驚愕した。


「こ、この歌は!? 我が楚国の歌ではないか!」


「しかも四方から聴こえてきまする!」


「な、なんだと!?」


「聴いてください。東楚。西楚。南楚。北楚。ソ~ソ~ソ~ソ~ソ~♪(音階練習のように歌う家臣)楚だらけです!」


「ということは・・・周りは味方だらけではないか!」


「それは違うと思われます。漢軍が楚を占領してしまったのでないでしょうか?」


「そそそそんなことあるっ!? い、いいや! そそそそんなことがあってたまるものか!」


「しかしこれだけ楚だと。楚うとしか言えませぬ」


「た、たとえ、そうだとしても! 楚カルテットが聴こえようとまだ負けたわけではないぞ! ああそうだ! まだ八方までは塞がれてはいまい! そうに決まってる! だってまだソクテットで聴こえてこないし! まだ楚カルテットだし! 八方手を尽くしたわけじゃなし!」


「手を尽くしてないなら尚更では?」


「こんなことなら正室に八方美人の嫁をもらえばよかった!」


「そんな幸運のお守りみたいな言い方はよくないと思いますが」


「そうだ! 逆に考えよう! 四面過疎ってるより人がいるほうが賑やかでいいじゃないか!」


「賑やかしに来てるだけならどれほど良かったことか」


「・・・ええい! この際、我々も宴を催して一緒に歌おうではないか!」


「もはやヤケク楚歌ですな・・・」

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