ホステージラヴ

「金を出せ!」


銀行に包丁を持った男が押し入った。


『貴様は包囲されている!』


外から拡声器で呼びかける声がし男は驚愕した。


「え、もう!? 早すぎだろ! 俺が銀行に押し入って10秒も経ってないですけど!」


『人質を放せ』


「まだ取ってねえよ! くそっ! でもここを打開するには人質取るしかねえ! おいそこの女!」


「え、私?」


男は包丁で窓口の女性行員を示すと女性は困惑した。


「アンタだよ。悪いが状況が状況なんでな。アンタには人質になってもらう」


「え、そんなの困ります」


「俺だって困ってんだ! つべこべ言わずに早くこっちにこい!」


「で、でも私、ストックホルム症候群持ちなんです!」


「・・・は?」


犯人はキョトンとした。


「もし人質なんかにされたら私、私は・・・惚れてしまうかもしれません」


女性はモジモジしながら言うと、すると男も居心地が悪いように首の後ろをポリポリと掻きながら言った。


「それは俺だって同じだ。俺は・・・リマ症候群持ちだ」


「え・・・」


互いに見つめ合う男と女。


『君たち別れなさ~い』


外からは拡声器の声が響くのであった。





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