レ点起こし
「ちょっといつまで寝てるの! 学校に遅刻するわよ!」
「あと5分~」
母親が布団の中に潜り込んでいる娘を急かすが、布団の中から眠そうな声が返ってくるだけだった。
「まったくこの子は~。そう言っていつも起きないじゃない」
「じゃああと6分~」
「寝言は寝てから言いなさい」
「じゃあ寝る」
「いいかげん起きる!」
「スゥスゥ・・・」
「こらっ! 寝息!」
「寝息くらい吸わせてよ~」
「吸うのも吐くのもダメ!」
「むにゃむにゃむにゃ」
「そう言えばうにゃむにゃ(うやむや)になると思わないの!」
「眠気の覚えは抜群にいいの」
「そんなの覚えなくてもいい」
「じゃあ覚えない。春眠暁を覚えず」
「あっ。また布団に潜り込んで~・・・・・・処処啼鳥を聞く!」
母親は勢いよく布団をひっぺがした。
「夜来風雨の音!」
ベッドからパジャマ姿の娘をひっぺがし制服とカバンを投げつける。
「花落つること知る多少!」
制服を着た娘を家の外に放り出し、ついでに食パンも投げつけ家の扉を力強く閉めた。
放り出された娘はお尻をさすりながら家のなかの母親に向かって恨み節を唱えた。
「アタタタ・・・。も、孟浩然め~。中国伝統のレ点起こしをするとは~。私が眠れる獅子だったら今ごろ山月記だぞ~! アタタタ・・・」
お尻をさすりながら学校に向かうのであった。
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