3Fトイレの個室で考える世界の概念

手袋と風船

3Fトイレの個室で考える世界の概念



 きみのことなんてホントはどうでも良いんだよ、って世界が笑うのを見た。

 それはまるで天気雨みたいに奇妙な風景。向こうから走ってくる夏の雨から、必死で逃げるみたいな感覚。


 きみのことなんてホントはどうでも良いんだよ。

 きみのことなんてホントはどうでも良いんだよ。

 きみのことなんてホントはどうでも良いんだよ。


 ああ、ひとりぼっちの人間なんて世界に比べれば大したことなくて、守る価値なんてなくて、だから理不尽を頭から被って、ずぶ濡れになったって、構いやしないんだね。


 世界は笑う。

 世界は笑う。

 でも、世界ってなに?


 ホントはさ、ホントはね、世界はみんなが造ったんだよね。その世界は全然大きくないし、広くもない。狭くて、いびつで、偏ってる。

 誰かが決めた主観のかたまり。

 存在も、時間も、場所さえもひどく曖昧で。一過性のものに、過ぎない。

 わたしが逃げたのは、夏の雨なんかじゃなくて。わたしが見たのは圧倒的な自然の残酷さなんかじゃなくて。

 でも、みんな気づいてないんだよ。

 きみたちが造った世界の土台には、ホントの世界があって、きみたちの世界の頭上には、ホントの雨雲がある。


 ホントの世界にはさ、わたしも含めて、きみたちも、どうでも良いんだよ。

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