第2話

 翌日、私と美南は上山田駅で待ち合わせた。

「颯大~、待った~?」

「いや、全然。ってか、後付いて来てただろ?」

「えへっ、バレたか」

「普通にバレるわ...さっさと乗るぞ」

美南は「はいはい」と言って私の後に駅舎に入った。

「この駅の前を学校帰りに通るけどさ、やっぱボロいよね」

「でも、トイレは様式に改装されててきれいだぜ」

「確かに、それにはびっくりしたわ」

「で、お前は切符の買い方すら知らんのかよ」

「だって使わないもん」

「そりゃそうか...この券売機に金を入れて、新飯塚駅までの運賃が400円だから400円のボタンを押したらいいんだよ」

美南も切符を購入したところで改札を抜けた。


「飯塚の方に行く列車はどこに来るの」

「このホームに居れば来るよ」

「あ、そうなんだ」

このタイミングで、駅員のアナウンスが入る。

「大変お待たせ致しました。間もなく、1番線に7時31分発新飯塚行きが到着します。この列車は当駅より別れて運行いたします。前方の車両が、漆生経由、下鴨生よりJR後藤寺線に直通します、7時31分発新飯塚行きです。後方の車両が、大隈経由、飯塚よりJR筑豊本線に直通します、7時36分発新飯塚行きとなります。途中駅ご利用のお客様、経由地にご注意ください」

この案内にピンとこない人間がここに。

「どういうこと?」

「上山田から新飯塚に行くには、漆生経由と大隈経由の2系統があってね。まあ、どっちに乗っても途中からJRに直通して新飯塚駅まで行くんだけど、漆生経由の方がやや遠回りかな」

「じゃあ、後ろの車両に乗った方がいいのね」

「でも、どっちにしろ1両だから混んでるとは思うけどね」

2両編成の豊前川崎発新飯塚行きが勢いよくホームに入線してきた。駅員が再びアナウンスを掛ける。

「上山田~、上山田でございます。ご乗車、お疲れさまでした。1番線到着の列車は、当駅より別れて運行いたします。前の車両が稲築、漆生、JR後藤寺線経由、7時31分発新飯塚行き、後ろの車両が大隈、飯塚、JR筑豊線経由、7時36分発新飯塚行きです。お乗り間違いのないようご注意ください」

私たちは、比較的空いていた後の列車に乗った。車両は1988年の三セク転換時に用意された軽快気動車で、車内はセミクロスシート。近隣の田川・京築を走る平成筑豊鉄道には2007年に新形気動車が投入されたが、こちらには投入されていない。一種の差別であろうか。


 さて、新飯塚駅に到着するや否や「なんで私がバスに乗らないといけないのよ」と美南が文句を言っていたが、流石に朝から3kmも歩きたくはないので大人しく乗ってもらった。運賃は260円なのでやや高い気もするが。


 学校に着くなり、美南は練習試合の行われる体育館、私は課外のため教室へとそれぞれ進んだ。

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