第14話「風竜の住む天空」

「さあさあ雷の子等よ力強き元気の子等よパーティーが始まったんだ!天を駆け、雲をぬけ、空に大地に降り注ごう!大きければ大きいほどに心は弾む物だから、ド派手な光とド派手な音で君等の力を世界に示そう、君等の力が一番だって星を光らせ証明しよう、より強く、より強く、より強く、僕と一緒に力を集め僕と一緒に力を放とう!」



 スゥ



「アルティメット・サンダー!!!!!!」



 考えるのがとても面倒な呪文詠唱と共に曇天の空を貫いた魔法のイカヅチ[究極電撃呪文]はその空一面を覆う分厚い雲にも包容仕切れず溢れ出し、その力はイカヅチの豪雨と成って内海ないかいいっぱいへと降り注いぎ、魔法が直撃した手足に翼を持つ[黄色い竜]は器用に操っていた4枚の翼を硬直させたあと体をグニャリっとうねらせ有無を言わさずまっ逆さまに海へと墜ちていった。


 勇者[伊勢いせカイ]は思ったドラゴン3連戦なんて聞いてない、クラーケンからコッチ闘いっぱなしでうんざりだ、作者はもっとVSドラゴン戦のペース配分を考えて小説書いてほしい!!


 クラーケンがナゼ漁村に現れたかと言う面倒な伏線を回収し、ようやく聖都[アシステッド]へと行く船[大漁旗たいりょうばたウオコ](おれっ娘改めてアタイっ娘)の帆掛け船をカルデラの内海[竜の目玉]中心にある火山の島[虹彩島こうさいじま][灰の砂浜]から出航しようとしたやさき、突如として晴れ渡る空を曇天が覆いつくしルンルン気分の黄色いやつと出くわしたのだ。



 ゼイゼイ、ゼイゼイゼイ……



「ゼイ…ゴボッ!少々待って下され、拙者、拙者が何をした言うのでござる?」

 海から翼をバタつかせ必死の形相で這い上がったこの風竜ふうりゅうは風のエレメントを司りすら操るが最上位モンスターだったが、ちょっと話の展開を早めようとした勇者のちょっと強めの魔法を喰らってまっ黒焦げの有り様に成っていた。


「ねえ、ドラゴンさんは僕に戦いを挑んで来たんだよね?」

 勇者は確認をとる。


「なっ、何を言っておられるのか?拙者はただ空を飛んでいただけでござる」

 多分普通のファンタジー小説ならば仲間にすると超お役立ちモンスター第1位の風竜、電撃も使えるドラゴンは勇者の力を目のたあたりにして取り乱し大慌てでそう言った。


「え?ああ……ごめん、それじゃもう、帰っていいよ」

 勇者は見た感じ大丈夫そうだなと軽い感じでそう言い追い払おうとする、上記の作者の説明(お役立ちモンスター第1位)はチート勇者には詮無せんなきことである。


「ちょっ、ちょっと待つでござる、イヤ、待って下され、倒されたと有ってはいたしかたない、拙者風竜[フウリューン・アシステッド・セッシャルゴン]は主殿あるじどのに付き従うでござる、主殿はまごう事なき存在、我がしゅに相応しいでござる」

 風竜はせっかく出て来たのに電撃喰らってこのままサヨナラされては作者が色々考えた設定が無駄に成るとばかりに勇者に最もらしい台詞をはいて食い下がった。


「えー、もういいよ」

 勇者はこれ以上キャラクターを増やしたく無いってご様子だ(キャー勇者様!作者のキャラクター設定の苦労考えて!!)。


「おいフウリューン!そんななりでは船に乗れんから俺等みたいに人型になれよ!」

 火竜[カリューン・アシステッド・オレコ]が手をパタパタと振りながらそう促した、からのである(ナイスアシスト!カリューン!!)。


 火竜の助け船で作者と風竜は助かったが勇者はやな予感しかしなかった、この物語は以前にも書いた様にハーレム系ライトノベル小説であり主人公である勇者の回の主要キャラクターがほぼ女性しか出てこないウラ設定が有り、そしてこのドラゴンの奴等は変身のたびに人型全裸になる天丼(繰り返しギャグ)をおこなっていたのだ。


「かほこさん!服!!」


「ハイな勇者様♪カリューン手伝って!」


「おお!コンプレックスってヤツか!」


 最早3回目ともなると女神[溺愛神でいあいしんかほこ]の手際も慣れたもので火竜と共に風竜にマウントの構えだ、ちなみに火竜の言った「コンプレックス」は「コンプライアンス」の間違いだ。


「カイ様、あんなのの肌など見たら目に悪いのじゃ!」

 水竜[スイリューン・アシステッド・ワラワスキー]は勝手な言い分を挟みつつ勇者の目にそのしなやかな手で目隠しをして風竜が人型素っパになるのを見えないようにした。


「かほこ殿、カリューン殿、何をなさるか!スイリューン殿も目隠しをやめるでござる!主殿が拙者の全裸をごたんのう出来んでござる!こ、ここは拙者の見せ場、サービスお色気シーンでござるぞ!主殿、主殿はエロスに、女人にょにんの裸にご興味が無いでござるか?!何らかのハプニングでも起こされてこっちを見るでござる!!」

 女神と火竜に押さえ付けられ必死に服を着せられるのに抵抗する人型風竜の哀れな姿がそこにはあった。


「イヤ僕、彼女いるから」

 水竜の目隠しの中で更に目をつむりそっぽを向いた勇者はアッサリとそう言った。




「主殿はそれでも男でござるかーーー!!」




 この勇者はハーレム系主人公として何かが欠けているとその場に居た全ての者と作者が思った事は言うまでも無い、そして脱げシーンを奪われた風竜は何の見せ場も無いままこのパーティーへと加わわるのだった……。

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