第16話「聖都の街で詐欺だと叫ぶ勇者」

 聖都[アシステッド]この異世界と同じ名を冠するこの街は信仰の中心都市らしく、カミソリすら入らない巨石を組み上げた重厚な建物が人々の住む居住区や商業区、学校や図書館、病院や劇場に至るまで市街地中心の大教会と共に規則正しく建ち並びそのあちらこちらに巨大な美しい女神の像や精密な女神のレリーフが飾られていた。


「ん?何か見られてる様な……」

 この街に入って来た時からだ、街行く市民の多くが勇者[伊勢いせカイ]とそのパーティーをチラチラと見て来る事に違和感を覚えた。


「そりゃそうだろ魔法使い」

 火竜[カリューン・アシステッド・オレコ]は[彩光島]以来ずっと勇者の事をこう呼んでいる、たぶん作者が忘れてない限りこのままだ。


「どう言う事ですか?オレコさん」

 勇者は魔法使いは無視して聞き返す。


「それはそうっすよ、勇者様は既に噂になってるっす」

 天使[タスケエル]は何当たり前の事聞いてるのかって感じだ。


「そうなのじゃ、妾の様な美しい竜っ娘りゅうっこを連れて歩いておれば噂なのじゃ」

 水竜[スイリューン・アシステッド・ワラワスキー]は話の解釈がご都合主義だ。


「違いますの、勇者様の旅の噂が広がってるんだと思いますの」

 作者は女神[溺愛神できあいしんかほこ]まで喋らせて「キャラクター多いな」とここに来て少し後悔した。


「そうっすよ♪9千億超えのステータスと裁きの魔女の魔法書を持ち、3頭の古代竜まで引き連れ山を吹き飛ばし雷の雨を降らせた挙げ句更には」


わたくしの様な清楚で可憐で美しい女神とお付き合いなさっておられるのですからですの♪」

 天使の言葉を遮り女神はあからさまな嘘を混ぜつつ断言した。



 勇者は女神の言葉をスルーする。



「へー、この世界の神様は知的でカッコいい感じの女神様なんですね」

 街のそこかしこに貼られた教会への寄付を呼び掛けるポスターにはオートクチュールに身を包みランウェイを歩いてそうなモデルさんの様なスタイルと理知的で美しい女神様がえがかれおり勇者はそれを見て素直な感想をのべた。


「そんな勇者様テレますの❤️」

 ウチの駄女神がなんか変な事言い出したと勇者は思った。



「イヤ本当にコレって詐欺だよな!まるで別人?別神べつしん?」

 火竜はポスターと駄女神を見比べてそう言った。


??


「まあ問題ないのじゃ、この異世界はかほこの過保護な比護下にはもう無いのじゃから、最早その偶像が独り歩きしたのしても妾等には関係の無い話なのじゃ」

 水竜は勇者の腕をまた狙いながら少し冷たい感じの言葉を紡いだ。


???


「どゆ事????」

 勇者はこの小説の全体の伏線を思い返えしてみる。


 1.[始まりの村]でかほこさんは女神と呼ばれその隣にいた僕は勇者だと気づかれた。


 2.[迷いの森]で[裁きの魔女]にかほこさんは「ここに戻っるって聞いてね」とか言われていた。


 3.[岬村漁港]の[大漁旗たいりょうばたウオコ]は「神様にも一生懸命祈った」けど駄目だったと言っていた。


 4.[彩光島]の竜達はかほこさんと顔馴染みだった。


 5.聖都[アシステッド]前話、第15話において水竜が「この世界の誕生と共に創られた」とか「この世界の育成を女神と天使だけでやるには手が足りん」とか言っていた。


 6.そして同第15話、僕と女神の前に天使が現れた(ちなみに女神が当たり前の様に便乗した荷馬車のくだりも、この街に馴染んでいると言う伏線だ)。


「そうっす♪この世界の神様はかほこ様、溺愛神かほこ様っす♪♪」

 タスケエルは聞きたくなかった真実を勇者へと告げた。




「神さま擬人化詐欺だーーーー!!!!」




 勇者は今までの駄女神[溺愛神かほこ]の有り様を思い出し、まるでイケメン武将の様に美擬人化びぎじんかされた偶像の知的美人スーパーモデル女神[溺愛神かほこ様]のお姿に擬人化詐欺だと突っ込みを入れずにはいられなかった。


 そして作者は第8話「迷いの森は魔女の森」で書いた[作者の頭の中で伏線のピースが繋がって行くが勇者には未だわからない、コレは本気でプロット書かないと不味そうだ…。]のピースを1つ回収した。


 作者は思う「そのあと食い散らかした思い付きの伏線回収もしないとな」と。



 全体構成プロットは未だフワフワとしか存在せず、物語は伏線の回収と場当たり的に生まれたキャラクターと共に紡がれて行く……。

 

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