第18話「コマレメール」

コマレ:わたしもうすぐ着くよ


カイ:コッチに来るの?


コマレ:早く会いたいしダメ?


カイ:全然OK


コマレ:今見えた交差点の向こう



カイ:僕からも…



 [伊勢いせカイ]は交差点の向こうに彼女[まきコマレ]を見つけ手を振るより早くメールを打ち始めた、異世界に転生したあの日の出来事である。



***



コマレ:カイ君ドコ?


コマレ:今変な所に居る


コマレ:大きな石で出来た街みたい


コマレ:今電話したけど通じなかった、圏外?それともバッテリー?


コマレ:街の人に教会に連れてこられた、勇者様が来たとか何とか言ってる


コマレ:教会の人に女神様が異世界から勇者様を連れてくるって聞いた、もしかして勇者様って……?


コマレ:どうやら私勇者様の異世界転生にみたい、もしあそこに居たカイ君が勇者様なら私は聖都[アシステッド]に居るよ



コマレ:教会の人の[お手伝い]を始めました



コマレ:この異世界は女神様が勇者様を探す旅をして以来女神様の加護を失ったみたいでいろいろ大変みたい


コマレ:実家が米農家って話をすると農業を手伝うよう言われた、少しでも役に立つぞ!


コマレ:霜にやられた小麦畑で寒さに強い小麦が見つかった、品種改良がうまくいけば北の方でも食料生産が出来そう


コマレ:近所で畑のお手伝いをしてたのがとても役に立つ、土壌の改良や酸化してしまったワインの酢とかを使った無農薬農薬(そもそもこの異世界には農薬が無かったのでこんなのでも役に立った)


コマレ:農家の人から食べ物の寄付がとどくようになった、教会も今はお金が無いらしくとても助かった


コマレ:みんな優しくしてくれるけどやっぱり寂しいよカイ君


コマレ:どうやら私は勇者様より随分早く聖都に来たみたい、カイ君早く迎えに来て



コマレ:今日から[見習い神官]です



コマレ:[白湯谷はくとうだに]って所ではやっていた病気が聖都に入って来たらしい重い肺炎を起こす病気だ、大変な時に教会に入ったみたい


コマレ:先輩神官達は回復魔法で患者さんを治療してるけど数が多い


コマレ:まずは衛生管理だ、ベッドとベッドの距離を2メートル以上に開け、部屋とトイレの掃除と換気をこまめにやった


コマレ:私は少しでも感染を抑えるため見習い神官達とマスクを作った、呪文の詠唱の飛沫を抑えるためでもあるけど先輩神官からは不評だ……


コマレ:神官と見習い神官で感染者の数が違うと解ってきた、先輩神官も今ではマスクをしてくださっている


コマレ:先輩神官が私に知恵は無いかと聞いてきた、私はインフルエンザと同じように学校を休校にするべきと答えた、合ってるかわからない……恐いよカイ君


コマレ:街には不安が溢れ教会に不満を持つ人たちが更にその不安を煽ってるみたい


コマレ:分かりやすいイラストをつけて感染症の防疫知識を配布した、小学校でならう程度の手洗いやうがいの知識やマスクとその作り方と型紙付きだ(基本は何より大事だ)


コマレ:重症者は天使[タスケエル]様に任せ先輩神官は回復魔法ので中症者の治療を重点的に行ったまだ魔法を使えない私達見習い神官は軽症者の看病をしている


コマレ:何時も登校時につかまるご近所の漢方医のお祖母ちゃんの長い長~いお話しが役に立った、使えそうな薬草を見習い神官総出で探した、取り敢えずは咳を抑える対処療法だ


コマレ:私も早く魔法覚えてもっとみんなの力になりたい


コマレ:ありがとう、中学の時の友達に感謝だよ、強引に誘われたお料理クラブが役に立った、食欲が無いって患者さんもゼリーやプリン、アイスクリームなら美味しいって言って食べてくれる、特に野菜ジュースやスムージーが人気で退院したくないと冗談を言う人までいるくらいだ、何事も経験しとくもんだね


コマレ:統計をとって見ると高齢者の肺炎が多い、もしかしてと思いお爺ちゃんお婆ちゃん達に歯磨きを推奨してみる、震災の時おきた高齢者の肺炎が水不足による口腔ケアが原因と聞いたことがあるからだ


コマレ:重症者が少なくなってきた、私達の対処療法がうまく行き始めたんだ、症状が出た人を素早く発見して、素早く隔離して、素早く治療に結びつけるモグラ叩き作戦だ


コマレ:街が落ち着き始めた


コマレ:症状の出ない感染者もいっぱい居たんだ、たぶんその人たちが免疫を獲得したからかもしれない……でも憶測で油断はしない


コマレ:他の街や村はどなったんだろう?見習い神官の同期の娘に商業ギルドの関係者がいたので情報を集めるように頼んでみる


コマレ:今思えば小麦の品種改良と同じだ、症状の重いの患者さんを隔離した結果、症状の出てない患者さんだけが街に残って病気が弱く変異したんだと思う……でもまた強くなるかもだから油断はダメ!



コマレ:クラスが[見習い神官]から[神官]になった、今まで色んな事に巻き込まれたけど自分で成りたいと思ったのは初めてかも?コレで少しは役に立てる



コマレ:私達の闘い方が上手くいってる事を商業ギルドの人が他の街や村に伝えてくれるらしい、私も対処マニュアル作りを手伝った


コマレ:みんなが病気を退けたのは私のおかげだともてはやす、とても困惑する、みんなの力なのに



コマレ:心労で倒れられた神官長に代わり[神官長代理]をすることになった、今までの事が評価されたのも有るけれど先輩神官は現場での治療で手が一杯らしいのだ(私の魔法より薬草の方が役に立つのだから仕方がない……)



コマレ:聖都は安定してきたので神官団を白湯谷に送った、私も行きたいけど今は魔法の修行中だしカイ君の事も聖都で待ってないと



コマレ:[始まりの村]に山を吹き飛ばした勇者様が現れたらしい、特徴があの日のカイ君に似てる


コマレ:少しずつ聖都の人が笑うようになってきた、私も嬉しい♪


コマレ:メールも電話もいっこうに繋がらない、もしかして電源を切っちゃてる?


コマレ:商業ギルドの人が訪ねてきた来た、始まりの村の開拓がうまく行きそうって話をした、コレで経済も回る筈だ……大丈夫きっと上手く行く、希望が人を元気にする筈だ


コマレ:街にスムージー屋さんオープンし始めたと噂を聞いた、どうやら見習い神官のが商業ギルドにレシピを教えたらしい


コマレ:最近私の仕事は教会全体の管理がおもだ、神官長のおかげんはかんばしくなく私は会えないでいる


コマレ:商業ギルドの人が他の良いレシピがないかと仕切りに聞いてくる、私はレシピ本を売る事を提案し知識を独占するより本の印税で儲ける方が良いと諭した(実際にはスムージーのレシピと共にただでばらまくと脅迫したのだ)


コマレ:商業ギルドは結構律儀だった、本の印税の内10パーセントを教会に寄付してくれ更に教会への寄付を促すポスターまで作ってくれた……まあ私との関係を良くしようと言う下心が見え見えだったのだけど


コマレ:[岬村漁港]の辺りで空から魚が降って来るって奇跡があったらしい、もしかしてあの美しい女神様のお力かも、カイ君もそこに居ますか?


コマレ:勇者様の口座に始まりの村から「ゲッ」ってお金が振り込まれ始めた、もしかしたらカイ君はこの異世界ですごい大金持ちになったかも?まさにチート勇者様だよ!(ちなみに教会では個人資産を持てないので前に書いた印税は私には入らないからね、私が神官を辞めたら養ってね❤️)


コマレ:今日はすごく怖かった、なんでもカルデラの内海ないかい[竜の目玉]に雷の雨が降ったらしい、風竜[フウリューン・アシステッド・セッシャルゴン]って恐い竜のせいみたい



コマレ:正式に[神官長]に就任しました、タスケエル様は雷は竜のせいじゃ無いとおっしゃっていたけど危機に対して[神官長代理]では神民が不安がると先輩神官達に諭されたからだ



コマレ:勇者様が聖都入りしたらしい、今からタスケエル様が確認に行きます、カイ君待ってて


カイ:ごめんコマレ今メール見た、教会に向かってるその天使と一緒だ、早く会いたい



コマレ:私もだよ



 勇者は貯まっていたメールを見て思った、彼女は相変わらず凄い巻き込まれっぷりだと。

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