第10話「伏線回収はネタバレと共に…」

「破壊神様ですわ」



 女神[溺愛神できあいしんかほこ]は僕[伊勢いせカイ]の疑問に素直に答えた、馬車に揺られ[魔女の森]から次の町への道中の言葉である。


「かほこさん?どゆ事?」

 僕は混乱した。



「ですから、勇者様のお父様は破壊神[破壊はかいシン]様ですの」



「いきなりネタバレするなーーーー!!!」



 作者が必死で考えた伏線があっさり台無しである、作者はこのオチをラス前に持って行く予定だったのだ。



 以下世界観の説明



 この世界には二柱ふたはしらの主神が存在する、それは創造の女神めがみ創造そうぞうスルノ]と先に駄女神がバラした僕の父、破壊の男神おがみ[破壊シン]である、この二柱の神様、夫婦神めおとがみによって全ての世界は創られたらしい。


 駄女神いわく始まりは全ての破壊だった、破壊神の持つ[破壊の槍]が全ての物理法則を過去から未来まで破壊し全ての物語がリセットされたと言うのだ、そして創造神の持つ[創造の槍]によって全てを引き寄せる黒い砂[黒砂くろすな]と全てを引き離す白い砂[白砂しらすな]が産み出されそして混ぜられた、その2つの砂、新たな物理法則によって[新たなる世界]つまり今あるこの世界の全てがかたち創られたらしく、そのあと138億年ものあいだ創造神による創造と破壊神による破壊を繰り返しながら幾つものこの世界が動いているのだと言う。


「勇者様、安定とはつまらない世界の事ですわ、何も生まれず何も変わらない世界、死んだ世界ですの」

 どうやらこの神様達が望む世界は常に変化を求め安定と言う物が無いらしい。


「つまりそのせいで僕はかほこさんに付きまとわれているんですか?」

 ロクデナシとは聞いて居たがまさか破壊神とは…と言うか創造神裏切って人間と浮気?頭おかしくなるわ!


 僕は母が父を「ロクデナシ」と言っていた言葉を思い出し突っ込むも目の前のストーカー女神の次の言葉に更なる突っ込みを入れざるおえなかった。


「いいえ違いますわ勇者様、他の女神とかは破壊神様の血を求めただけの打算ですがわたくしは純粋に欲望の赴くままに勇者様を溺愛してますの❤️」

 ストーカー駄女神は僕に体を刷り寄せ胸とか当てて来た、せっかく考えた世界観の説明が台無しの勢いだ。


「かほこさん正直過ぎる!オブラートに包んで!!あと第8話でも馬車で腕にしがみついた時胸当ててたでしょ、やめてくださいそう言うの!僕、彼女居るんですから!」

 作者は意図的に表現を押さえていた。


「えー?私喜んでいただけると思い勇者様の為にがんばりましたのに~❤️」

 女神の顔は欲望に歪んだいやらしい笑顔を見せている(絶対自分の為だ)。


「かほこさん、完全に私欲でしょう?」

 面倒な伏線をさっさと回収し世界観設定を説明した作者はお気楽小説に舵を切った、そしてその結果がこの表現、上記のバカな会話なのだ。


「……??ちょっと待って!かほこさんさっき何て言った?」

 勇者はあるフレーズを思い出し背筋が凍った。


「性的に勇者様を溺愛してますの❤️」

 性的にとか言うな。


「そっちじゃ無くて」

 勇者はストーリーを本筋へと戻す。


「他の女神とかは破壊神様の血を求めただけの打算ですが、ですの?」

 他の女神がいるらしいですよ勇者様。


「他にも女神いるの?他の女神も僕の事狙ってるの?……」

 勇者は思う、ヤバイどうしょう?風呂敷また広がった?せっかく伏線回収したばっかりなのに、作者のバカ何してるの?


「いや待てよ…第8話でマジョカさんが「あの[伊勢カイ]と来たらそれは警戒もするだろう」とか言ってたんだから…まさか作者のヤツ……」

 どうやら作者はあの時点で父が破壊神オチと複数の女神を出すと決めていたらしい。



「テヘぺろっ(・ωく)!」

 作者は軽くウインクして笑う、完全な確信犯だった。



「そんな面倒な設定考えるから、エタりそうになるんだーーーーーーーーー!!!!!」



 チート勇者とストーカー駄女神の旅は作者の時間ひまとアイデアがある限り続く。



「そう言えば僕の家の物干し竿、槍っぽかった様な……?」



 この物語は伏線と設定には事欠かないらしい。

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