第3話「始まりの村と村長の娘。」
「ナガコ、俺等も付いていくぜ!」
その村は夜も明けぬうちに慌ただしくなっていた。
「みんな良いの?」
ショートソードを腰に刺したチェストメイルの娘が
「樹海の
ナタを腰の背に刺した若者がナガコに言った。
「おおよ、ゴブリンの奴等、一度根づくとバカみたいに繁殖するって言うぜ、今のうちに何とかしないとな」
大斧を肩にかけた大男がナガコの頭をクシャクシャっとなでる。
「それにやり方次第さ、巣に籠る前にコイツで射ぬけば良いのさ」
弓を持った優男が軽く肩をすぼめる。
「みんな本当に良いのね…」
ナガコはショートソードの柄をギュッと握る、手が震えショートソードの鞘に付いた教会の加護の付与された魔除けのベルがチリチリと音を当てている、ゴブリンがどんな狡猾な生き物かをナガコは知っていたのだ。
「ナガコや…もう止めやしないよ、王宮や教会に送った救援要請の文はなしのつぶて、避難許可を求める文には退くことまかりならんと来た、わしらはただ樹海を開拓しろと言われた只の開拓民じゃ、村に与えられた武具が安っぽいショートソードと教会の魔除けのベル1つとは情けない」
若者達の前で老人は怒りに拳を震わせ悔し涙を浮かべていた。
「おじいちゃん、王宮や教会の悪口言っちゃ駄目だよ、
ナガコは
スゥ…
「みんな聞いて、私達には後がない!ゴブリンを倒すか!村が蹂躙されるか!どちらかしか無い!!…だから、だから私達は勝ちます、ゴブリンを倒してまた平穏で、笑って、泣いて、怒って、ちょっとだけ貧しい暮らしを取り戻しましょう!!」
村長の娘、ナガコはショートソード抜きを天に掲げた、肩幅程に足を開き真っ直ぐ天にである。
もう震えは消え失せて居た、みんなの為なら勇気が沸くのだ、みんなが居るなら震えは止まるのだ。
時が経ち太陽は真上に近付いたの時間、村には朝あの場に居た若者の半分と老人達が何とか切り開いた樹海を隔てた河のこちらで畑で収穫をしていた、村はこんな時ですら日々の仕事を休めずに居た、ナガコの指示だった。
「いい?もし私達が3日たって、いえ2日で戻らなければ村に火を放ち逃げなさい、ゴブリンに襲われた事にするの…ここまでにした村を失うのは辛いげど、そのあとの生活も大変だけど樹海に入った私達の蓄えを使って生き延びてちょうだい…」
***
雲間からは光がこぼれ出しどんよりとした村に天から一陣の強い光が差し下る。
「プロローグ長くない?」
お忘れでしょうか?主人公です、主人公の[
「勇者様もう1114文字は書いてますの」
↑
作品の修正があれば数字は変わります。
↑
そして既に修正してしまい文字数はカウント出来なく成りました。
「取りあえずストーカー女神、僕から20キロメートル離れて下さい」
第2話において女神[溺愛神かほこ]様にストーカー疑惑が浮上、プロローグのシリアスな展開とは無関係に2人の話は進みます。
「そんな勇者様、丁寧な口調で裁判で勝ったかの様な物言い、せめて高裁の判断が出るまで待っていただきませんの?」
女神様は地裁の判断では引かない構えだ。
「いいですか、かほこさん、貴方が意地をはって僕を元の世界に戻してくれないからこんな事になってるんですよ!」
勇者は前話で生きたまま異世界転生させられストーカー疑惑(ガチ恋愛系ストーカー)の女神と2人きりの空間に居た。
「あの女のいる世界だけは納得いきませんの!それと[かほこ]とおよび下さるお約束です」
この世界に来たのは2人の妥協の産物だった。
「[かほこさん]ですよね、なんで小さく条件を変えてくるんですか、本当に訴えますよ」
どうやら名前の呼び方も交渉材料だったらしい。
「あのもしや貴方様は女神様でいらっしゃいますか?」
前村長、[
「ヤバイどうしましょうですの、まるで教会の前で
脳ミソ膿ん出んのかこの女神…。
勇者はまるで光り輝く花の舞う教会で2人を祝福するかの様な笑顔の村人達と結婚式をあげるかの様な妄想の中に居る女神に対し
「脳ミソ膿ん出んのかこの女神…」
と心の中で強く思った。
「女神では無く[かほこさん]ですの!勇者様!」
どうやら声に出て居たらしい。
「突っ込むとこそこかよ!」
勇者はこのままボケ続けても面白いとも思ったが話が進まないので前村長の話を聞く事にした。
「よもや女神様ばかりでなく勇者様まで御一緒とは」
前村長は地に膝を付け深々と
「……」
伊勢カイは警戒感を滲ませる、なんか不味いパターンにはまった気がする、こう言った場合厄介事が待っていると異世界ファンタジーの相場が決まっているのだ。
「案の定かよ!…」
勇者はプロローグの話を前村長の口から聞いてしまう。
「断りづらい!この為の長々としたプロローグだったのか…」
勇者は作者を恨みがましい目で見つめるがプロローグ書いてた時はそんな考えも無く、只の長いノリツッコミくらいの気持ちでしかなかったのだ、第2話でも書いたが本作にはプロットが無く頭の中のアイデアの点と点を線で結び勝手な事を勝手に喋るキャラクターにお任せするスタイルで通していた、結果こんな小説が出来上がったのだ。
「プロット書け!!」
勇者様の御意見参考にさせていただきます。
「駄目だこの作者あてにならない」
勇者は作者を見限り話を進める。
「かほこさん1つ聞くがここで死んだら僕はどうなる?」
異世界転生ファンタジー小説には死に対しいくつかパターンがある、まず勇者はそれを確認することにした。
「勇者様がお亡くなりになりますとあの空間に戻ります」
女神は完結に答えた。
「で?そのあとは?…」
死なないパターンだ勇者は少し胸を撫で下ろす。
「そのあともなにも何もありませんの、只もどってそれだけでわ、またここに来るも良し別の異世界にいってもいいですの、例えば二刀流の黒剣士が…」
勇者は慌てて女神の口をふさぐ。
「どんな異世界かは説明しなくていいです危ないから!」
勇者も作者もリアル裁判はごめん被りたいのだ。
「詰まりはノーリスクか」
まあそうだよね、これコメディファンタジーだし。
「良し、じゃあ世界を救いに行きますか!」
………………………。
………………………。
………………………。
………………………。
………………………………………………?
「まだ続きますわ」
女神はさらりと答える。
「えっ?なんで?????」
↑
2831文字も書いたし切りの良い所じゃないの?
↑
公開後直したため文字数は間違っています。
「お忘れですか?本作は1話完結連載ですの作者が書きかけをエタらせて読者様を置き去りにしないように1話事に話を纏めますの」
そうでした、切りの良い所ではなく話の落ちまで書くんでした。
「勇者様せめてこちらをお持ち下さいませ」
村長が僕に鉈を渡してくれた、村には武器になりそうな物はそんな物しか残っていなかったのだ。
「じゃ改めて異世界を救いに行きますか!」
勇者はしれっと世界を異世界に言い直した。
***
「待ってくれ!チキショー!足やられた!」
ナガコ達は深い樹海の森の中に居た、迷った訳ではない、進めなくなっていたのだ。
「こっちよ早く!!」
ナガコは既に鉈を失った男の手を引く、樹海のなかには樹齢1000年を越える大樹が幾つか在り、はぐれ狼に追われた彼女らはそれに登り逃げようと必死だった。
「ナガコ俺の手を!」
大斧を持っていた大男は最初の闘いで大猪を一撃で倒したがその大猪の筋肉の硬直で大斧が抜けなくなりそのあとの戦闘は只々見ているしかなくなっていた。
「食らえ最後の矢だ!」
優男の弓から放たれた矢がはぐれ狼に突き刺さりるも矢が尽きてトドメが刺せない。
そもそもの間違いはこの人数だった、普段樹海に入る時は少人数で簡易的な魔除けの鈴を身に付け静かに静かに進むのだがショートソードに付いた教会のベルを過信してしまったのだ。
「もう半数が武器を失い、みんな何処かに傷をおってしまっている」
考えが甘過ぎたんだ…ゴブリンどころか森を抜けて島山に辿りつく事すら出来ないなんて…ナガコは足を深くえぐられた鉈の男を抱え込み皆を守るための決断を迫られていた、鉈男は精一杯の笑顔を見せる。
「ロープを!俺が背負う!」
大男がそう言い鉈の男を背負おうとしたその時だ、はぐれ狼の遠吠えだった、仲間を呼んでいる。
「はぐれもの同士の協力か…」
優男がそう言いが先かみるみるうちにナガコのパーティーははぐれ狼の群れに取り囲まれた。
***
「なんだこの雑魚!早くないか?!」
勇者はまるで森が闘技場の様に開けた場所で暴れウサギと対峙していた、いや、ピンチと言う訳ではない、何だかそのウサギのエフェクトや動きがまるでエリアボスの様な感じだったので驚いたのだ。
「勇者様、かんばれー!」
女神の気の抜けた声が聞こえる
「ここか?!」
勇者は変則的な動きで跳ね回りぶつかって来るそのウサギの起動を読みそのウサギ似合わせた速度でゆるりと鉈をウサギの鼻から体へと滑らせていった。
べちょり…。
「うう、なんかやな感触だった」
勇者は暴れウサギを倒したが、強い弱いでは無く生き物を殺すのはやな感じだった。
「ねえ、かほこさんこれ、毒あるかな?」
勇者はせめて命を無駄にしないようにしたいと思った。
「食べるのですの?お墓とか作るのではなくて?」
女神は永遠の時を生きる中で沢山の死を見てきた、勇者も何時かは死ぬのだろう、でももう少しそんな事を言う勇者と過ごしたいと思った。
「あっ、それとさモンスターに会わない様会わない様に遠回りさせてたろ!止めてよねそう言うの!」
女神はこの愛する勇者の為なら過保護にもなるのだ。
「でもナビを止めたとたんコノ有り様ですの」
女神は裏目出た結果に不満ありのご様子だ。
ピンポン
ピンポン
ピンポン
ピンポン
「!!?…何の音?これ?かほこさん?かほこさん何これ?」
勇者は頭の中を流れてくるメールの着信音みたいな音について女神に訪ねた。
「ああ、ピンポンでやつですか?それレベルアップの音ですよ♪やりましたね♪♪」
女神はウサギの皮を手早く剥ぎながら笑顔でそう言った。
「4回は聞こえたんだけど、と言うよりこの世界の戦闘システムってレベル制なの?ステータスとかどうやって見るんだ?あとウサギの解体が上手すぎるんだけど!」
勇者は次々訪れる突っ込み処への対処におおあらわだ。
オオォーーーーーン!
オオォーーーーーン!
オオオォーーーーーーーーンン!!!
「またレベルアップですか?」
女神はウサギの下処理を終わらせ料理の準備に入っていた。
「狼の遠吠えだよ!」
何かを襲ってるんだ!当然襲われてるのは…。
「ウサギはあと、かほこさん!こっちへ!」
勇者はひょいっと、かほこを抱え上げお姫様抱っこで森を駆け抜ける。
「え?え?えーーーですのーーーーー!!」
かほこは思わぬ事に只かたまり、抱きついたり、頬をすり寄らせたり、近くで目や顎のラインや喉仏(女神なのに喉仏フェチ)の動きをまじまじと見る事も忘れ乙女の局地の様な気持ちになっていた。
***
「
ナガコは自らはショートソードを、仲間にはゴブリンの巣で使う予定だった松明に火を付けさせ大樹に登ろうとして来たはぐれ狼を追い払おうとしていた。
「あれだ!かほこさん降りて!」
勇者は立ち止まると女神を樹の根にそっと座らせ風を切るように助けを必要とする人の元へと駆け抜けていった。
「狼が1、2、5、6、10、12!!」
勇者はクルリと手を返し鉈を回す、そして空気は勇者に粘りつく様に変わり体が重いと勇者は感じるがそれは時の流れにより速く動こうとした結果だった、実際勇者の目には狼達は止まった様に見え、その中を勇者だけが駆け抜けていった。
只の鉈がモンスターを解体して行く。
「ごめんな、僕は選ばなければ行けないんだ…ごめんな、僕が狼なら君達を助けたよ…」
全てが終わり勇者は狼達の中にたたずむ。
「あの…」
ナガコが恐る恐る鬼神の前に立つ、村の男達も樹から降りてナガコのうしろにいる。
「勇者様ーーー!!!」
女神は勝利の抱擁とばかりに勇者に抱きつこうとするも、手を取られクルリンっと中を舞った。
「もう大丈夫ですよ、ゴブリンの事も僕に任せて下さい、僕は異世界からこの世界を救いに来た勇者ですから」
勇者が笑顔を見せるとナガコはまるで小さな少女の様に泣きじゃくった、全てを背負って気丈に振る舞った村長の娘はもういない、村の男達は自分達を背負い励まし道を示してくれたリーダーが只の女の子だった事を思い出した。
***
勇者はショートソードを腰に刺しゴブリンの待つ洞窟へと向かう、女神はやっぱりコノ男は良い男だと思った。
樹海の奥にポツリと山が在った、島山と呼ばれたその山は今はもう無い、ある日天より現れた勇者が腕をたった一降りしただけで吹き飛ばしたと言う、あの始まりの村で樹海の開拓が始まったとの報告に驚いた王宮と教会の調査団に村人達が言った言葉だ…。
………………………。
………………………。
………………………。
………………………。
………………………………………………。
「待ってて勇者様、今度は私が勇者様を守ってあげる」
樹海の開拓に一役かった3つの宝石輝く一降りの大剣を持ち、その女性はそう言った「守ってあげる」は方便だ。
ストーカー女神に悪寒が走った。
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