第4話

「このかー、今日買い物行こうよ」

「いいけど。何買うの?」

「新しい水着買いたくて」


もうすぐサークルの夏合宿じゃん、と夏未。


そうなのだ、フットサルサークルの恒例であるらしい夏合宿。

その合宿が来週に迫っていて。

今年は一泊二日で海に行くらしい。


「え、このかも買うでしょ?」

「わたしは別に・・・そんなにがっつり入る気ないしなあ。」


泳ぐのもそんなに得意じゃないし、

着替えたりするの面倒だし、なんて思ってしまう。


そんな私に夏未ははあ、とため息をついて。


「あのねえ、真木さんもいるんだよ?」

「っ!別にそこ関係なくない!?」

「あるわよ!ここで攻めなくてどうするの!

あんたスタイルいいんだから!」


変なことを急に夏未が言うから

自分の顔が赤くなってしまうのが分かる。


水着?

真木さんの前で?

いや無理無理無理。


「無理に決まってるじゃん。」


水着なんて水泳の授業でしか着たことないし、

部活で鍛えられた太ももとふくらはぎはたくましくて。

いや、絶対無理。


無理を連呼する私に、

夏未はため息をついて。


いい?と私を見つめる。


「無理とかじゃないの。着るの。」

「いやだから・・」

「これ強制」

「そんなこと言ったって、」

「分かった??」

「・・姐さんこわいっす・・・」


いいから行くよ!夏未はカバンを持ち上げて。

仕方なく私も立ち上がった。





「車酔いする人いるー?」

「あっ、このかがします!」


え?と私が声を出す間もなく、

夏未に前へと押し出される。


「そっか。じゃあ助手席はこのかちゃんにしよっか。」


真木さんは自然な素振りでドアを開けて、

私も頷いて乗り込む。


後ろを見れば夏未がグッと親指を立てる。

グッジョブ夏未、出来すぎる友人よ。


合宿当日。

上級生が車を出してくれるようで、

数台に分けて海へと向かう事になっていた。


私が乗る車の運転手は、真木さん。


それだけでうれしいのに、

夏未のアシストにより助手席に座れることになって。

心臓バクバクだ。


「このかちゃんはよく海とか行くの?」

「そうですね。高校生くらいまでは毎年家族で言ってました。」

「へー、いいなあ。」


真木さんと他愛のない話をしながら、

目的地までの距離は近づいていく。

後部座席はババ抜きで盛り上がっていて。


窓から入ってくる風が心地よくて、

皆の楽しそうな声が気持ちを盛り上げて、

運転する真木さんの横顔が素敵で。


・・・楽しい旅行になりそうだなあ、なんて。


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