第5話
数時間のドライブののち到着した砂浜は、
家族連れ、カップル、友人同士、多くの人賑わっていて。
空には雲一つなくて、
絶好の海日和だ。
「このか!早く早く!」
数人は着くなりすぐに海へと飛び込んでいって、
私達も水着に着替えて海辺へと近づく。
「えいっ!」
「わっ、ちょっと!急に何するんですか!」
先輩に水をかけられて、
負けじと私も水をかけ返す。
気付けば数人で水かけ合戦になっていて。
海で本気で泳ぐ人、ビーチバレーを始める人、
パラソルの下でアイスを食べながら涼む人に、
砂に埋まっている人。皆それぞれに楽しんでいる。
あんなに恥ずかしかった水着姿が
気にならないくらい私も楽しくて。
「このかちゃんビーチバレー混ざろうよ!」
「混ざります!・・あ、でもその前に水分補給してこようかな。」
夢中になって遊んでいた私は、
自分がすごくのどが渇いている事に気づいて。
一度海から引き揚げて、
ビーチパラソルの下に向かう。
キンキンに冷えた炭酸を取り出して、
一気にのどに流し込む。
・・・ああ、なんて幸せ。
少し一息をついて海を見つめていれば、
先輩たちが浮き輪で遊んでいるのが見えて。
あっ、と胸が高鳴った。
その中にいる真木さんは楽しそうにはしゃいでいて、
少し濡れている前髪がなんか色っぽくて。
「っ・・て何考えてんだ私。」
気付けばじーっと真木さんを見つめてしまっていて、
やばいやばい、と首を振る。
けれど時間が経てばまた見てしまって。
・・・だってかっこいいんだもん。
なんてことを繰り返していたから、私の馬鹿。
「っ・・!」
バッチリと真木さんと目が合ってしまって。
反射的に逸らしてしまって更に後悔。
ああもう私の意気地なし、なんて思っていれば。
「おーい!!」
真木さんの声が聞こえて、
また反射的に顔を挙げる。
「おいでよ!」
なんてクシャッとした笑顔で言うから。
また胸が高鳴ってしまった。
「楽しんでる?」
「はい!とっても!!」
よかった、と真木さんは笑って。
「泳ぐのは得意?」
「あんまり。・・というか全然。」
「そうなんだね。」
「泳いでるつもりなのに、溺れてるの?って何度聞かれた事か。」
私の話に真木さんが吹き出す。
「ほんとに苦手なんだね。」
「どうしてこんなに泳げないのか知りたいくらいです。」
「・・深い所行ってみる?」
「私の話聞いてました?」
私のツッコミにまた笑って、
他の先輩から浮き輪を奪い取って(おい)、それを私に渡してくれる。
「浮き輪あれば大丈夫?」
「余裕です。」
「よし。じゃあちょっと置く行ってみよ・・って!うわ!」
バシャン、と私と真木さんに水がかかる。
何事かと驚けば、
犯人はサークルの先輩で。
「おい何いちゃついてんだよ~!これでもくらえ!!」
「わっ・・ちょっ!」
なんて言いながら今度は水鉄砲。
私も真木さんも応戦して、始まった水合戦。
気付けばまた髪の毛もびちょびちょで、
でもすごく楽しくて。
「そろそろバーベキューの準備するよ~」
気付けば時間が過ぎていて。
青柳さんがみんなに集合をかける。
お腹すいた~、という声と共に砂浜に戻っていく人々。
私も浮き輪を片手に砂浜へ歩き出せば、
少し後ろで真木さんが頭を傾けていて。
「どうしました?」
「・・・」
「・・・真木さん?」
「わあ!びっくりした!」
彼の顔を覗き込んでそう聞けば、
そんなに私気配無かったですか?と悲しくなるくらいの驚き方に私も驚いてしまって、
少し困ったように彼がごめんごめん、と笑う。
「耳に、水入っちゃったみたいで」
トントン、と右耳を下にして真木さんが頭を叩く。
「大丈夫ですか?抜けそうですか?」
「うーん、どうだろう。」
しかめっ面をして真木さんは首を傾けて、
けれどバーベーキューの準備が始まった事に気づいて、
一緒に浜辺へと戻っていった。
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