第2話
キュッ、と靴がこすれる音が体育館に響く。
笑い声が絶えない体育館の中で、
フットサルは行われていて。
壁にもたれかかって座る私の目は、
ずっとクシャクシャの笑顔でプレーするその人に釘付けで。
「こーのーか!」
「わっ!びっくりした~」
「なになに、また真木さんみてるのー?」
突然声をかけられて驚けば、
横にいたのは同じ学部で友人の夏未。
私が何も言い返せずどもってしまうのを見て、
ニヤニヤ、と私の肩を小突く。
「なにその反応、かわいいな~」
「うるっさい!」
「ほら顔真っ赤だよ?」
「からかうな!!」
バシバシ、と夏未を叩くが知らん顔。
ボールを追いかける先輩たちを見て、
ふーむ、と腕を組む。
「確かにかっこいいけどなあ。私は断然青柳さん派だね。」
「かっこいいよね、それも分かる。」
「だよね!?ていうかかっこいい先輩多くない!?」
目の保養だわ、としみじみとつぶやく夏未。
・・・それは私も思う。
とてもゆるいサークルであるため全体の人数は多いが、
普段活動に来るのはその中の数十人で。
フットサルを楽しむ者、それ以外のスポーツをする者、
おしゃべりを楽しむ者、周りは様々だ。
「あっち~・・」
ゲームが終わったのだろう。
時間終了を告げるブザーが鳴って、皆がゾロゾロと座り込む。
「あ、ずっとサボってた2人組だ。」
頭上から声が降ってきて、
顔を上げればそこにいたのは真木さん。
「サボってないですよ、休憩です休憩。」
「なんの休憩だよ。」
「・・・たくさん動いたんで?」
「立ち上がってすらないだろ。」
あちゃー、バレてたか、とおどけて笑えば、
私を小突くふりをして真木さんも笑う。
「あれ、真木さんって高校の時サッカー部だったんですっけ?」
「そう。途中までだけどね。」
夏未の質問に先輩が頷く。
「夏未ちゃんは?何かやってたんだっけ?」
「私はバスケやってました。このかと一緒!」
まあレベルは全然違いますけどね、と夏未が私の肩を小突く。
「何言ってんの。」
「だってインハイ一歩手前の強豪校でしょ。しかもスタメンだったじゃん。」
「え、そんなに強かったの!?」
驚いたように真木さんが私の方を見る。
なんとなく照れ臭くなって俯けば、その頭の上に誰かの手が置かれる。
「しかも鬼の部長でしたよ。もう怖くて怖くて。」
「いたたた!ちょっと快くん!つぶさないで!」
そのまま私の頭をグリグリと押したそいつは、
悪い悪い、と笑いながら私の隣に座る。
・・こいつ絶対悪いと思ってない。
「しかも部長だったんだ。このかちゃんが怖いの想像できないけどな~・・」
「いやもうバシバシ怒鳴ってましたもん。」
怖かった~、とおどける快を横目で睨めば、
またにやにやと笑う。
中谷快。同い年で、実は出身高校も一緒。
私はバスケ部で快はサッカー部だったが、クラスが一緒で仲が良くて。
同じ大学を受験することはお互いに知らなくて、
サークルの見学でたまたま会いとても驚いたのが最近の話。
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