第13話ぱふぱふ

「え?『臨機応援』?おおぼけこぼけさんの言葉のセンスはいいですねー」


「よし!よくできすぎさん。少し外を歩いてみましょう。前に歩いている人がいますね。あれ?どんどん遠ざかっていきますね。僕らよりあの人の方が歩く速さが上なんですね。何故でしょう?急いでいるようには見えませんし、よくできすぎさんと同じぐらいの女性に見えますよね。これが『個人差』です」


「十八号さんはバストが大きいのも武器です。特別に僕の『てめえらの乳は何カップだあああああ!!!』ネタを伝授します」


「とーなりーのーきゃーくーはーよーくーかーきーくうーーーきゃくーーーーだあーーー。とねのたくはよくかきくけきゃくだ!使い分けれると武器になりますよー。スピードマウスさん」


「全員で電車に乗りまーす!電車の中で耳を傾けてください。人間が一度に得られる情報量は決まってます。その場で聞こえる一番面白そうな話に耳を傾けてください。日常の他人の会話は面白いものが溢れてますよ。それに自分の知識の引き出しになります。それが正しい情報か間違った情報かより、面白いかそうでないかです。話術は上がりませんが情報の引き出しは確実に増えます」


「一日は二十四時間しかありませんよ。タイムイズマネー。睡眠はしっかりとりましょう。その代わり短縮できるものは短縮ですよ。え?朝の歯磨きを鏡の前でしてる?かばやろう!トイレでしましょう。流す水も無駄が省けて一石三鳥ですよ」


「今日はコンビニとスーパー巡りに行きますよー。スーパーは安いですねー。お惣菜は時間になると割引が始まりますねー。半額にもなりましたよー。コンビニは商品が高いですねー。でもコンビニは二十四時間いつでも好きな時に利用できるから強気な値段でいいんですよ。百均で買えるものも税込みなら五百円を超えるもの多いでしょう?毛抜きで五百円ですよ。性能変わりませんから。でもいつでも買える便利さだからこそこの値段は適正なんです。ほら、レジを見てると独身の方なのか?コンビニでかご一杯に商品を詰めて一回のお会計で五千円を超えている方も多いですねー。スーパーで買えば半額以下です。それでも需要があるのは『便利さ』にお金を払っているのです。コンビニが激安に走ったらちょっと勝てないですねー。でも、それは今の段階では不可能ですが。商品を搬入する業者さんに対する報酬や人件費を抑えてそれを仕入れに回すとそれが可能な時代も来るかもですね。宅配業者さんなんて値下げ競争で可哀そうですねー。セルフレジやキャッシュレスの時代もすぐそこです。昔は謀反を起こさせないために参勤交代がありましたが今は逆参勤交代時代ですね。参勤交代とはお金を貯めさせないために作られたようなものです。行列を豪華に見せるためバイトを雇っていた説もあるんですよ。今は送料無料が基本です。新聞や雑誌、書籍もネットや電子です。新聞配達はなくなるかもしれませんね。無責任な発言になりますがそれは残念にも思いますね。え?何故か?それは雇用がなくなるからです。こうやって仕事がコンピューターにどんどん奪われていくと経済は破綻します。何故なら金持ちと庶民の所得の差が開きすぎるからです。働く気力があっても雇用がないのが今の日本です。ニートを責める前に政治家を責めるべきだと思いますよ。フォローしてRTしたら百万円なんて金持ちが庶民のほっぺを札束で叩いているのと同じですよ」


「タクシーに乗りますよー。あの乗り場に二人一組で『〇〇まで』と言ってください。通常なら千円でお釣りが出る距離です。後で答え合わせしましょう。ブルルーン。はい、皆さんの領収書を見せてください。あれええええええ?二組だけ千円オーバーですねー。実はあそこからのルートは開かずの踏切があるのです。でもすぐ手前から踏切は見えますので良心的な運転手さんは踏切がカンカンなっているのが見えれば手前で右折して迂回できるルートがあるのです。この金額の差は時間の差です。タクシーの料金は百秒で九十円加算です。この三百六十円の差は六分で三百六十秒として六分に四十秒のプラスは余裕であり得ます。九十×四ですね。これは迂回ルートを知っているお客さんなら激怒ですね。クレームを入れるかどうかは個人の判断になりますがあんまりいい気はしませんね。逆に黙って迂回してくれれば『この運ちゃん素敵―!』となりますよね。『個人』とはこの差です。たかが三百六十円ですがお客さんの気持ちに値段は付けられませんからね。自分の考え方に活かしましょう」


 讃岐さんの言うことは本当にいちいち説得力がありますね。『UDN47ぷらすワン』のレギュラーも日々ものすごいスピードで成長しています。讃岐さんは働きたくないからこのプロジェクトをしているのですが…、うーん、そのまま成功して遊んで暮らす讃岐さんは勿体ない気もしますね。




 水曜日の夜。秋葉原「ダブルゼータ」に讃岐さんは来てます。オープンまであと二日です。


「かんぱあああああああああああい!!」


「いやあ、SHINちゃんの作るSHIN様すぺっしゃるは最高らーね!!!」


「あざまーーーーーす!で、『UDN47ぷらすワン』の方はどうなの?オープンは明後日だよね!」


「うーん、まあ、僕がやれることはやったし。最初は僕も厨房に入るから大丈夫だと思うよ。そりゃあいきなり黒字が出るほど甘いとも思ってないし。黒字にするのも短時間で出来ると思うかな。あとはあの子たちがどれだけ『アイドル』としてお客さん、いや、ファンを掴めるかだと思うなあ」


「で?どんな感じなの?その子たちのことは大体、先週聞いたけど」


「まあ、人間だし若い子も多いからね。やっぱりどこか全員『計算高さ』は持ってるねー。特にアイドルになろうって子たちも多いし。腹黒いとはちょっと違うけど、普通の女の子が『ですぅー!』なんて絶対言わないでしょ?」


「あー、殴りたい♡」


「殴るなら僕を殴ってえええええええええ!」


「やーん!讃岐さんを殴るなんて私には出来な―い!はい、黒板消しパフパフ」


「うわーー!ちょっとSHINちゃん!」


「大丈夫!粉はファンデーションよーん」


「もー!SHINちゃんに怒りのハイボール!」


「あざまーーーーーす!」


「でね、まず順番。飲食店は週末が強いのはSHINちゃんも分かるよね?」


「休み明けの月曜とか超ヒマ。週末は次の日休みだから遅くまで飲めるし、やっぱ週末だよね」


「そこにめがねめがねさんを入れたのだ。三人でやるって。補欠枠から二人をアルバイトに選んだのね。それがなんと!五十二歳の旦那さんと五十一歳の奥さんの夫婦の方を選んだのね」


「へええええ!それはまたすごい組み合わせだね。めがねめがねちゃんが選んだの?」


「そう。でもこれは理に適っているというか。その五十歳を超える夫婦は『料理の腕、知識』は持ってるかな。旦那さんも元魚屋だったみたいだし。料理の部分を補うにはいい補強だと思ったね。めがねめがねさんは頭いいね。ただ、あの夫婦の弱点は『提供時間の遅さ』かな。まあ、注文を受けて提供するまでが遅いかな?それは今後の課題として工夫で早くすることは出来るし、その遅さをめがねめがねさんの『アイドルとしての魅力』がお客さん、ファンに不快に感じさせないと思うかな。だから忙しい金曜日に。明後日の初日でトップバッターの意味も込めて」


「なるほどねー」


「しかも給料も時給から始めて、出来高制になったら三人で均等に割るって。それならあの夫婦もめがねめがねさんのために頑張りますよーー。それで後は順番に月曜日が『ちーむ父兄参観』のスピードマウスさん、みすえっこさん、ぴーてぃーえーさん」


「ちょい待って。なになに?その『父兄参観』て」


「みすえっこさんもスピードマウスさんも子供っぽいキャラを演じてます。ぴーてぃーえーさんは少し年上っぽく見えるので二人を監視すると言う意味合いでそう名付けました。僕がね」


「なるほど。じゃあもう一組の『トリオ』名は?」


「単純に『ちーむしーおー2』」


「CO2ぅ?あ、待って。おおぼけこぼけさんちゃん、キューティフルちゃん、おっかちゃん…。頭文字だ!」


「そう!『ちーむしーおー2』は火曜日。集客が弱い月曜火曜にレギュラー三人組をそれぞれ担当してもらうのね。水曜日はアニマルさん。補欠枠からちょっと地味だけどかわいい真面目な子を一人アルバイトとして採用して二人でやるって。木曜日がよくできすぎさん。なんとびっくり。あの子は僕を職人として雇うそうです!」


「ふへえー!あったまいい!!」


「でしょ?やっぱりよくできすぎと名乗るだけはある。て、名付けたのも僕だけどね。そして土曜日は十八号さん。見た目はかわいい、料理もそこそこ出来る二人をアルバイトとして雇いましたね。もちろん補欠枠から。まあ、三人でもきついと思うかな。十万、二十万売り上げを作るとなると。仕込みも真面目にするなら四人は欲しいかな?僕はよくできすぎさんと二人だけど。まあ、らくしょーっすよ。うちの店がカウンター八席にテーブル四席の二十四人が座れるけど普通の飲食店ならまあ、普通にやれば夜だけで十万いけばいい方かな?僕ん時は最高で十五万ぐらいかな?人数増やせば二十万もいけたと思うけどね。そこにあの子たちがどれだけ自分らの魅力で上乗せ出来るか?料理で売り上げが下がっても別の部分で補うことは出来るからねー。それに最初から『結果重視』と言ってきたもん」


「そうらねえー。うちもキャストによって太客持ってる子は大きいもん」


「何言ってんだいSHINちゃん!僕のはもっと大きいよおおおおおお!食べてみるぅぅぅぅ?」


「え?いいのおおお?じゃあまず百度で加熱するねー」


「あ、あうち…」


「あと、大事なことも教えたの?うちの店もストーカーとか結構多いよ。クソみたいなクレーマーもいるし、十八歳未満もキャストにはいるから夜十時までの制限とか」


「まあ、その辺も大丈夫とは百%言えないけど、それなりのことは教えたよ。責任も僕が全部持つし。十八歳未満の子は時間を守ってやるし、最初はとりあえず夕方五時オープンの十一時ラストオーダーの十二時閉店でやると決めたし。みんなでね。おいおいは昼間やる子も出てくると思うし、営業時間を延ばす子もいると思う。飲食店もアイドルも共通してると思うんだけど『お客さんを教育する』のって大事じゃん?」


「店のルールを守らせるのね。そうそう。うちもルールを守らねえのは店からつまみ出すし。こーちゃんが。ねー、こーちゃん!」


「いえいえ。SHINさんが先頭になって…、いえ、なんでもありません」


 こーさんがSHINちゃんの睨みで口を閉ざします。


「そこは『ファンを教育する』も同じだと思うのね。NHK教育テレビを教育するのも同じで」


「ええ…、NHK説教テレビとか出たいなあー」


「そんなのドMなら視聴率百%だよね!まあ、『恋愛自由』も公言してるし、とりあえず全員『彼氏いません』でスタートだから。年齢や国籍、性別も詐称するつもりだったし、彼氏もそうしようと思ってたら、嘘だか本当だか分かんねえけど、全員フリーみたいだし。ま、そこは自己申告だし。自己責任ってやつにまかせます」


「でも聞いてると日曜日の補欠枠もいい子多そうだね。入れ替えも激しいんじゃない?」


「そう!これが結構大当たりかもなのね。日曜日の補欠枠は結局、それでもいいって子が七十人残ってくれたのね。時給二千円で週一、日曜のみでしかも一時間か多くて二時間しか働けないと分かったうえで。一時間で売り上げの三十三%選ぶ子はいないじゃん?一時間で十万も売り上げなんて出せないし、大体十人前後を一つのチームとして交代制でなにかやりたいことをやらしてあげようと思ってんの。そこはその十人で話し合いで何をやるか決めてるみたい。僕にうどんを習って『うどん教室』を定員制でやるとか、年齢高めのグループでお茶会やるだとか。これは地元の高齢者をターゲットにするんだって。当たると思うね。さすがに飲食店だから『ペットカフェ』はダメ出ししたけど、普通にアイドル活動するグループもいるみたい。普通じゃつまんねーから楽器を覚えてバンドをやった方がいいとは言ったけどね。若しくは演歌とか。他にも野球アイドルチームもいたねえ。平日や土曜日に草野球チームを組んでガチで試合してユーチューブにアップしていくんだって。そういやその枠はまだいないなとなってね。まあ、ルックス良ければそこに強烈な『個性』があって、誰もやってないことをすれば需要はありますよー」


「へえー。日曜日も結構売り上げ出るんじゃないのー?それだけやるなら。面白そうだもん」


「でも七十人×時給二千円は十四万円だよ。これはもう一週間休みなしと同じだよね。新しいお店は飲食業なら何をやってもいいと契約書には盛り込んでるし。時間の制限も受けないよ。保健所にも許可は出してるし。いずれはレギュラーの仕込みや活動の邪魔にならなければ日曜以外の午前中も補欠枠に開放する予定だよ。話し相手が欲しい高齢者なら早い時間にお金を使ってでも通ってくれると思うしね」


「投票券とか総選挙とかはやんないの?」


「もうすでにやってるし。オリジナルじゃなきゃ意味ないじゃん。それに投票券やるならうどんのおかわりを数えた方がいいかもね。あ、大食いコンテストもいいかも。自分の推しのために推しが作ったうどんを限界まで食べてくれるファン。いいねえーーー!愛がある!!」


「愛だよ!それは確実に愛だ!あいだーきいーっく!」


「さすがSHINちゃん!そこにしびれる!あれがでるうううううう!」


「あれってなんやねん!!」


「そんなSHINちゃんにハイボール!」


「あざまーーーーーす!」


 へえー。明後日に控えた『粉衛門』のリニューアルオープンと『UDN47ぷらすワン』のデビューに不安もありましたが、これはきっと成功しそうですね!楽しみです!讃岐さんはすごいですね!!






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