第4話さあオーディション!
「はい、讃岐です。もしもーし」
讃岐さんの電話がひっきりなしに鳴っている。すごいですねー。これ全部アルバイト希望の電話みたいです。
「うーん、これはもう三回ぐらいに分けてやらないと一日じゃあ無理だな」
そういえばアルバイトの面接って、応募者の希望日に合わせてくれていたっけ?雇用側が決めてたっけ?その辺は人事担当次第ですかね。正社員とかなら書類審査から一次面接、二次面接などあって全部企業が決めるのが普通ですかね。
「まあ、これはアルバイトとアイドル候補生を同時に募集してるからな。面接は随時でもいいけど、全員の面接、アピールを見てからでないと候補生は決めらんねえ。三回になるか、五回になるか分かんねえけど全員の話を全て聞くぜ」
またもや讃岐さんのスマホの着メロである『ルネッサンス情熱』が流れ始める。もうすでに五十人以上の応募が来ている。
「はい、讃岐です。あ、募集の紙を見てのお電話ですね。ありがとうございます!それでは希望の日時と連絡先とお名前を。え?五十歳を超えている?全然いいですよ。年齢不問と書いてますよね。僕は普通が嫌いなんです。あ、でも、それであなたを採用するかはまだ分かりませんよ。そうです。面接はオーディションと思ってください。はい?三十三%?もちろんですよ。僕は嘘も嫌いなんです。え?旦那さんと一緒に面接を受けたい?全然いいですよ。性別問わずと書いてますし、恋愛ご自由にと書いてます。逆に恋愛禁止されながらも陰で恋愛してるアイドルも多いと思いませんか?タイミングよく卒業したりなど。それなら…、ですよねええええ。はい!では今メモリますので、はい!はい!はい!では折り返しオーディションの日程が決まりましたらこちらからご連絡致しますので。連絡していい時間帯を教えてもらっていいですか?もしくは僕の番号が着信に残ってましたら好きな時に折り返しお電話いただければ幸いです。はい、では。失礼します!」
五十歳を超えている夫婦からの応募ですか?まあ、今まで小学四年生の応募や中学生、外国の方からの応募もありましたが…。本当に面白いけど、ちょっと想像が出来ないですね。
「想像出来ないから面白れぇんじゃねえか。それにこの国の法律でアルバイトは十五歳以上から。十八歳未満の夜十時から朝五時までの労働は禁止されている。それならユーチューバーはどうなんだ?小学生が起業して稼いでる。その辺はどうにでも出来る。それよりも俺が作ったあの募集の紙を見て、こんなにも応募してくれる人がいることの方がすごいと思わねえか?ありがてえぜ!」
それにしても…。SHINちゃんの人脈だけでこれだけも応募者が殺到するとはすごいですねー。ペシッ!痛くないけど手のひらで軽く叩かれました。
「今のはSHINちゃんを褒めていたから軽くした。普通ならグーだ。今回の募集の紙は至る所にばらまいたぜ。店の近くのマンションや住宅にポスティングもしたし、大学や自治体なんかで貼ってくれるところにも貼りまくった。ポスティングは俺一人でやったけど、後は『それらを出来る権利を持った人』が好意で動いてくれた。本当ありがたいぜ!」
るねーっさーーんすー♪情熱ぅー♪
「はい、もしもし、讃岐です」
結果、三週間で百二十三人の応募者。電話は今もポロポロ鳴ってますね。お店再開まで、あと、一週間ですが…。これはどうなるんでしょうかね?すごく楽しみですが。この間にも讃岐さんは弁護士さんと例の新しい素敵なビルを建てている企業の人とも話を進めている。讃岐さんが弁護士さんと毎日メールのやり取りを五千文字前後の文章でやっているのを見ました。讃岐さんは隙がなさそうですね。
「あの弁護士さんは仕事が出来るぜ。それに『喜怒哀楽』もしっかり持ってる。それらが麻痺した連中相手によくやってくれてるぜ。物事全てをソロバン弾くことしか考えてねえ連中から営業補償を月百万勝ち取ってくれた先生だぜ。あと一週間?計算通りだ。昔の取引先にも挨拶は済ませてある。あとは人選だけだぜ。この人数なら一次選考は三回に分けるか。心配すんな。三週間後には『UDN47ぷらすワン』一期生のお店はオープンしてるぜ」
讃岐さんは有言実行の方です。本当に楽しみですね。最初の一次選考という名の面接はどうなるのでしょうか?最終的に三週間後には『UDN47ぷらすワン』一期生のお店が開店ですね。一体どうなるのでしょうか?何人のアイドルが一期生として選ばれるのでしょうか?讃岐さんが咥えタバコで応募者にどんどん電話している。どうやらこの一週間のうちに三回のオーディションという名の面接が行われるようです。
二日後、一次選考一回目が行われるのです。
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