第210話 さてと、近況報告とまいりますか。

前回のあらすじ:式典後もいろいろとありました、、、。





 さらに数ヶ月が経過し、帝国内も我が領もそれなりに落ち着いてきた感じがして誠に喜ばしい状況といえよう。これでようやく平穏無事にのほほんと過ごすことができるというものだ。



 また、水が行き渡ると同時に領内の開発を行った領地とそうでない領地との差が明確に出てき始め、ただ領地でふんぞり返るだけの貴族領主達が慌てて状況を打破しようと、いろいろと動き始めたのは笑えた。



 もちろん、彼らがくそ真面目に領内の開発及び改革に着手するはずがなく、栄え始めた他領や我が領地に対して、悪い噂を振りまいたりしていたようだ。



 そんな彼らの努力も全く効果が現れずに、密かに放っていた諜報員により次々とトリトン陛下やリトン公爵へと報告が行き、彼らは奮闘(笑)虚しく爵位剥奪され、国外追放の憂き目を見ることになった。追放先は隣国のメルヘン王国やこれまた隣国であるサムタン公国、あとはアバロン帝国へと追放した。



 もちろん、追放された貴族や関係者達と懇ろな仲となっている国々にそれぞれ分けることも忘れなかった。このようにしっかりと人道的配慮に則り、送って差し上げましたとも、と、久しぶりに見る良い笑顔でリトン公爵がわざわざ私に伝えてきた。そんな気遣いは必要ないんだけどね。



「しかし、ここまで細かい内容がわかるとは、侯爵の諜報部隊、恐るべしだな。」



「そうは言っても、実際に動いていたのは公爵、あるいは陛下直属の諜報部隊ですよね?」



「それはそうなんだが、元は侯爵の諜報部隊出身の者が主ではあるし、時々指導などもしてくれておるからな。」



「なるほど。ガブリエルに伝えておきますよ。」



「今はここにいないのか? なら、仕方ないな。くれぐれも私が感謝していたと伝えてくれよ。」



「ところで、その没収した領土なんですが、どうされるので?」



「うむ、そのことなんだが、フロスト侯爵「お断り致します。」、、、。まだ、何も言っていないんだが。」



「あくまで一意見としてなのですが、直轄領にして見込みのありそうな人物に開発や管理を任せてみてはどうでしょうか? 今ならそういったことに長けた人物も育っていると思いますし。」



「・・・そうだな。別に他の貴族達に治めさせる必要もないか。ふむ、その線で進めてみてもいいかもしれんな。」



「ということで、何ならフロスト領「それは承認できんぞ。」も、って、まだこれからいうところなのですが、、、。」



「上手いことかぶせて楽をしようとしているかもしれんが、そうはさせんぞ。」



 チッ、バレていやがったか、、、。



 結局、没収した領地は直轄領となり、そういったことに関して優秀な評価を受けた何人かが代官やその補佐として送り出されることになった。コーメやハクヤに治めさせては? という意見も出たようだが、当人達がトリトン帝国に来たばかりで、いきなり領主になってはあらぬ疑いを受けたり、帝国内で面倒なことが起こる可能性が高くなると言って辞退したようだ。



 ということで、ようやく帝国内全土で開発が行われていくだろう、目指せ最貧国脱出だ。



 と、帝国内ではこんな感じで時が過ぎていったのだけど、フロスト領内ではどうだったかというと、何故かミスリルの需要が増していた。



 というのも、洞穴族のメンバーを中心としてミスリルを薄く延ばして鉄などの金属に貼り付けられるようになったそうなのだ。



 ミスリルというのは某熟練度ゲーム以外ではどの世界に置いても非常に貴重で高価な金属である。こちらの世界でも貴重な存在である。フロスト領でもそれは変わらない。領内でもミスリル製の武器を使っている領民は誰もいないのだ。まぁ、フロスト領内ではミスリルを武器の素材に使うものはいない、というのもあるんだけどね。



 話はそれたけど、それだけ貴重な金属だけに、ミスリル製品はほとんど出回らない。フロスト領で存在するのは、素晴らしいモフモフを作り上げるための魔櫛(効果がやばすぎて現在は封印中)など、わずか数点しかない状況だ。



 そんな中、この薄く延ばして貼り付ける技術が出来上がってしまったので、様々な調理器具に使われることとなった。一番多く使われたのは、フライパンであった。何せ火の通りが良くなった上に、仮に焦げてしまっても水洗いするだけで、その焦げがあっという間に落ちてしまうのだ。人気が出ないわけがない。



 この世界でのフライパンはフッ素加工やらダイヤモンドなんちゃらなどというものは存在せず全て鉄製である。フライパン一つ作るのに必要なミスリルは大体1kgだったのが、この技術によって鉄のフライパンにわずか5g程度の量を貼り付けるだけで、そんな素晴らしい効果を付与できるのである。簡単に焦げなどが取れてしまうため、必死にこする必要もなくなるため、長く使えるのも特徴である。



 もちろんフライパンだけでなく、屋台で使っている鉄板などにも使われるようになったし、その他の食器にもミスリルを貼り付けられるようになっていった。しかし、いくらミスリルが少量で済むとはいえ、こういろいろと使われていけばすぐに在庫が少なくなってしまうし、実際そういう状況になっている。



 ちなみにミスリルは一応フロスト領内のダンジョンである通称「氷王の訓練場」の地下2階で本当に極まれに手に入るようにはなっている。あとはこのダンジョンの最深部である地下6階で確実に手に入るポイントがいくつか存在する。とはいえ、地下6階層に行けるのは私とマーブル、ジェミニ、ライムの4人だけである。



 もちろん、ちょくちょくその場所に行っては、採掘するようにしているし、1つのポイントで数回採掘でき、それがいくつかポイントがあるとはいえ、一通り行っても500gいけば良い方である。ちなみにこの500gというのは1人頭ではなく、4人全員での釣果である。



 当然だけど、毎日その場所に行って採掘しているわけではないので、2日で1kg、7日で3.5kgとかにはならない。それに、あの階って肉など食べられる物を落とす魔物出ないんだよねぇ、、、。やはり美味い物が絡んでこないとそこまでやる気は出てこない。マーブル達も同じ考えのようだ。



 ちなみに量だけで考えると、私達が持ち込んでくる量より他の冒険者達が持ち込んでくる方がはるかに多いのが現状である。まれにとはいっても、あのダンジョンは潜る人が多いため、少量とはいえほぼ毎日持ち込まれているそうだ。正直なところ手に入らなければ入らないでもあまり問題ではないとは言ってたな。



 現に加工している彼らも、加工できるようになったとはいえ、1日の作業をそれに費やさなければならないらしく、ミスリルの加工ばかりやっているのはつらいって言ってたな。もっとも、最低限フライパンなどは領民達には行き渡っているようなので、他は嗜好品としての扱いか、他領の人達からの注文だから無理して受ける気は毛頭無いらしく、その辺は在庫と相談して受けるかどうかしているみたいだ。



 そういえば、ミスリルが足りなくて困ってた時期に、もう使わないからと、ミスリルの魔櫛を提供したら全力で止められたっけな、、、。あれ、本当にヤバい代物だったようで、マーブル達も手放すことについて反対するどころかむしろもらってくれと言わんばかりの様子だったからなぁ、、、。



 そのミスリルのフライパンの使い心地に気をよくしながら、オークのステーキを焼いていた。ちなみに私が使っているのは純度100%のミスリルフライパンです。いや、私も鉄のやつにミスリルを貼り付けたタイプで構わないと言ったのだけど、何故か総ミスリル製のフライパンを提供されてしまった。いや、フライパンだけでなく、鍋やお玉などのキッチン用品ほぼ全てである。ミスリルでないものは、包丁などのカットする道具くらいかな。そっちはドラゴンの牙で作られているし、、、。いや、非常にありがたいし、そういう気持ちも本当に嬉しいんだけどね、、、。



 気を取り直してオーク肉を焼いていく。中火で両面をじっくり焼いて、ある程度火が通ったら、強火にしてメイラードを付けてから、お肉を取りだしてバットに置いて休ませ&余熱で念のため中の部分に火を通していく傍ら、オークを焼いたフライパンに赤ワインを投入してかき混ぜる。



 本来なら木べらなどでこそげ取るように多少こする必要があるのだけど、そんなことをしなくても軽くフライパンを揺するだけで肉の旨味成分が混ざってしまうミスリルやべぇ、、、。ちなみにこの赤ワインはタンヌ王国からの交易品です。トリトン帝国ではワインは作られておりません、悪しからず、、、。献上品ではなくフロストの町で普通に売られていたのを購入しました。美味いかどうか? 知らん、だって私酒飲まないし。



 肉エキスをタップリ吸ったワインにハチミツとスガーを投入し、さらにかき混ぜる。量もかなり目減りしてトロトロになったところでジェミニに皿を用意してもらい、ライムが浄化魔法でキレイにして、焼いたお肉をそれぞれ置いて、ソースをかける。マーブルには野菜を切ってもらっており、その切ってもらった野菜を別の皿にのせてもらう。押し麦ご飯もバッチリ用意してありますよ。



 あ、ドレッシング作り忘れてたな、、、。いいか、即興で作りますかね。ボウルを用意してもらい油を投入し、ビネガーカウから絞った酢を入れ、スガーを茎の部分多めで投入。しっかりとかき混ぜて完成? あ、乾燥ベーコン忘れてた、、、。あ、そもそも乾燥ベーコン作ってないっけ、、、。オーガジャーキーでいいか。



 よし、超なんちゃってフレンチドレッシングの完成っと。マーブル達には手伝ってくれたお礼のモフモフをしてから席について「いただきます。」の挨拶をして、さぁ、食べるぞ! っていうときに何やら足音が。



「アイスさん! ワタクシ達、ついにやりましたわ!!」



「・・・王女、それじゃ、伝わりません、、、。」



 来たのは戦姫の3人でした。しかし、珍しいな。いつもなら早足で来たとしてもこれほど足音を立てて来ることはないんだけど。それ以上に珍しいのは、突っ込んだのはセイラさんじゃなくてルカさんだったことかなぁ。ということは、ルカさんにとっても良いことだったのだろう。取り敢えず聞いてみましょうか。



「3人とも慌ててどうしたんですか? いきなり「やった!」とか言われてもどういう反応すればいいのか皆目見当つかないのですが、、、。 っと、3人は食事は済ませたのですか?」



「・・・えぇ、誠に残念ながら、、、。」



「確かに残念かもしれませんけど、用件をアイスさん達に伝えませんと。」



「そうでしたわね。アイスさん、ワタクシ達、ついに、あのゴーレムから鍵を頂きましたの!!」



「ゴーレム? 鍵? ああ、なるほど。戦姫の3人もついにあのゴーレムを瞬殺できるようになったんですね。おめでとうございます。」



「ありがとうございます!! これで、ワタクシ達もようやく地下4階より下に潜る資格が得られたのですわね!」



「まぁ、そうなんですけどね。別にその鍵がなくても行くことはできるんですけどね。・・・魔物が強すぎて倒せないだけで。」



「確かにそうかもしれませんが、ワタクシ達は付き添いではなく、肩を並べてアイスさん達とダンジョンへと行きたいのですわ!!」



 鼻息を荒くして(実際はそんなことないけど)、アンジェリカさんがそう言うと、セイラさんもルカさんもウンウンと頷いていた。まぁ、ただ見てるだけってのもつまらないからねぇ。



「近々地下4階以降を一緒に行くからよろしく、ということですか?」



「その通りですわ! ということで、アイスさん、予定を空けておいてくださいませ。」



 はい、ダンジョン行きが決定しました。そういえば最近は一緒に潜っていなかったなぁ。



 食事を摂りながら話をして、一週間後に行くことになりました。あ、もちろん戦姫が食事後だったとはいえ、私達だけ食べるというのもどうかと思ったから、軽めの食事を用意して食べてもらいましたよ。「食べずに直接こっちに来ればよかったですわ、、、」とか言ってたけど、聞いてなかったことにしよう。



 戦姫と一緒にダンジョンに行くことが決定し日取りが決まると、マーブル達も嬉しそうに部屋の中を走り回っていた。うん、非常に可愛らしくて結構である!! 取り敢えず地下4階で様子を見てからだけど、ミスリル採掘要員も欲しいから、念のため採掘道具を用意しておきますかね。




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久方ぶりの投稿となりまして、続きを楽しみにされていた方、お待たせ致しました! と同時に遅くなりすぎて申し訳ありませんでした。

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アイスさんの転生記 ~貴族になってしまった~ うしのまるやき @maruyaki-san

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