第190話 さてと、魔王の元へと向かいましょうか。

前回のあらすじ:ちひゃーは俺の嫁!! ・・・すんません、一度言ってみたかったんです。



 2人の歓迎会も終わり、戦闘勘も取り戻してもらって、ある程度我が領のペット(一部はかけ離れた存在)達もある程度魔物狩りを堪能してもらったところで、本格的に魔王討伐と参りましょうかね。メンバーだけども、私とマーブル、ジェミニ、ライムにウラーさんとフライドさんという構成である。


 ちなみに、今回はアンジェリカさん達は不参加となっている、というのも、何故か知らないけど、ルクレチ王国からお呼ばれしており、日々パーティという名の顔合わせに付き合わされることになったようだ。一応タンヌ国王からは、面倒になったら不参加でも構わないし、それが原因で国交が途切れても問題なしと言質をしっかりと頂いているそう。とはいえ、最初くらいは参加して欲しいとも懇願されたため、泣く泣く参加ということらしい。ただし、王城には泊まらずに、今いる宿へと戻るという条件もつけたあたり、流石というか何というか。いや、その条件を呑ませたことの方が流石と言うべきだろうか。


 そんなわけで、むさいオヤジ達+可愛いうちの猫(こ)達という非常に濃いメンバーで魔王討伐に向かいますよ、って、そういえば、私今16か17の若造だっけな。すっかり忘れてたよ、、、。


 フライドさんの案内で、フライドさんがこの国で住処にしている家を上っていく。ちなみに、フライドさんの家は、名前の知らない山の中腹にぽつんとある。ぽつんとあるけど、普通に登山する場合には通らないような場所に位置している。言うまでも無く、本人にも許可を取ってこの場所をルクレチ王国における転送ポイントを設置してあり、今後いつでもこの国に入れる状態となっている。もちろん、侵入してどうこうしようなどとは微塵にも思っていない。目当ては魔物達のドロップ品という一点に尽きる。


 目指しているのは山頂とのことだった。山頂までは獣道らしきものは存在していたけど、この獣道は街道とは認識されておらず、たまに魔物が出てきたりしていたので、バリバリ倒していった、ということはなく、特に新たな魔物ではなくどれも一度は倒している魔物であったため、お肉を落とす魔物以外はさっさとボスを倒して戦闘終了させていたりした。


 そんな感じでとりあえず山頂に到着。山頂は石碑が建っている他にはとくに見るべきものはなかったけど、何より景色が美しかった。・・・これ、絶対アンジェリカさん達に言ってはいけないな。間違いなく案内しろと言われる、、、。いや、ここに来るのが面倒くさいという訳ではないんですよ、ええ。・・・すいません、正直面倒臭いので再びここに来るのは勘弁してください。


「ご領主、俺がここに来ましたのは、ここに魔王の住処に入れるものが存在しているからです。」


 ああ、やっぱりか。ここにブラ○オンが埋まっているのね。で、出てくる台詞もアレなんだろうな。格好良いからいいんだけどね、、、。そんなことを考えながらフライドさんを見ると、フライドさんは石碑に手を触れようとしていた。


 石碑に手を触れると、石碑が輝いて、石碑の根元? の辺りに柄が浮かび上がっていた。フライドさんはその柄をつかんで上に引き上げると、そこには見事な長剣があった。さて、鑑定鑑定っと。


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【ゲートキーパー】・・・ほぅ、これは見事な魔剣じゃのぅ。攻撃力は言うまでも無くあるのじゃが、この武器の本来の力は、とある場所を開くカギの役割じゃな。そんな役割があるせいか、一応自己修復の効果があるようじゃな。一応お主にも装備できるみたいじゃぞ。使いこなせるかは別としてのぅ、カッカッカッ。

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 えーっ、ブ○イオンじゃないのかぁ、、、。って私装備できるの? まぁ、使いこなすことはできそうもないから装備しないけどね。まぁ、カギの役割をするのなら、ゲートキーパーという名前も別におかしなものではないのか、な、、、。いや、おかしいか。・・・でも、案外名前と外見が合って結構かっこいいかも。特に無骨な感じが。そういえば、カシューナットの剣があったな。あれも無骨だけどシンプルイズベストを体現した剣だね。後でフライドさんに見せてみるか。


「ふむ、久しぶりの感触だ。久しぶりで使いこなせるか心配だったが、先日まで戦いに明け暮れていたおかげで無事装備できるようだ。おおっ、力が漲ってくる、、、。これで魔王と戦える、と思っていたのは少し前までだったが、、、。ご領主、こいつを装備してもあなたたちには勝てる気が全くしないのだが、あなたたちは一体何物なんだ、、、?」


「私達ですか? 私は魔力0のCクラス冒険者で、マーブル達はそんな私の可愛い子供達ですよ?」


「「いや、それおかしいから!!」」


 何故か全力で否定されてしまった、、、。まあいいや。早速試し切りも兼ねて山を下りていく。昨日まで多少とはいえ手こずっていた魔物でもアッサリと倒せるようになっていた。あ、私達ではなくてフライドさんがね。


 ようやく街道に入ったので、道の上を進んで魔物と遭遇しないように進む。ウラーさん曰く、魔王の住む砦には更なる強敵が待ち構えているとのことで、今は体力などの温存を図りたいのだそうだ。なるほど、そう言う理由ならと納得した。本心はもう少しお肉を手に入れておきたかったけど、後でも問題ないだろうということで引き下がることにした。


 街道を進んで王城の入り口まで進んだが、王城には入らずにそのまま通過してしばらく進むと、道が途切れたのでそのまま進んでいく。道が途切れたということは魔物と遭遇するということでもあるのだけど、この辺りの魔物も昨日までに遭った魔物達だったので、サクッと進む。


 更に進んでいくと、崖を切り開いたような地形が見え、そこには道をふさぐようにして大きな顔のレリーフみたいなものがあった。高さは5メートルくらいあり、乗り越えるのは難しそうだ。その上壁自体も厚いのでぶち破ることも難しいかもしれない。でも、正直思いっきりレールガンをぶっ放したい欲求が出てきた自分がいた。とはいえ、敵国ではないのだから、流石にまずいだろう。


「ご領主、あそこが魔王の住む砦の入り口だ。この先に魔王が住んでいる。」


「なるほど。で、それを通過するのに、そのゲートキーパーが必要、ということなんですね?」


「その通り。ここを通れなければ、魔王と戦う資格無し!!」


 そう言って、フライドさんがゲートキーパーを上段に構えて真っ二つにする感じで顔のレリーフを斬りつけた。少し静寂があった後、顔のレリーフが半分に割れたと思うと、道が開けた。


「ふぅ。やはりある程度試し切りをしておいて良かった。まさか一撃目で開くとは思わなかったな。」


「そうじゃな。前回は数回斬りつけたのぅ。おかげでゲートキーパーが破損寸前までになってしまったからのう。」


「ああ、でも今回は1回だけで済んだから、ゲートキーパーも無事だし、こいつで魔王砦の攻略に進めそうだ。」


「なるほど、前回はゲートキーパーは使わなかったんですか?」


「ああ、前回はこの愛用の剣で戦ったんだ。やはり封印し直したおかげで、再び使うことができた。」


「いや、それ自己修復ついているので、放っておけば自然と回復しますよ。」


「「な、なんだと!?」」


 2人は驚いていたと同時に少し落ち込んでもいたようだ。


「そ、それを知っていたら、魔王討伐はもっと簡単だったな、、、。」


「そうじゃのう、、、。ワシもある程度抑えて付与しなきゃならんかったから、それはそれで苦労したぞい。」


「う、それは済まなかったな、、、。でも、今回は思いっきり付与してもらうぞ。」


「うむ、任せておいてくれい。ご領主は武器使わんし、王女達は武器が凄すぎて、逆にワシの付与じゃと威力が低下してしまうし、ワシ必要ないんじゃ、とどれだけ落ち込んだやら、、、。一緒にいたペット達も強すぎて立場がなかったわぃ、、、。」


「それを言うなら、俺もだぞ、、、。この国では勇者とかもてはやされたけど、ご領主達と一緒に戦ってみれば、むしろ俺の方が足手まといだった始末、、、。」


「「はぁ、、、。」」


「まぁ、すぐに追い越しますよ。それに、あのレベルの魔物達だけで、ここまでの腕になる方が私に言わせると異常なんですけどねぇ、、、。」


「ミャア、、、。」


「ですね、あの程度の魔物でどうやってここまで強くなったのやら、、、。」


 私もそうだけど、マーブルとジェミニも感心していた。だって、ゴブリンエンペラーとかオークエンペラーとかはもちろん、巨大種のドラゴンすらいない状況で、2人がかりとはいえドラゴンを倒せそうな強さを持っているんだから、よほど才能がないと無理だ。ぶっちゃけ、才能だけで見れば私よりももの凄い。それと同時に倒している魔物の強さで自分たちの強さも大きく変わるものだと改めて思ったよ。


「・・・では、これより突入する。ご領主、準備はよろしいか?」


「こちらはいつでも構いませんよ。」


「ウラーはどうだ?」


「ワシも問題ない。」


 砦の中に突入した。やはり魔物が突然沸いている感じだ。数は地表と比べると少なめかな。数は4体か。おおっ、こっちに来たな。では、どんな感じかな。


「4体ほどこちらに来そうですね。丁度いいので、どの位の強さか確かめたいので、私達だけで対応して構いませんね?」


「ああ、お任せする。」


 魔物は4体。ふむ、ドラゴンフォビア? 何だか小さいドラゴンといった感じかな。ふむ、ボスらしき個体はない、と。では普通に倒すとしますかね。


「フライドさん達の許可があったので、今回は私達だけで対応します。とはいっても、近くの相手を1体ずつ倒すだけの簡単なお仕事です。」


「ニャア!!」


「やるですよー!!」


「ピー!!」


 私の方でもオニジョロウを構えて、氷の矢を水術で作り出して弦を引く。一応戦闘慣れしているようで、弓を構えると、私の方に突進してきた。ふむ、通常なら正しい判断だけど、残念。私の弓矢は近接が得意なんだよね。矢を放つと、避けきれずに命中。思いっきり貫通して魔物は消滅した。マーブル達も一太刀で相手を仕留めていた。


「「は!?」」


 2人は驚いていた。


「強いと聞いていたから少し気合入れて攻撃したけど、大したことなかったねぇ、、、。」


「い、いや、あれって魔法生物だからかなり厄介な魔物なのだが、、、。」


「じゃよなぁ、、、。ワシら、あの魔物にどれだけ苦労したか、、、。」


「そうなんですか? でも、今はゲートキーパーがあるでしょ? あれなら簡単に倒せるのでは?」


「い、いや、そのゲートキーパーでも厳しい気がするのだが、、、。」


「そんなことないと思いますよ。それに、ほぼ間違いなくフライドさんもウラーさんも、前回来たときよりは強くなっているはずです。恐らく雑魚ですよ、雑魚。次出てきたら試したらどうです?」


「た、確かにそうかもしれん、、、。」


 ちなみに、ドロップは小さい魔石だった。やはりショボい敵だったということだ。マーブル達もお肉を落とさなかったことで少し落ち込んでいたので、モフモフナデナデして機嫌を直してもらった。


 少し移動したら、再び現れたので、今度はフライドさん達に戦ってもらったが、やはり楽勝だった。当の2人は驚いていたけど。


「・・・ご領主の言った通りだったな、、、。」


「ああ、ここまで楽に倒せるとは思わんかったわぃ、、、。」


 魔物を倒して進んでいくと、途中で宝箱らしきものがあったけど、全てスルーすることにした。後で来た人達のためにとっておこうと思ったからだ。それ以上にいらないと判断したからなんだけど、それについてはいわないことにした。2人も何となく察している感じだったけど、そういうことにしといてくれ。


 確かに地表エリアと比べると魔物が強くなっているのは理解できたけど、それでも良くて氷王の訓練場地下3階の第3エリア程度のレベルなので、正直相手にならず、興味の対象は魔物ではなくドロップ品にほぼ全て傾いていたのは否定しない。フライドさんとウラーさんは手こずっているようだった。


 そんなこんなで、ようやくそれらしき階段みたいなものが見つかったので降りていく。階段を降りた先には共同墓地のような佇まいの広間があり、その先には扉があったので、それを開けると上り階段があったので、それを登っていくと、悪魔っぽい像が大きく立てられており、禍々しい気を発している感じだ。


「む、やはり魔王が復帰する直前じゃな、、、。」


「ああ、魔王が出てきていないのを幸運とみるべきか、魔王が出現してしまうこと自体不幸なことなのかわからんがな。」


 どうやら、あの禍々しそうな黒い気が魔王のようだ。私はライムにアイコンタクトを送ると、ライムは察したらしく「えーいっ!」という声とともに光魔法を魔王の像に当てた。ライムの魔法の光が、像にある黒い気を包むと、魔法の光がさらに輝き、その輝きがなくなると、そこには黒い気が全く無くなり、悪魔の像も少しずつ崩れだして黒い気もろとも消え去ろうとしていた。


「「は!?」」


 2人は打ち合わせなど全くしていないのに、丸一日合わせる練習をした後の状況の如く見事なハモりを私達に披露していた。


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魔王「え? 我の出番これだけ!?」

某悪魔「・・・(軽く魔王の肩を叩く。)」

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